第十七話 穂乃花先生の呪い
私は、さっきまでとは変わって静かになった教室でどうしたものかと考えていた。
あの後、警察やら救急車やらが来て何とか事件はおさまった。
テロの目的としては『神に近きもの』の捜索だったが、さすがに警察相手にはそんなこともいっていられなかったようで表向きには『白上学校に恨みを持つものの復讐』と銀行強盗と同じような感じで『お金を巻き上げる』といった二つの理由で犯行したこととなった。
ちなみに、テロリストは全員男でエルフと人間が協力した犯行だったらしい。
エルフがこの世界にいるとばれてしまうと面倒だったのか、警察が来る頃には私のクラスにいたエルフの青年も少し長くて先がとがった耳が人間の耳と変わらない形になっていた。
警察官たちはテロがあったと聞いていたのにもかかわらず、死人どころか負傷者すらいないと聞いて驚いていた。
なにより、学校にいた人たちだけで刃物などの武器を持っていた人を無力化させたというならばなおさらだ。
でも、誰一人として簡単な事情聴取のときに私や類みたいに魔法を使っていた生徒のことを話さなかった。
きっと話しても理解されないだろうし、もし話してしまったときに未知の力を持っている私たちに何をされるか分からなかったからだろう。
まぁ、そのおかげで私は警察に問い詰められることもなく、ありがたかったが。
警察に話を聞かれるとかいう面倒なことになったら私はきっと逃げていただろうが。
もちろん、魔法を使って。
窓を飛び降りて空を飛んで行ったり、転移魔法で移動したりして逃げていただろう。
そんなことは置いといて、とにかく事件も収束をし始めてはいるが、学校側の態様の相談や生徒の精神的なものを休ませるために休校となることになった。
そのため、すでにほとんどの生徒が学校から家へと帰っていった。
私たち以外は。
私と類、美音、亮、兄の政近と海莉は私のクラスに残されていた。
そこには、穂乃花先生もいる。
「それにしても皆さんは何者ですか? 特に絵菜さんと類君」
私たちの力を不思議に思ってのことか穂乃花先生が質問してきた。
私が答えるのに困っていると類が答えた。
「詳しくは話していいかわからないので簡単に言いますが、僕と絵菜は異世界で過ごしたという前世の記憶を持っています。そのことがあったため、『魔法』を使うことができました。もちろんこのことは他言無用でお願いします」
類は人差し指を立てて口元にあてるようにして内緒というようにジェスチャーをする。
もしも、ここにクラスメイトが全員いたら、ちょっとした騒ぎが起こるだろう。
類は、顔だけは良いからな。
穂乃花先生は、「分かった」とでも言うように頷く。
「なるほどね。でも、亮君が狙われた理由や政近君や海莉君がその『魔法』ってものを使えた理由も前世の記憶があるからってこと?」
私も穂乃花先生と同じく、気になっていた。
前世の記憶を持っていなく、『魔法』というものが空想の世界であるのにもかかわらず、何故『魔法』を使えたのかということを。
「いや、俺達には前世の記憶はないぞ。それに、魔法を使えたのは、ただ何となくやったらできたってだけで」
兄よ、先生にため口とは何事だよ。
私は内心ツッコミながら、話の続きを待っていた。
「それに、『魔法』は漫画とかラノベとかでしか見たというか読んだことがないけど、まぁその結果もあって使えたのかもな」
「それは、自分も同じかも」
珍しく、海莉が話したこともない人の前で声を出した。
なるほどね。
確かに、漫画とかラノベを兄も海莉もよく読んでいるからこそ『魔法』のイメージが付きやすかったのだろう。
「そうだったんだ。教えてくれてありがとう」
穂乃花先生は、二人にお礼を言うと「皆も家へ帰るように」と言った。
すると、さっきまで空気のごとく気配を消していた類の精霊的な存在の黒月と類の専属執事兼護衛の『ミシェル・ルーク』が話しかけてきた。
「主様、それから絵菜様、その人何か持ってる気がするんだけど」
