クリスマスパーティー
クリスマスが近づくと会社でも労働組合主催のクリスマスパーティーが開催される。
会社の食堂がパーティー会場になる。
鶏肉の唐揚げ、ポテトフライ、サンドイッチ、女性が好きなサラダもある。
お酒はないが、飲み物も色々用意されている。
弥生ちゃんはご主人を待つために家に帰った。
色々と用意をしていると、中野主任から声を掛けられた。
「ご苦労さん。」
「主任、お疲れ様です。」
「今日は若い子達で楽しんでな。」
「はい。」
「おじさんは帰るけど、なるべく早よ帰りや。」
「はい。」
クリスマスツリーを飾ると、いつもの食堂ではなくなった。
鼻歌を歌っていると「真っ赤なお鼻の……やな。」と、振り返ると同期が居た。
高卒の同期で奥様も同じ同期。
「お疲れ様ぁ~。」
「お疲れさん。」
「今日は奥さんは来おへんの?」
「今、大切な時やねん。」
「えっ?」
急に小声になった。
「まだ、内緒やねん。ちょっと良おないねん。」
「?」
「妊娠3ヶ月やねんけどな。
ちょっと安静にしとかなアカンねん。」
「そやったら、早よ帰ってあげて。」
「けど……何もせんのは…な。」
「ええやん。私がするさかい。
早よお…早よ、帰ってあげて。」
「けど……。」
「どないしたんですか?」
「川口君、頼みます。」
「何を?」
「橋口君の代わりに今日のパーティーの準備、手伝うて。
お願いです。」
「それは悪いわ。」
「けど………。」
「なんか分かりませんけど、やりますよ。
なんか分かりませんけど、早よ、帰ってください。」
「うん。早よお!」
「………。」
「考えてる間に帰ってあげて。」
「ありがとう。
川口君、おおきにありがとう。」
「はい。どういたしまして。」
「ほな、頼んます。」
「バイバイ。」
「おおきに。」
橋口君が帰っていく。
「ほんで、何をどうすんの?」
「あ! ツリーの飾りの一番上のお星さま着けてもろたら…。
これ。」
「……届かんなぁ……。」
「えっ? 届くやろ?」
「君やったら届かんな。」
「むっ……悪うございましたね。小そうて。
地面と仲ええのも……ええことあるねん。」
「そんなボーナスあった?」
そう言いながら星を着けてくれた。
「もぉ~っ、この前、ええ人やって思うたのに……。」
「いつのことや。」
「あの……内山さんの送別会や。」
「あぁ……あの時は……。」
「有り得えへんやん。
立場が上の人で、年も上の人に……。」
「あれは……あれはな。
もう長いこと、この支社にはおらんからな。
異動でたぶん年明けて春になったら本社に行くと思う。
内山さんからもな。
『春になったら異動するし、万が一この支社に戻って来ても
その時には、あの主任よりも上になって戻って来る。』って言われてん。
そやな……そない思うた。
内山さんの決死の勇気には程遠いけど、勇気は要ったな。」
「そうやな。春になったら、三月末には分かるねんな。
異動先……。」
「うん。……用意は他にある?」
「ううん。もう後は私ら女子で出来るさかい。」
「ホンマにこれだけ?」
「うん。これだけ。」
「そうか………。ほな。」
用意してクリスマスパーティーが始まって……そして、終わった。
その間、笑顔でいたけれど……冷たい風が心に隙間風のように吹いていた。
「社内異動……三月末には分かるんやな……。」
そう呟いたのか、それとも心の中で言ったのか……分からない。




