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第十九話 かけてしまったもの

 桜色の魔力が無くなった後、穂乃花先生は私のところまできて、問いかけてきた。


「えっと、絵菜さん、その解呪はできたのかな?」

「はい、ちゃんと解呪できましたよ。呪いの原因もないので、もう安心していいです」

「そっか。ありがとう、絵菜さん」


 穂乃花先生は、私の言葉を聞いて安心したのか良かった、と言いつつ胸をなでおろしていた。

 そんな穂乃花先生を見ていて、そういえばと思い出したことがあった。


「穂乃花先生に謝っておかなければいけないことがあるんですが。」

「……? 急にどうしたの? 謝らなければいけないことって。私、謝られるようなことした記憶もないし、むしろ絵菜さんに感謝をしないといけないのに」


 穂乃花先生の頭にクエスチョンマークがいくつも浮かんでいるように見えた。

 そんな穂乃花先生に、私はできるだけ簡潔に分かりやすく説明した。


「えっとですね、穂乃花先生の呪いを払う際に、私が穂乃花先生に呪いをかけてしまったようで……ついでに、ここにいる皆にも、」


 私は、自分がやってしまったことに後悔をしていたからなのか、声が小さくてみんなの耳に届いているのか不安になった。

 なんで、『危険が及びませんように、もし危険がせまったら守りますように』なんて願ってしまったのだろう。

 それが呪いになってしまうとなぜ分からなかったのだろう。

 さっきまで、呪いがかけられていて、その呪いを取り除くだけでよかったのに、穂乃花先生の呪いを取り除いてから、私が新たに呪いをかけたなんて。

 しかもここにいる皆に。

 私は、外に向かって叫びたい気持ちを抑えて、心の中で後悔の念に少しずつ飲み込まれていた。


「別に、絵菜さんならいいですよ。それにきっと、その『呪い』は、私たちに危害を加えるものではないだろうし。なんなら、守るものだと私は思うから。違う?」

「……!」


 この先生は、穂乃花先生はよく生徒のことを見ているんだなと私は思った。

 まだ二カ月程度しか経っていないのに、こんなにも信じてくれるとはびっくりしたかも。

 しかも、呪いの内容、ほとんどあってるし。

 生徒を見る目に対して感心しつつ、穂乃花先生の疑問の答え合わせをした。


「はい、おおよそは合ってます。詳しく言うのであれば、この呪いは危険が迫ることを減少させ、もし危険が迫った時には守ってくれるものだと思います。多分……」

「危険って、今回みたいなのも?」

「恐らくは。それから、今ならわかると思うんですが、魔力が見えるようになってるかもしれなくて」

「?」


 また混乱させているのかもしれない。

 どうやって説明しようかな。


「ええっと、皆の周りに色が付いた何かが見えたりしていますか?」

「うん、穂乃花さんだと白かな?」


 類以外には、分からない様子だったのに穂乃花先生には見えているのか。

 いや、私の魔力を帯びているから見えていてもおかしくはないのかな。

 でも、正確には『白』ではないんだけれど。


「そうです。それが魔力です。ちなみに穂乃花先生には魔力が少しあるようなので、頑張れば量を増やして、魔法を扱うこともできるかもしれないです」

「本当?! ちょっとだけ、興味あったんだよね。魔法!」


 嬉しそうな、穂乃花先生をおよそに私は、穂乃花先生との話が一区切りついて、少しだけ安心したような気がした。

 良かった。

 怒ってないみたいで。

 あれ、でも皆にもかけたんだよね? 私の呪い。

 誰も反応してこないけれど。

 私は皆のことを見る。

 みんな自分の魔力の外側に私の魔力を確かに帯びている。

 だからこそ、それが私が皆に呪いをかけた何よりもの証拠だ。

 でも、やっぱり誰もその話題について触れない。

 亮も、美音も、政近も、海莉も、黒月も、ミシェルも、……類さえもだ。


「ねぇ、皆、ってさ、私が皆に『呪い』をかけたことに気が付いているの?」

「うん? 『呪い』て何のことだ?」


 やっぱり気づいてなかったのかな。

 一様言ったんだけど、声が小さすぎて、聞こえなかったとか?

 だったら、なおさらちゃんと話さないと。

 私が口を開こうとしたとき、亮の続きの言葉に対して、驚いてしまった。


「『呪い』がかけられているのかは知らないが、絵菜から『加護』というか『祝福』というかそういった(たぐい)のものはかけてもらった気はするが」

「! 気づいてはいたんだね。その『加護』とか、『祝福』とか言っているのが、私が言っている『呪い』なんだけど……」


 気づいてたんだ。

 でも何で、『祝福』とかいう言葉が出てきたんだろう。

 本来、『祝福』とか『加護』といったものは、()()|や、巫女さん、天使、といった『神に近きもの』にかけてもらったものを指していて、私なんかが、かけたものは、ただの『呪い』でしかないと思うんだけど。

 何を勘違いしているのだろう。

 あ! そっか! 亮って、まだそういったことを知らないんだっけ。


「亮、『加護』とか『祝福』とかってね、『神に近きもの』つまり、神様や巫女さんとかそういう者たちにかけられたものなんだよ。だから、私がかけたものは『加護』とかではなくてー」

「でもさ、絵菜、いや、姉様」


 私が話している途中で、誰かが割り込んできた。

 この教室で、私を『姉様』と呼ぶ人物 ―― 類である。


「姉様がかけたとするなら、それは『祝福』で合ってると思うよ。だって僕たち双子は、……『創造神の子ども』なのだから」

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