「恐れながら、類様、絵菜様、発言させていただきますが、そのお方、穂乃花様は呪いを受けているように見えるのですが」
黒月は、話すと類の胸元に飛び込む。
類は、そんな黒月を抱きとめ、頭をなでる。
そんな微笑ましいことをしているのけれど、話の内容は全く微笑ましくなどなかった。
それどころか、結構やばいことを言っていた。
「黒ちゃん、執事さんが言ってた、その『呪い』のことって何か知ってるの?」
「『黒ちゃん』? 美音、お前まさか月のことを言ってるんじゃないんだろうな」
「そっちこそ『月』って何よ。『黒ちゃん』の方がいいに決まってるよ。ね、黒ちゃん」
「いや、『月』の方がいいに決まってるよな」
いつものように、美音と亮の間で言い争いが起こった。
この二人はどんな状況でも変わらないな。
というか、『呪い』の話は、疑問はどこにいったんだよ。
私が少しばかり呆れていると、黒月も私と同じだったようで呆れていた。
「あのさ、僕にはちゃんと『黒月』って言う主様から頂いた名前があるんだけど。それに、あだ名で呼ぶのは構わないんだけど言い争いになるならあだ名付けないでくれるかな。それと、僕は精霊みたいな存在だから性別は特にはないんだけど、一様男として振舞ってきたからちゃん付けはちょっと」
珍しいこと続くもので、黒月が早口で多くの言葉を紡いだ。
普段、こんなにしゃべることも、早口になることもないのに。
「えっと、すまん。」
「私も、ごめん。」
申し訳なさそうに、落ち込む二人。
ここでちゃんと謝れるのは、二人のいいところなんだけど、すぐに言い争いになるのはあまり良くない気がする。
「分かってくれたのならもういいよ。それで、美音だっけか。『呪い』についてだったよな」
「は、はい!」
黒月は、類の胸から飛び降りて、教卓の周りに皆が集まっていたからなのか、教卓に乗る。
それから、『呪い』について話し始めた。
「『呪い』というものは、一種の魔法でな。その魔法は付与魔法というか、支援魔法というかその辺の魔法と同じような形で、人にかけることができる。もちろん『呪い』と聞くと、悪いイメージが大きいと思うが、良いものもあったりする」
「良いもの?」
美音は、質問した張本人だけあって食いつきがいい。
「そう、良いもの。例えば、『どれだけ魔法を受けてもダメージを受けない』とかそういったものもある。が、悪いものもあるのも事実で、そこの人にかけられている『呪い』も悪いもののようだな」
「......! ちなみに、私にかけられた呪いって」
「それは......」
話すか迷っている黒月に向かって、私と類は頷いた。
話してもきっと大丈夫だと伝えるように。
「それは、『術者の任意で呪いを受けた人の言動や行動すべてを行える』というものだ。それに、厄介なことに、そのやったことは自分の意志で動いたと思わせる効果もあるようで自分でも言われなければ気づかないものだろうな」
黒月は話し終わると役目が終わったからか、また類の胸元へ飛び込んだ。
そういえば、穂乃花先生らしからぬ言動をいつ高していたような気もする。
だとしても、どうして穂乃花先生に呪いなんてかけたんだろう。
というか、どうやって呪いをかけたんだ?
そもそも、この世界には魔法を使えるものがいないはず。
だから、異世界に転移魔法を使って移動することもできないし、もし仮に、魔法を使える世界からこちら側に来ようとしても世界と世界を渡る転移魔法を使うことができるのは、すべての世界を見てもほんの一握りしかいないだろう。
それに、世界を渡ることができたとしても目的が、封筒を渡すことだったり、『神に近きもの』を見つけることだったり、捕らえることだったりするのであればこんな回りくどいことをしなくても、自分木酉でなんとかできたはずなのに。
私の中では、いくつもの『何故』が浮かんできていた。
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