弟
仕事を終えて帰宅すると、居間で両親を前に弟が話していた。
「ただいま。」の声も聞こえないほどの話だったようだ。
「ただいま。」
「あ……お帰り。」
「姉ちゃん、座って。」
「今から御飯、食べるんやけど……。」
「座って。」
「なんなん?」
「姉ちゃん、俺、結婚するから……。」
「けっ…こん?」
「うん。」
「そやからね、もうちょっと後にしなさい。ねぇお父さん。」
「ちょっと待って。結婚って、するの?」
「うん。」
「幸一郎が大学卒業したら直ぐに結婚するいうて聞かへんのや。」
「幸ちゃん、彼女ともう、そんな話出てるんやね。」
「父さん、母さん、俺の気持ちは変わらへんから……。
姉ちゃん待ってたら、ずっと彼女を待てせてしまうやん。
俺も彼女も就職が決まったから、もう卒業までに婚約したいんや。」
「幸一郎……まさかとは思うけど、出来たんか?」
「出来た?」
「赤ちゃんや。そんなに結婚、急ぐんやから…。」
「出来てないよ。」
「ホンマか?」
「ホンマや。」
「急ぐ訳は姉ちゃんに何の気配も無いからや。」
「……ええやん。結婚したら!」
「順番がちゃう!」
「お父さん、お母さん、ええと思うで。
今時、順番って誰も気にせえへんわ。」
「アホかっ。順番、今も気にする人はおる。」
「せやけど……仕方ないやん。
幸ちゃん、もう決めてしもうたら? 二人で……。」
「浩子!」
「お父さん、順番、気にせんといてよね。
私、元気で働けてるから心配せんといて。」
「父さん、母さん、今度挨拶しに行ってきます。日も決まってます。」
「なんや……もう何もかも決めてるんや無いか。
幸せになりぃや。」
「父さん!」
「お父ちゃん、順番。」
「お母ちゃん、もう仕方ない。
先方への挨拶、親抜きでええんか?」
「行ってくれるん?」
「行くしかないやろ。」
「ありがとう。お願いします。」
「幸ちゃん、良かったね。幸せにならなアカンよ。」
「うん。姉ちゃん。
姉ちゃんも早よ見つけなアカンで。
もう年増になってしまうで。」
「放っといて!」
弟の結婚は直ぐに決まった。
若いから結納は無しにしたようだ。
結婚は1年後、式場も決まり新婚旅行先も決まった。
会社で弟の結婚を話すと、弥生ちゃんは「弟さん、同い年ですね。彼女と…。」と言い、「私も同い年、内山先輩も同い年、先輩の同期の人も高卒の同期同士の結婚やから同い年ですね。同い年、多いなぁ。」と言った。
よくよく見ると、周囲の既婚者は同い年が多い。
私は「ホンマ、みんな同い年やわ。」と答えた。




