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第二話 いつもとは少し違う日常?

 類が転校してきて、最初の授業は、数学(数学1)だった。

 その後も、体育、国語(現代国語)、英語(英語コミュニケーション)と進んでいき、今は昼食兼昼休みだ。


 私はいつものように自分の席で、お父さんを作った弁当をカバンから取り出し、袋から弁当箱を出す。


「いただきます」


 手を合わせ、その後に弁当箱の蓋を取る。いつもは、二段弁当で一段目が米で、二段目がおかずだけど今日は違うらしい。

一段弁当で、おにぎりが2つだからだ。

 何でだろうと不思議に思いなから、おにぎりを一つ取り、一口食べた。

 おにぎりのケースに入っていて隠れていたため、分からなかったけれど、どうやら昨日の今朝ご飯の炊き込みご飯をおにぎりにしていたらしい。

などと思考を巡らせていると、隣の席に人が集まっていることに気づいた。

 いつもと違うことは、弁当だけではないのだ。

 隣の席の転校生、『一条 類』へ話しかけて来る人が多いため、いつもよりも昼食が騒がしい。

 まぁ、いつもはいつもで、私の前の席の加藤 美音(かとう みね)と右斜め前の席の佐藤 亮(さとう りょう)が話しかけてくるため、結局のところはいつも騒がしいのたが。

 それに、隣ということもあり、話の内容を気にしていなくても、どうしても話が耳に入ってくる。


「ねぇ、一緒に昼ご飯食べない?」

「弁当手作りなんだけど、卵焼き食べる?」

「食堂あるから、俺も食べに行こうぜ」


 と言った昼食の誘いや、


「体育での運動神経すごかったな!」

「どうかサッカー部に入ってくれ! この通り」

「何言ってるんだ! テニス部に入るよな?」

「いやいや、英語の授業での発音聞いたでしょ! だから英語部だって!」


 このように、部活勧誘など男女共に色々な誘いをうけている。

 当の本人は、困っているようだが。


 会話内容にあったように、類は、運動神経が良く、頭も良い。

 何故そう言えるのかというと、体育の授業は今男女混合でリレーの授業をしていて、班は今の席で決まるため、私と類、美音、亮の四人班でやっている。

 そのため、運動神経がどれぐらいか分かるのだが、類は初めてということもあって、五十メートル走の記録を二回とったが、どちらも六秒代をたたき出していて、この学校の一年男子の平均が七.三〇なので結構速いことになる。


 それから、数1では、先生に「説明できる?」と聞かれて、黒板の前に行き、分かりやすい説明をしていて、クラスメイト全員が分かったようで、中には数学が苦手な人もいたがそれでも、分かったらしい。

