第十六話 黒い生き物
類を止めた後、私たちは亮を助け、他のクラスの様子を見回りつつ助けていた。
中には、助けなくてもいいクラスもあったが。
ちなみに、兄がいるクラスもその一つだ。
『神様に近きもの』ではなくても、魔力が強い、多い人は魔力を使って魔法を放ったり、人の魔力の色を見たりすることができるのだ。
もちろん、魔力が少ないと、たとえ『神に近きもの』でも人の魔力を見て判別することができないが。
だから、あの『謎の封筒』もとい『神に近きもの』を判別する封筒のことも、兄には見えたのだ。
逆に言えば兄よりも『神に近きもの』であった青色や緑色の封筒のお持ち主は、そのことを見分けられないくらい魔力が少ないのだろう。
『神に近きもの』の位で魔力量の平均に届いていないものは、自分ですら分からないと聞いたことがある。
ということは、亮は私と類より魔力量が少なく、美音は類と亮の間ぐらいの魔力を持っているのかな。
でも、類も私も魔力操作には長けているからもしかしたら正確に測れていない可能性があるけど。
兄には、私のですら見えたということは『神に近きもの』ではない普通の人間なのに私たちと同等ぐらいの魔力を有しているということになるから......異世界でも人類最強な気がする。
実際、見回りをしに行ったときに魔法で氷と炎を作り出して暴れてたからな。
三年生のフロアを見回りをしつつ助けていた時に、突然大きな音がして見に行ってみたら氷漬けにされたエルフと焼死しかけている人が寝転んでいて誰がやったんだろうと思ったら兄だったし。
なんなら
『来るのが遅かったな。絵菜?』
とか言って煽ってきたし。
美音と言い、兄と言いなんで私の周りには煽ってくるというか煽る人ばっかりいるんだろうか。
類は友を呼ぶというけど私、人に対して煽るようなことをしたことがないと思うんだけど。
うん......思い出すのはやめよう。
これ以上思い出ていたらムカついてきて、魔法で校舎を吹っ飛ばしかねない。
兄のクラスへ顔を出した後は、私はテロリストたちに行き場のない怒りをぶつけてストレス発散をしていた。
そういえば、彼のクラスも助けなくてもよかったな。
彼も魔法を使ってたっけ。
彼......軽音部のもう一人のメンバーでキーボード担当の『藪本 海莉』だ。
海莉は、青みがかった漆黒の髪の毛の色をしていて髪は整えられていてさらさらだ。
それに、美形な方だとも思う。
でも、陰キャというかオタクというかコミュ障というかであまり話しているところは見かけないが。
私が、海莉のクラスについたころには海莉が風魔法を使って服だけ切って下着姿にして、植物の蔓のようなもので拘束してた。
もともと海莉は細かくて、繊細な作業でも手先が器用なこともあって、なんてことないようにこなしてしまうような人だったから、魔法でもうまく活用したのだろう。
まぁ、普段静かなクラスメイトがヒーロー的存在になったものだからクラスメイトに胴上げさせられそうになっていたが。
先生も困惑していてどうしたものかと手におえない状況だったらしい。
海莉がクラスメイトから逃げ回っている中、私が来てしまったものだから私を盾にして隠れてしまい、海莉のクラスメイトは少し残念そうにしながらも追いかけるのをやめて今後どうするのかを先生に聞いていたっけ。
あの時の海莉、私を見つけて笑顔になり安心したように胸をなでおろしてから急いで私の背中に隠れてきたから、びっくりしたのを覚えている。
見回りも終わり私のクラスに戻るとそこには目を覚ました美音と亮がいた。
類もいたが黒い物体と執事のような人と話している。
どこかで見たことがあるような、というかどうやって入ってきたんだ?
私は、さっきまで空いていなかった窓を見る。
開いていなかったはずの窓が開いているということは、そこから入ってきたなんてことは無いよね。
私が、その人たちのことを思い出そうと必死になっていると突然視界がふさがった。
「えなちゃ~ん! 怖かったよ! 私のせいで死んじゃったんじゃないかと思った。無事でよかった」
「うん。私も、美音ちゃんが無事でよかったよ」
どうやら、美音が私に抱き着いてきて視界が半分程度ふさがってしまったようだ。
美音が抱き着いたまま少し離れて、視界が完全に戻ると亮がこちらを見ていた。
「絵菜、本当に大丈夫なのか? だって、この短剣で刺されたんだろ」
亮の手には男が持っていた短剣がある。
男が持っていた時は普通のナイフや包丁と変わらないものだったが、亮が持っている今は短剣が青白く光っている。
どうやら、亮の魔力に反応しているようだった。
男には、魔力が全くないからきっと反応しなかったのだろう。
私は、拘束していた男を見て確認をした。
「うん。本当に大丈夫だから。傷もないし」
「まじかよ」
亮が驚いているのを横目に気になっていることを聞いた。
「亮、その短剣ってさもしかして『魔道具』だったりする?」
「あぁ、類にそう言われたが『魔道具』ってなんなんだ?」
「『魔道具』はね、魔力を込めることで強くなる武器や使えるようになる生活用品のことかな。武器は、魔力を込めなくても十分強いものが多いけれど、魔力を込めることで込めない時よりも何十倍もの威力が出るって言われているかな。でも、ランプとかの生活用品は、魔力を込めないと使えないからこの世界の人には使うのが難しいかな」
「なるほどな」
亮は、自分の手で握っている短剣を見つめている。
青白い光は、強くなったり弱くなったりしている。
どうやら、私が『魔道具』について説明したことで魔力を込める量を調節しているらしい。
そういえば、亮もだけれど兄も海莉もどうして魔力の扱い方なんて知ってるんだろう。
私が考えごとをしていると、足元に柔らかくて暖かくもふもふした黒い物体がいた。
黒い物体は、さっき類のところにいた子でこちらを見つめている。
どうやら夢で見た黒い猫だったらしい。
夢? そっか、夢で見たからこの子も執事のことも知っていたんだ。
というか前世一緒にいたわ。
でも、狐とメイドはいないんだな。
私は、黒い猫名前を呼び、首元を指でなでる。
「黒月、久しぶり」
私がなでたところが気持ちよかったのか『にぁ~』と猫特有の甘えるときに聞く、鳴き声を発する。
『黒月』という名前の由来は、黒くてきれいな毛並みと月のように綺麗な金色の目をしているからだ。
「黒月、そういえば白桜とかはどうしたの?」
白桜とは、白い毛並みで尻尾と耳の先端が茶色になっていて、目の色が私の前世と同じ桜色の狐のことだ。
名前の由来もそこにある。
黒月は、私の疑問に答えようと口を開く。
もちろん普通の猫だったら、しゃべることができないが。
「今の名前は絵菜様で合ってるか? 白桜とメイドは今とらわれている。もちろん、この世界というか『宇宙』ではない別の場所でだ。場所は僕たちにもわからない」
「っえ! 猫がしゃべった!」
私に抱き着いていた美音は、足元に来た猫がしゃべったことに驚き私から手を放す。
そう、今の言葉は紛れもなく黒月の口から紡がれていた。
黒月や白桜は一見、普通の猫や狐に見えるがその正体は、精霊などに近い存在だ。
ちなみに擬人化もできる。
「そっか。ありがとう、黒月」
私は、情報をくれた黒月に礼を述べると黒月は『どういたしまして』というようにして『にぁ~』と鳴いた。
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