変化
内山先輩が退職された後の仕事は弥生ちゃんが継いでいた。
弥生ちゃんは新婚さん、いつか……もしかしたら間もなく赤ちゃんが出来て退職するかもしれない。
その後はもしかしたら高校卒業した新入社員が来るかもしれない。
年の差が6歳以上になるなぁ……と思いながら、次の書類を手にした時、項を……。
「キャっ!」
「なんやねん。」
「……ビックリしました。」
「ビックリしたからって、そないな大きい声出さんでもエエやないか。」
「済みません。」
隣の課のあの主任だった。
係の人達の目が私と主任に集まった。
隣の係の人の視線も……。
係長が中野主任と目を合わせた。
うちの中野主任が席を立って、あの主任に近づいた。
「主任、何か仕事で?」
「いや………ちょっと通っただけや。」
「そうですか。仕事のことでしたら僕にお願いしますよ。」
「お…おう。分かってる。」
「ほな、お願いします。」
中野主任に声を掛けられて、あの主任は逃げるように自分の課に戻って行った。
「あの……中野主任、ありがとうございました。」
「いやいや、係長がな……目で行って来い!って……。
山田さんが声出してくれたから行けた。
これからも今みたいにしたらエエで。」
「はい。ありがとうございました。」
隣の席の弥生ちゃんが「大丈夫ですか?」と声を掛けてくれた。
「うん。」と頷き笑顔を見せると、弥生ちゃんも笑顔で返してくれた。
全て内山先輩のお陰。
そして、分かってくれた係の人達のお陰。
課長と係長の理解あってのこと。
あの日、あの送別会で内山先輩は震えていた。
震える手を震えを押さえるかのように、強く両手を繋いでいた。
話し終えて私と顔を合わせた瞬間、内山先輩は愛おしそうにお腹を優しく撫でていた。
そして、「ごめんね。ビックリしたね。」と小さな声で呟いた。
凄く勇気が要ったのだ。
そして、その勇気は報われた。
この後、この主任の行動を係長は課長に伝え、課長は隣の課の課長に伝えた。
そして、あの主任は課長から厳重注意を受けたそうだ。
フロアの人の目が変わった瞬間だったかもしれない。
それからは、給湯室で後ろから抱き上げられることは無くなった。
快適な職場環境になったのだ。




