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第二十話 類がやらかしたこと

「姉様がかけたとするなら、それは『祝福』で合ってると思うよ。だって僕たち双子は、……『創造神の子ども』なのだから――」

「「「「……?」」」」

「「「……!」」」


 ――『創造神の子ども』

 うん、確かにあってはいるけど、そうなんだけど、それ、ここで、この場で! 言うかっ!? 普通!

 皆がいるのに!?

 ミシェルと黒月は良いよ、だってもともと知ってるし。

 でもさぁ、亮とか美音なら『神に近きもの』だしまだ良いとしても、政近とか海莉は()()()()なんだよ!

 それに、穂乃花先生なんて一番知ってたらダメな人じゃんかっ!

 いや、穂乃花先生がばらすとも思えないし、悪い人じゃないって分かってるんだけど、分かってるんだけど......!

 だとしても、知られて良いことと悪いことがあるじゃん。

 それに皆、テロのこともあったし、魔法のこともあったし、何より今『呪い』の話をしていて、頭がこんがらがっているはずなのに、さらに混乱させてどうするんだよ!

 それに皆の顔見てみなよ。

 亮みたく何も知らない人たちは、「何言ってるんだこいつ」って感じだし、ミシェルと黒月は「やっちゃったよ」って顔してるじゃん。

 私も、黒月たちと同じだよ!

 なのに、なんで、言った張本人が「なんでみんなそんな顔するの」ってなってるの!

 鈍感にもほどがあるでしょ。

 あぁ~、こんなことになるんだったら、『加護』やら『祝福』やらの話しなければよかった。

 類よ、いや我が双子の弟よ、本当に……何してくれてるんだ。

 私は、その場でじたばたしたい気持ちを抑えて、落ち着くために「ふぅ」と息を吐いた。


「ねぇ、絵菜ちゃん、今、類君が言ってたことって本当?」


 美音が、恐る恐るといった感じで尋ねてきた。


「えっとね、う~んと、正しいような? 正しくないような?」


 私がぎこちない笑顔で、やり過ごそうとしているとまたもや乱入者が。


「本当だよ。ねぇ、姉様。あ、それともまだ記憶を思い出してないとか? だとしたら、ごめん」


 あのさ、弟よ、謝るところが違うと思うんだけど。

 本当に、なんであんなに勉強ができて、運動神経もいいのにこういうときだけこんなに馬鹿なんだか。

 いや、阿呆……アホの方が正しいか。


「はぁ~」


 私は、額に手を当て、大きなため息をつくのが精一杯だった。

 私の心情なんて知らない、美音たちが、珍しくため息を、しかも大きなため息をついたということもあって、びっくりしていた。

 私は、そんな皆をよそに、ちょっとした転移魔法のようなものを使い、類の前へと立ちふさがった。

 それから、私の右手で類の左手首を掴んだ。

 類を逃がさないために。


「類……いや、()()、ちょっと廊下でよっか。」


 私は、満面の笑みで類に、『エルド・フォン・リーヌ』に対してそう言った。

 もちろん、目は笑っていないが。

 すると、よほど怒っていることが伝わったのか、類はぶるりと全身を震わせ返事をした。


「はい――。」


 私は、類の手首を掴んだまま、廊下へと出た。

 きっと後ろでは、皆、ぽかんとしているのだろう。


 廊下を出て、しばらく経った気がするが、話し始めないので、こちらから話すことにした。

 ちなみに、話を聞かれると困るので、防音用の結界魔法をかけてある。


「それで、エル、何か言うことは?」

「えっと、ごめん、なさい……?」


 あ、これは、なんで謝ってるのかわかってなさそうだ。

 一応、訊いては見るけど。


「なんで、怒ってるのかわかる?」

「いや、分からな……分かりません」

「だと思った。エル、この際だから言うけれどね、『神様』ってことは、こういった場所にいる限り隠しておくことが普通なの。魔法使いとかならまだ別だけれどね。」

「うん。」


 犬みたいにしょんぼりしているエルの頭を撫でながら、口調をやさしいものに変えて話を続ける。

 頭を撫でるといっても、エルの方が身長が高いので背伸びを、というか少し魔法で体を浮かしているが、そこは気にしないでほしい。


「それにね、『神』という存在でも狙われやすいのに、『創造神の子ども』ってだけでもっと狙われやすくなるの。最も、まだ皆は、私たちがどういう創造神の子どもかは知ってないけれど。でも、もし知られてしまったら、その時は、他の『創造神の子ども』よりも狙われやすくなる。だから、簡単に私たち双子のことを話してはいけないんだよ」

「うん。ごめんなさい。」


 やっと怒っていた意味を理解したのか、私の橋が終わるとすぐに謝ってきた。

 こうやって見ると、同級生の『文武両道』に見える『一条 類』ではなくて、少し抜けているところがある私の前世の弟の『エルド・フォン・リーヌ』だな。

 というか、滅茶苦茶幼く見えるのだが。


「よし、じゃあ戻ろうか。今の件は、上手くごまかそう。ね。」

「うん!」


 私たちが教室に戻ろうとしたとき、黒い影が視界に入った。


「その必要はないんじゃないかな。絵菜様、いや、主様のことを前の愛称で呼んでたから、エリカ様の方がいいのかな? それと主様も」

「黒月」


 私がそう呼ぶと、黒月は地を蹴って、類の胸元へと飛び込んだ。

 相変わらずの定位置につきたいようだ。

 というか、いつの間に来てたんだろう?

 それに、一様結界張ってあったんだけど。

 まぁ、黒月なら結界とか関係なしに聞けてもおかしくはないか。


「いつから聞いてたの?」

「主様が疑問形で謝ってたところぐらいから?」

「ほとんど最初じゃん!」


 私がつっこんでいると、エルが黒月にさっきの話を聞き返していた。


「それで、その必要はないって言ってたけど、何で?」


 すっかり元通りになってるし。

 さっきまでのあの幼く見えたエルはどこへ行ったのやら。

 私が、少しばかり引いていると、黒月は類に撫でられながら答えた。


「うん~とね、僕が見た限り、あの人たちは悪い人にも見えないし、本当のことを話してもいいと思うんだよね。それに、白桜たちのこともあるし」

「……白桜たち大丈夫かな」


 私の心配を慰めるかのように黒月は話を続ける。


「大丈夫だよ。まだ生きてる。もし、死んでしまったら僕は直ぐ分かるしね。だから、心配しなくてもいいよ」

「……ありがとう、黒月。」


 私は、自分の両方の手のひらで思いっきり両頬を叩いた。

 一人(柱)と一匹は驚いていたが、そんなことはどうでもいい。


「よし、今はとにかく、美音たちに本当のことを事実を伝えないとね」

「そうだな」

「みゃあ~」


 私たちは、美音たちが待っている教室へと戻っていった。

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