 もういっそ、教師になった方が良いんじないかなと思ったぐらいだ。


 現代国語や英語コミュニケーションなどの文系も得意だったらしく、英語なんか本当の外国人みたいに発音が良かった。


 言うなれば、文武両道、今の所は、非の打ち所がないと言ったところだが、人なのだから弱点が無いはずも無いと思ってしまう。

 弱点があったとしても、こんなに文武両道という言葉がぴったり当てはまる人に会ったことが私も無かったからかこんなに話聞いていても納得できる。

 それに、美形だから、という理由もあるんだろうな。


 私は、ちらっと横にいる類を見てから、また弁当箱に目を向けた。


 考え事というか午前中の振り返りをしている私は、話しかけている人と類をよそに、呑気(のんき)に弁当箱に入っていた、おかずの一つの卵焼きを食べている。

 そうしていると、美音が話しかけてきた。


「類、今日でクラスの人気者になっちゃったね」

「そうだね」


 美音が類の方を見たから、つられて私も見た。

 相変わらず勧誘などに困っているようだった。

 それに、手元にある弁当をさっきから食べていない。

 というか、弁当箱を袋からも出していない。

 この学校は、昼食と昼休みが同じということもあり、四十五分あるとはいえ、もう十分も過ぎている。

 十分もすれば、昼食をとる人も多くなる時間帯でもうそろそろ食べた方が良い気がするのに。

 そんな事を考えていると


「そりゃあ、あんなに授業で活躍していたら人気にもなるだろ」


 と声をかけてきた人がいた。

 私達は、類から声をかけてきた主、亮に目を向けた。


「そうだね」


 私が返事をすると、亮は私の弁当箱を見た。

 すると、気付いたことがあったらしく、口を開いた。


「おっ! 今日は卵焼き上手く出来てるんだな!」

「本当だ! えなちゃんのお父さん頑張って作ったんだね」

「そうなんだよね。今日のは(しょ)っぱくもないし、形も崩れてないし、結構、美味しい」


 この二人は、私が最近お父さんが弁当を作っていることを話したため、そのことを知っているから、昼食になると毎回上手く出来ているか見てくるようになった。

 二人が言うように、最近上手く作れるようになっていた。

 以前は、本当に酷くて、塩っぱいし、形も崩れていて、スクランブルエッグかと思うほどのときもあったから、そう考えると少し泣けてくる。

 そんな風に感傷に浸っていると騒がしくなくなっていた。

 疑問に思って、横を見てみるとどうやら困っていた類のことに気づいた亮が声をかけたらしい。


「あれ。類、まだ弁当食べてないのか?」

「皆と話していて、皆ご飯食べてないのに一人だけ食べてたらいけないかなと思って」

「別にいいと思うけど、類が気になるみたいだから、話すのはこれで終わり。とりあえず、昼食にしようぜ」


 亮が手を叩いて、「解散〜! 解散〜!」というと皆それぞれ自分の席へ戻ったり、食堂へ行ったりした。

 そんな様子を見ていた私と美音は、亮と類に話しかけた。


「そういえば、困っていそうなのは気づいていたけど、助けてあげられなくてごめん、類君。本当は困っているか分かんなかった...って言い訳だね」


 類は首を横に振り、


「ううん、僕が皆に自分で、伝えれなかったのがいけないから。それから亮君ありがとうね、助けてくれて」


 と亮と私の顔をみて言った。


「うん? どういたしまして? ……何かあったらまた言えよ! 俺がなんとかしてやるから」


 初めは、感謝されたことに驚いていた亮は、胸を張り、胸に手を置くが、次に紡がれた美音の言葉で固まってしまう。


「そう言って、何度後悔していたことか、だから類、こんなの頼りにしたらだめだよ? 頼りにするならこのえなちゃんの方が良いから〜 ね、えなちゃん? それから類って僕っ子だったんだね」

「それを言うなら"僕っ娘"だろ! それに類は女じゃないし」

「だ〜か〜ら〜 僕"っ子"なんでしょ! このわからず屋」

「なんだと〜!」


 類は、挑発をしている美音とその挑発に乗ってしまう亮を見ていてぽかんとしている。


「でもこう見えて亮って、類を助けたみたいに行動力があるから、人気者なんだよね」

「そうだね〜」

「絵菜はともかく、急に褒めたって、...何もでないぞ...って、行動力がなかったら人気者じゃないみたいじゃないか!」 


 亮は初めは照れていたが、美音の言葉の裏の意味に気付いたらしくまた怒りを表す。

 そんな二人をよそに私は、二個目のおにぎりを食べていた。


「えっ!? 逆に行動力がなくても人気者だと思ってたの?」

「うっ!」

「あ!それとも、人気者になりたくて高校デビューしたの?」

「......」


 ニヤニヤしながら煽る美音とそれがあたっているのか何も言い返せない亮、私からしたら見慣れた光景で「あぁ、またやってるよ」といった感じであまり気に留めていないが、類は違ったらしく、突然お腹を抱えて笑い出した。


「っふふ。っあははははは」

「「「…え? 類が笑った」」」

「…しかも、お腹を抱えて」


 私達はぽかんとし、三人で顔を見合わせた。

 すると、るいは、むすっとして、


「まるで僕が笑わないみたいな言いようで! 僕だって笑う時は笑うよ!」

「だって、ねぇ」

「うん…」

「まぁ、そんな反応になってもしょうがない気がしなくもないな」

「だって、ずっと授業で完璧すぎて、子どもっぽいところを見てなかったし」

「っえ! 皆僕が完璧超人だと思ってるの?」

「「「うん…」」」

「僕にも弱点あるよ!」

「た、例えば?」

「例えば……例えば、次の教科の家庭科とか苦手だよ。だって、ほら、料理とか無理だし、裁縫なんかもっと無理。玉結びだって出来ないくらいだもん」

「それって、要は初めからできないってことじゃんか」


 亮は、類の所へ行き、弁当を見ると


「じゃあ、これは類が作ったわけじゃないってことだよな」

「う、うん。お父さんがつくった」

「っえ! じゃあ私と同じじゃん! 私のも、私のお父さんがつくったんだよね」


 類と同じことにびっくりしてつい身を乗り出す勢いで話してしまった。

 類は、そんな私に驚きながらも返事をした。


「僕の家は、朝ご飯とお弁当がお父さんがつくって、夜ご飯と休日の昼ご飯をお母さんがつくっているんだ。どっちも料理できるからこそ、なんで僕は料理できないんだろうといつも思う」

「そうなんだね。でも良いなぁ私のお父さん、やっと卵焼き上手く焼けるようになったんだよ。私でも作れるのに」

「そうなんだ。僕は、作れないから…」

「わっ!ご、ごめん。そんなつもりじゃ…」

「あっ、またえなちゃん類に謝ってる」

「お前は、もうちょっと反省をしろ」


 美音は、亮にゲンコツをくらわされ頭を抱えている


「酷いよ、乙女の頭にゲンコツ入れるなんて」

「誰が乙女だ、誰が、そもそも乙女は煽ったりしないだろ、それに、乙女って言うなら絵菜の方が当てはまると思うが?」

「前の方は置いておいても、えなちゃんが乙女というのは、同意見だよ。お前と同意見なのは気に食わないけど」

「わ、私?」


 戸惑う私を見て二人だけじゃなく、類までもが笑っている。


「ちょっと! からかったでしょ? まぁ、いいけど」

「良いんだ。それでこそ、私のえなちゃん! それにしても、類にも苦手なことがあるって知ると急に親近感が湧くよね!」

「うん、本当にね」

「まぁ、こんな騒がしいけれど、これからよろしくな、類!」

「うん、よろしく。それから、その、……と、友達になってくれる、かな?」

「「「……?」」」

「っははははは! もう俺達友達だろ!」

「そうだよ~! もう友達でしょ?」

「うん、もう友達のノリで話してた」

「……!」

「僕あまり友達つくったことないから、分かんなかった」

「確かに、完璧に見えると近寄りがたいからな。まぁでも、俺達はそんなこと気にしないけどな!」

「「うん、うん」」

「ってことで、改めて、友達としてこれからよろしくな」

「よろしく〜!」

「よろしくね!」

「……うん!」


それから私達は、残りの時間、お互いに自己紹介がてら昼食を取りながら、好きな事や苦手な事など話した。


そして、昼食兼昼休みが終わり、家庭科の授業がやってきた。

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