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第八話 「謎の封筒研究会」結成

「ただいま」


 玄関から声が聞こえて、私は焦った。

 兄が家に帰ってきたのだ。

 この状況をみられると、少し厄介なことになる気がする。

 玄関が開いて、だれが来たのか気になったのか、類が質問してきた。


「今、玄関の方から声が聞こえてきた気がするんだけど...」


 すると、私が答える間もなく、勝手を知ったように亮が答えた。


「絵菜の兄さんでも帰ってきたんじゃね。今日、一斉下校だったし」

「絵菜ってお兄さん、いたんだ。僕は、一人っ子だから、少しうらやましい気がする」

「でもなんで、こんな時間なんだろうね。だって、私たちが、えなちゃんのお家に来てから、もう1時間ぐらい過ぎてると思うんだけど」


 今度も亮が答えるかな、と思ったがさすがに家族でもない人のプライベートまでは、分からなかったらしい。

 仕方がないので、私が美音の質問に答えることにした。


「多分、図書館でも行って、勉強してたんだか、本でも読んでたんだと思うけど。あれでも受験生だから」

「せいか~い。さすが我が妹よ、推測で行動が分かってしまうとはすごいな」


 後ろから、少し低めの声がした。


「うわ、猫かぶってるよこいつ」

「そんなことないよ。って、亮じゃんか。久しぶり! また背伸びたか? 座ってるからわからんか」

「おう、久しぶり」


 そんな家族団らん? をしていると、疑問がとんできた。


「えっと、そちらが、えなちゃんのお兄さん?」

「そうだな。俺が、絵菜の兄の『本田 政近(ほんだ まさちか)』だ。亮は知ってるとして、君たちは?」

「はい! 『加藤 美音』です。えなちゃんの親友です。よろしくお願いします」

「僕は、『一条 類』です。よろしくお願いします」

「そっか、君たちが。こちらこそ、よろしく。あと、敬語じゃなくてもいいし、気軽に話してくれればいいから」

「「はい」」


 簡単な自己紹介をすますと、兄もとい政近は、私たちが使っていた机を見た。


「それで、この封筒って今日、配られたものだよね。みんなで中身開けてたの? 中身お守りだったんだね。というか、()()じゃん。いいなぁ、俺なんて茶色だよ。ほら」


 政近は、カバンから封筒を取り出して私たちに見せてくれた。

 どっからどう見ても、政近が言ったと通り、茶色っだった。

 でも、さっき政近は、私たちの封筒の色が白と赤ということが見えていたみたいっだった。

 私たちの仮設では、「封筒の色が茶色じゃない人以外が私たちの封筒の色が違うとわかる」と思っていたがどうやら違ったらしい。


「ねぇ、政近。この文字言って読める? 最初の文と最後の文だけでいいから読んでくれない?」


 私は、私の封筒に入っていたお守りの『合格祈願』と書かれていない方を表にして政近に渡した。


「いいけど。どれどれ? 最初の文が『まずこの文字が読めているそこのあなた。』で、最後の文が『神に近い存在を狙うやつらが、あなたを襲うかもしれないということを。』か。てかこの文章どこの中二病が書いたやつだよ。人のものにしかもお守りに書くとかありえねぇわ」


 政近は、小言を言いながらも、のんびりしているが、私たちは、そうもいかなかった。


「あの、ちなみになんですけど。封筒って白が何通、赤が何通あるかわかりますか? あと、白と赤以外にも他の色って見たんですか?」

「類から質問か。まず一つ目の質問は、白が二通、赤も二通だな。で、二つ目の質問としては、他の色も見たぞ。青とか緑とか黄色とかもいたな。でも、皆、茶色だけどって言ってたし、白と赤は見なかったな。なんか、俺だけ封筒の色が違って見えてたみたいで、気味が悪かったのを覚えてる」

「そっか。だとしたら、さっき考えてた仮説は、当てはまらないってことかな」

「そうだね。また考え直さないと」


 四人でため息をついていると、政近が戸惑っていた。


「仮説? 何に対してのだ? さっぱりわからないんだけど」

「説明しても大丈夫?」


 しょうがないので説明をしてあげた。

 すると、さすが高三なだけあって、すぐに理解した


「なるほどな。つまり、さっきまでの仮設としては『色が違う人は、他の色が違う人を認識できて、お守りの裏に書いてある文字も読める』といった感じか。でも俺が現れたことにより、その仮説はことごとく潰され、さらには、『自分の封筒の色が違うのにもかかわらず、そのことを認識していない』ということも分かって、混乱中ってとこか」

「うん。ざっくり言うとね。というか、また考え直すの面倒なんだけど」


 私がめんどくさそうにしていると、政近が私の肩をやさしくたたいた。


「まぁ、俺がいなかったら間違ったままだったし良かったことにしよ。それに責任取って、俺も調査するからさ。あんま気を落とさずに、やろう」

「政近がそう言うなら、頑張るわ。というか政近をこき使ってやる」

「怖いよ絵菜さん。昔は、『まさにい~』って可愛かったのに」

「うっさい」


そんなこんなで、私の兄、政近も手伝うこととなったのだった。


「ねぇ、えなちゃん。政近先輩も入ったことだし、名前つけない?」

「じゃあ、俺に提案が!」


政近が手を挙げると、クイズ番組みたいに合図を送る美音。


「どうぞ」

「はい、『謎の封筒研究会』なんてどうだ?」

「政近まで言うのかよそれ」

「やっぱりそれですよね!」

「いや、美音が言ってたのは『謎の封筒の研究会』だった気がするけど」

「細かいことは気にしないものだよ類くん?」

「それもそうですね。先輩」


会話がひと段落つくと、結局のところ一時的に「謎の封筒研究会」に決定したのであった。


「じゃあみんなコップをもって」


私が合図をするとみんなコップを持った。


「『謎の封筒研究会』結成に乾杯!」

「「「「かんぱ~い!」」」」


グラスとグラスが当たると音が鳴った。


六月の暖かな日差しと蒸し暑さの中、こうして「謎の封筒研究会」は結成されたのである。

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