朝の模様
昭和50年代の会社です。
現在とは大きく違うことでしょう。
スマホも無いので今と比べると不便でしたが、想い出補正を差し引いても「良かった」所はありました。
さぁ、昭和の時代へ参りましょう。
会社に着くと、職場の机を拭く。
自分が所属する係の全員の机を拭いていると、先輩が「おはよう。」と声を掛けてくれる。
今日も………。
「おはよう。」
「おはようございます。」
机を拭き終わる頃には係の人達が来始める。
「おはようさん。」
「おはようございます。」
「おはよう。」
「おはようございます。」
朝の挨拶の声が満ち溢れる。
そして、ラジオ体操を皆でする。
就業10分前の光景だ。
それから、朝礼。
係長から今日は少し、いつもの朝と違う話が始まった。
「明日、近隣のお宅で法要がある。」
⦅法要? それが何?⦆
「その方は、ある組の組長さんだった。」
⦅ある組ぃ? それって……。⦆
周囲は騒めいた。
小さな声で先輩が私に教えてくれた。
「暴力団よ。」
「ひぇ~~~っ。」
「そこ、静かに!」
「済みません。」
小さな声で「叱られてやんの。」と聞こえた。
いつもの腹立つ奴の声だった。
後ろから聞こえたので、睨むことさえ出来ない!
⦅腹立つわぁ――!⦆
「法要があるので、黒尽くめの男性が大勢道路に立たれると思う。
何もされないので、心配しなくても良い。
ただ、目を会わせないようにすること。
いいですね。」
「はい!」
先輩に言った。
「怖いですね。」
「前は葬儀やったわ。」
「そうなんですか……。」
「物々しかったよ。」
「そうでしょうね。」
⦅あんた! 何で入って来るの!⦆
「目ぇ合わせたらアカンのですね。」
「まぁ、何もしはらへんわ。
前も目を合わせないように!って言われて怖かったけど
何も無かったさかい。」
「そうなんですか?」
「うん。」
「けど……怖いなぁ……。」
「大丈夫や。」
「なんで?」
「小学生を相手にせぇへんからな。」
「ちょっと待ってぇや。誰が小学生や!」
「そんなん。決まってるやん。」
「はぁ―――っ!」
「そこら辺で止めときや。もう就業時間やで。」
「済みません。主任。」
「まぁ、毎度のことやけどな。」
「うちの係の通常やな。」
「いや! ちょっと待ってください。通常って……。」
「いつものことやからなぁ~。」
「はい。仕事!」
「はい。」
「はぁ―――い。」
「はい!は、短く!」
「あなた様にだけは言われたくありませんわ。フン!」
何故だか大卒の川口君は、同い年だからか私を毎日揶揄っている。
腹が立つことこの上なしである。