表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/23

第六話 謎の封筒の研究会?

 封筒の色が違うのは、百歩譲って分かる。

 でも、色が違うと認識できるのが私たちしかいないというのが、どうもおかしい。

 見間違いかと思ったが、いくら、目とこすっても、瞬きしても、色は違うままで、『もしかしたら、夢なのかも』と思ったが、手の甲をつねったら痛かったのでそれはなかった。

 他の二人も気になっていたようだが、口にはしなかった。

 きっと、それどころではないのだろう。

 でも、類だけは違った。

 類だけは、いつも通りで、本を静かに読んでいる。

 そんなこんなで、一度も話さないまま、一時限目が始まった。


 授業中は、話し合いなどはしたが、それ以外は、あまり話さなかった。

 もちろん、休み時間もだ。


 三時限目の次の休み時間では、やっと話し始めたが、封筒のことは、だれも口に出さなかった。


「ねぇ、さっきの小テスト、難しくなかった?」

「それは、美音が勉強してないからだろう!」

「うっ! そうだけど、そうだけど~!」


 前で二人が騒いでいると、隣から話しかけられた。


「次の社会の授業も小テストあるよね?」

「うん、だから今、勉強してる」


 私たちが話していると、話を聞いていたのか、美音が入ってきた。


「そうなの!? 勉強しないとじゃん。えなちゃん、範囲教えて~」

「お前、まさか家で勉強してこなかったのか?」

「うん、そうだけど。それがどうかした?」

「お前まじかよ」


 亮が、美音に対して呆れていると、隣から、申し訳なさそうに手が上がった。


「ごめん、実は僕も勉強してない...だから、教えれくれると助かる」

「そうなのか? わかったよ、二人とも教えてやる」

「...! ほんと! ありがとう!」

「私は、頼んでないし、もともと、絵菜ちゃんに教えてもらおうと思ってたんだけど」

「まぁまぁ、亮の方が社会、得意なんだし、私より教えるの上手だから。亮に、教えてもらいな」

「絵菜ちゃんがそこまで言うなら、分かった、よろしく...」


 美音はしぶしぶという感じだったが、亮は上機嫌だったのか、封筒のことで精いっぱいなのかわからないが、気にしていように見えた。


「おう、任せておけ!」


 亮は意外と成績が優秀なのだ。

 おまけに、説明も分かりやすい。

 だからこそ、こういう時、頼りになる。


 それからというもの、小テストに向けて、勉強をした。

 でも、手についていない様子で、全然勉強がはかどっていなかった。

 もう我慢ならないと、最初にあのことに触れたのは、意外にも類だった。


「ねぇ、封筒のことなんだけどさ、僕たちだけ色が違うように見えてるのっておかしいと思うんだけど」

「やっぱり、類も気になっていたか。絶対におかしいと思う」

「私もかな。ちなみにみんな封筒の色はどう見えてるの?」


 どうやら、みんな同じことを思っていたようだ。

 そんな中、美音が、質問をしてきた。


「えっと、私は、ふつうは茶色で、美音ちゃんと亮だけが赤、私と類君は白って感じかな」

「僕も同じだよ。亮は?」

「俺は、ふつうは茶色で、俺と美音が赤、類と絵菜は、わからない」

「わからないって?」

「いろんな色が混在していてわからないんだ」


 亮は、本当にわからないようで、眉間にしわを寄せている。


「ちなみに、美音ちゃんは?」

「わ、私!? 私はね、えっと、ふつうは茶色で、私と亮が赤、類が白で、えなちゃんだけが亮と同じで、わかんないって感じかな」

「じゃあ、人によって見え方が違うってことか」

「でもさ、この異常事態って、どうすることもできなくねぇか?」

「そうなんだよね、そこが問題な気がするんだよね」


 しばらくの間、皆で考え込んで、沈黙の空間が生まれた。

 もちろん、私たちの中の話であって、周りの外野はうるさいが。

 そんな中、私はあることを思い出した。


「ねぇ、ちょっといいかな」

「ん? なんだ?」


 真っ先に反応したのは、亮だった。

 亮は、謎に反射神経もいいのだ。

 だから、運動もできるんだろうけど。


「穂乃花先生言ってたよね? 『封筒の中身は、家で開けてください』って」

「それがどうしたの?」

「だからね、封筒の中身がヒントなんじゃないかなって思った、ってだけだよ」

「あ~、なるほどね」


 二人は、私の発言にぽかんとしていたが、類だけは、私の言いたいことが分かったらしい。


「えっ、どういうことだ?」

「つまり、絵菜が言いたいことは、封筒の中身が、この異常事態を打破できるヒントかもしれない、ってこと、っで合ってる?」

「うん、大体は」

「なるほどな」


 亮は、私と類のの言葉にさらに付け足した。


「封筒は家で開けるのは、確かに当たり前だが、それを高校生にもなってわざわざ言うってことは、それだけ大事なものってことにもなるもんな」

「そう。だから、絵菜は、封筒の中身がヒントとだと思った、ちがう? 絵菜?」

「うん、違わないけれど、そこまでは考えてなかったかな? あと、それともう一つ、そんなに大事なものなら、一人で開けた方がいいってわかってるけど、でも、念のため、一緒に開けない?」

「それはいいけど、どこで開けるんだ?」

「私の家かな?」


『私の家』と言った途端に、ずっと話についていけてなかった美音が反応した。


「それってつまり、えなちゃんのお家に行けるってこと?! 全然話の内容はわからなかったけど、封筒を持って行けばいいんだよね?」

「お前、話、分かってなかったのかよ」

「うん、しょうがないじゃん。難しいこと話してるんだから」

「いや、今の内容は......まぁ、いっか。それじゃあ、業後、封筒をもって絵菜んち集合な」

「それって別に、絵菜の家に放課後、直行すればいいと思うんだけど」


 すかさず、類につっこまれる亮。


「そ、それもそうだな」


 亮は、咳ばらいをすると、言い直した。


「では、業後、封筒をもって、絵菜んち直行で」

「は~い! 楽しみだな、絵菜ちゃんのお家」

「遠足じゃないんだから、美音ちゃん」

「まるで、『研究会』みたいだな」

「それいいね! 『謎の封筒の研究会』なんてどう? 一時的に結成しようよ」

「却下だ」

「え~、いいじゃん! 『謎の封筒の研究会』! かっこいいじゃん!」

「どこがだよ」


 かくして、朝から気になっていた封筒事件は私の家で研究(?)をすることとなった。

 面白かった、また続きが読みたいという方は、ブックマーク、いいね、評価など宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