第四話 波乱の家庭科
私達は、昼食兼昼休みを終え、家庭科室へ来ていた。
今日は、今日から裁縫の授業で今はエプロンをつくっていた。
どうやら、二学期にある調理実習でエプロンを使うらしく、
『どうせなら自分でつくってもらおう』
ということになったらしい。
それで、私の班はというと………うん、いろんな意味で凄かった。
まず、美音と亮だが、こちらはいつも通り騒がしかった。
どうやら、どちらが早く、綺麗につくり終わるか対決をしているようだった。
「よっしゃー! 美音よりも先に今日分のノルマ達成だぜ」
先に、作業を終えたらしい亮に、何処かやらかしていないかの探りを入れ美音。
その成果が出たようで、とあることを指摘する。
「玉結びしてないじゃん」
「あっ………」
「やり直しだね……」
私がドンマイと声をかけてると、亮は、クソーと言いながらやり直していた。
亮は、得意なことが運動系でありながら、意外と手先が器用だった。
亮曰く、妹と弟がいるらしく、世話をしていた影響で手先が器用になったらしい。
そんな、器用な亮が今やり直したばっかりなのにもう三分の一も進んでいた。
玉結びをしていないことを亮に指摘した美音はというと、丁寧にやり過ぎて、時間がかっておるようだった。
その代わりに、とても綺麗な直線で縫ってある。
美音は、作業をしながら、ふとこちらを見た。
「もう終わったの!? 流石私のえなちゃん! 私なんか全然だよ~」
「私のは一言余計だろ」
と亮が呟いたが、その場のにいる人は誰もツッコまなかった。
「うん、終わったかな? でも、丁寧にやってる美音には、縫い目の綺麗さは敵わないよ」
「本当? だとしたら、えなちゃんに褒められた〜」
「もう終わったのか! 早いな」
良かったなーと棒読みをする亮。
そんな亮は、この班で家庭科が始まってからしゃべっていないとある人物に目を移す。
それにつられて、亮を見ていた私もその人物に目を移す。
家庭科が始まってから一言も話していない人物とは…… そう、類である。
類はというと、全く作業が進んでいなかった。
それどころか、針に糸を通すことすらできていない様子だった。
それに、さっきから針に糸を通そうとして、ぐさぐさと自分の手にさしている。
痛くないんだろうかと思っていたら、血が出ていた。
だから、とっさにハンカチを出して渡そうとした。
「類君、血が出てるけど、大丈夫?」
「? 血なんてどこにも出てないと思う、けど?」
類は、不思議に思っているようで、私のハンカチを受け取らなかった。
私も、類の発言が気になって、類の手を見たが、血は出ていなかった。
しかも、血が出た跡すらなかった。
「ごめん、私の見間違いっだったかも」
でも、絶体に血が出ていたと思うけどな。
私は、納得いかないまま、笑いで済ませた。
「えなちゃん、最近疲れてる? もしかしてまた寝不足だったりして」
「確かにな。絵菜、寝不足だったり、疲れてたりすると頭働かなくなって、ときどき意味不明なこと言いだすもんな」
「そうなの? だとしたら、人の心配なんてしなくていいから、しっかりと睡眠と休養を取ったほうがいいよ。自分の健康第一にって考えることも大事だから」
「うん......寝不足ではないと思うけど、心配してくれてありがとう。できるだけちゃんと休むね」
心配してくれるのはうれしんだけど、今のことは、本当のことだった気がする。
私は、皆に返事をしながら、考えた。
「そうしな~ えなちゃんがもし体調を崩して、学校に来ないなんてことになったら多分、私、絵菜ちゃんが学校来るまで立ち直れないと思うから」
「そうなったら、もう終わりだしな。というかほんとに寝不足じゃないのか?」
質問を投げかけた亮を見ると、もうすぐで、今日のノルマが達成しそうだった。
「うん、本当に寝不足じゃないと思うよ。だって、最近は十二時には寝るようにしているんだから」
「「「.........」」」
あれ、おかしいな? ちゃんと寝てるはずなのになんで皆、そんな反応をするんだろうと疑問に思った。
「ち、ちなみになんだけど、何時に起きてるの? それと、寝不足だと思う日は何時間、寝てるの?」
「え~とね、五、六時には起きてるかな。それから、寝不足だと思う日は、徹夜してるか、最大でも2時間睡眠ぐらいのときはさすがに寝不足だと思うけど」
「「「.........」」」
「どうしたの? みんな固まって」
「えっ、だって、五時間睡眠の時点でもう寝不足判定だと思ってたから」
「えっ、そうなの?」
「うん、まぁそうなんじゃない?」
「寝不足だね~」
「そうなんだ...で、でも、寝るときは、十二時間ぐらいは寝るから!」
「そういう問題ではない気がする」
もう、ここ数年4時間睡眠とかに慣れてしまっていたから、5時間睡眠は、しっかりと寝てると思ってた。
だから、さっきフリーズしたと思うぐらいにみんな固まっていたのか。
「絵菜って少し抜けてるところとかある?」
「少しどころじゃないぞ。確かにしっかり者だけど常識から外れているところなんてたくさんあるしな」
「うん、この前だって『データの保存の仕方が分からない』て言ってたかと思ったら『わかった!』って突然言い出して、データ全部削除してたからね」
「それは、抜けてるんじゃなくて、極度の機械音痴なだけだろ」
などと、私の話で盛り上がってしまうものだから、なかなか話に入るに入れなくなった。
というか本人の目の前で、黒歴史というか嫌な思い出を話すものではない気がする。
しかも転校初日の人に。
でも、楽しそうだからいっか。
と最後はあきらめることにした。
そんなこんなで、無事に類も今日のノルマを達成し、授業が終わったのだった。
そういえば、何か大事な、腑に落ちなかったことがあったような?
まあいいっか。
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