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第五話 謎の封筒

 類が転校してきて、数日が経ったころの朝、私たちは、相も変わらず話していた。

 もちろん、自分たちの席で。


「それにしても、類が来たのが、昨日のことのように思えるのはなんでなんだろうな? もしかして、俺だけか?」

「いや、私もだから大丈夫だよ」

「えなちゃんがそう言うなら、私もそう思う!」

「それは、自分の意見関係ないじゃんか。それよりも、本人はどう思ってるんだ? 類?」


 皆の視線が、類の方へと集まる。


「皆して、僕のことを話題にしなくても。それに、そんなまじまじと見ないでほしいかな?」

「そうか、すまん」


 亮が謝ると、類は慌てたように弁解した。


「別に怒ってるとかじゃなくて、単に恥ずかしいというか、照れるというか」

「...類って意外と恥ずかしがり屋?」

「うん...まぁ、そうなるのかな? 話題を本人に振ってくる人もいないし、本人の前で話す人もあんまりいなかったから」

「じゃあ、陰口されてたってこと!? それは、酷くない?」


 美音は、座っていたところをいきなり立って聞いた。


「別に普通のことだろ、逆に俺たちが変なだけで」

「変というか、特殊じゃない?」


 美音は、静かに椅子に座った。


「どっちも同じような意味な気がするよね? 類君」

「だから、なんで僕に聞くの?」


 戸惑ったように、類は聞いてきた。


「なんとなくかな。 それよりもさっき聞かれてたこと答えなくてもいいの?」

「そういえばそうだね。 でも、聞かれてたことって、なんだっけ? 確か、亮が聞いてきたことは、覚えてるんだけど」

「なんだったっけ?」


 思い出そうとして、両方の人差し指を頭につけて、悩んでいる様子っだった。


「聞いた本人が覚えていなくて、どうするの! そういう私も覚えてないんだけど。それに、本人が覚えていないなら......」


『キーンコーンカーンコーン』


 美音が話している途中で、チャイムが鳴った。

 どうやら、朝のホームルームが始まるらしい。


「あっ! そういえば、今日、日直だった」


 美音が突然思い出したように立ち上がる。


「だから、いつもより朝早かったんだね」

「うん、えなちゃんから離れるのは嫌だけど、頑張ってくる」

「頑張ってね」

「加藤さ~ん、今日、日直ですよ~」


 1年3組の担任の「鈴木 穂乃花(すずき ほのか)」先生に呼ばれた美音は、元気よく教卓の方へと向かった。

 穂乃花先生は、私たちと年が近いことから、『ほのちゃん先生』と呼ばれていたりもする。

 私の場合は、『ほのちゃん先生』と呼ぶ勇気がなくて、『穂乃花先生』と呼んでいる。


「今、行きまーす」


 美音が立ち去るときに、『別に頑張ることではないだろ』という声が聞こえた気がするが、聞かなかったことにしておいた。


 ホームルームは順調に進んでいき、残りは、先生の話だけとなった。


「お疲れ様」

「ありがとう、やっと、えなちゃんのもとに帰ってこられた~」


 美音は脱力しきった様子で、椅子にもたれていた。

 どうやら緊張していたようだ。

 いつも、ボケているから気づかないが、美音は、人の前に立つことが苦手で、話すとなると固まってしまうぐらいには、真面目で、引っ込み思案なところがある。


「今日の予定は、いつも通りの日程で、一斉下校ですね。」


 穂乃花先生は、今日の予定などのことを話し終えると、封筒を手に取り、皆に配った。


「今から、この()()()を配ったと思うんですが、大事なものなので、なくさないように()()しておいてください」


 先生の話で気になったことがあったのか、質問をする男子生徒がいた。


「先生、『保管』というのはどういうことですか? 普段だったら、『必ず()()()()に渡してください』とおっしゃると思うんですが」


 確かに、いつもの先生だったら、そういうかも。

 でも、今、私が気になっているのは、皆と封筒の色が......


「この封筒は、自分で保管しないといけない封筒なので、()()()には、渡さなくていいです。それから、中身は、また、家で見てください」

「分かりました。ありがとうございます」


 質問をした生徒は、納得したようで、クリアファイルにしまっていた。

 他のクラスメイトもクリアファイルにしまったり、ノートに挟んだりとしまい始めている。


「先生、俺も聞いていいですか?」

 次は右斜め前の席の人が、勢いよく手を挙げた。

 そう、亮だ。


「はい、なんでしょう?」

「えっと、封筒の色が茶色じゃなくて、赤色なんですけど......」

 亮は自分の封筒を見せながら言った。


 それから、どれくらい時間がたっただろうか。

 私だけが、私たちだけが、封筒をしまえずにいた。

 気を留めた穂乃花先生が、話しかけてきた。


「本田さん、どうしたんですか? もう、ホームルームは終わりましたよ。ぼーとしているようどけど、体調でも悪い?」

「あ、ええっと、大丈夫です。寝不足なだけなんで」


 私は、慌ててその封筒をしまった。

 すると、周りの三人も我に返ってようで、封筒をしまい始めた。


「そっか。寝不足は体に悪いからしっかりと睡眠をとってね」

「は、い」

「......?」

「ほのちゃんせんせ~い! ちょっと今いいですか?」


 ほのちゃん先生は、私の返事の仕方が気になったようだが、生徒に呼ばれ、私たちのところから離れていった。 

 私が、私たちが、封筒をしまえなかった理由、それは、皆と封筒の色が違ったからだ。

 私と類が白い封筒、美音と亮が赤い封筒だったからだ。

 それだけだったら良かった。

 でも、亮が先生に質問をした後、返された言葉は、意外なもので、怖くなった。


『何を言っているんですか? 佐藤君の封筒、茶色ですよ』


 と先生からは、返された。

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