第十五話 反撃開始
私には前世、双子の弟がいた。
まさかその子が転生してきていて、『一条 類』となっていたことには驚いた。
でも今は、そんな暇はなさそうだった。
なんせ、今いるこの学校で、テロが起きているからだ。
一人は、短剣を持っていたが、もう戦えないといった様子で怯えきってしまっている。
もう一人は、エルフの青年で亮を実験台にしようと持ち帰ろうとしている。
というか何故ここに、この世界にエルフがいるんだ?
この世界とは別の世界、ラノベ風に言うなら『異世界』の住人のはずなのに。
それを言ったら、創造神の子どもである私たちがいる方がおかしいか。
まぁ、今どうでもいいことか。
とりあえず今は、この状況を何とかして、他のクラスを助けに行くことと、亮を助け、亮と美音を安全なところに移動させることが大事だからな。
幸い、他のクラスも含めて怪我人はいるものの誰も死んではいないからまだ大丈夫か。
たとえ誰かが死んでしまっていても、生き返らせることは可能だが、久しぶりだからできるかわからないな。
そういえば、エルフの青年、前世であったことがある気がする。
などと考えていたら、魔法で作られた炎の球体が私と類めがけて向かってきた。
炎の球体、ファイアボールかな。
「よそ見している暇なんてあるんですか。わたくしのことを忘れられないでくださいよ。それとも、彼がどうなってもいいんですか」
「どうもしないくせに」
私は、青年の言葉に対してつぶやいたが聞こえてはいないようだった。
類は聞こえていたようだが。
一直線に向かってくるファイアボールに私と類は避けることもできたが、避けてしまうと美音に当たってしまう可能性があったため、防御魔法である、ウォールを発動しようとした。
すると、私が発動する前に類が発動させていたようで、半透明の球体の壁に覆われる。
その後、ウォールにファイアボールが当たったが、吸収されるようにして炎の球体は消えた。
類が使うウォールには、魔力を吸収する特性があり、青年の魔法も吸収されてしまった。
ちなみに、この魔法は類と私が改良して作ったものでありこの世界で使えるものは、というか存在を知っているものは五人ぐらいだと思う。
「なぜ、当たらないのですか。これでもわたくしは強い方だと思うのですが」
「なに? 亮のことを人質にした次は自画自賛? 笑わせるなよ。もういい、殺してやろうか。」
類は、抑えていた魔力と殺意をむき出しにする。
その影響か類の姿が、前世の姿になっていた。
黒くてきれいな髪の毛、漆黒の瞳。
誰もがその変化にびっくりしていた。
「なんなんですか、その姿は。たとえ神様であってもそれほどの魔力を何故持っているんですか」
類の魔力と殺意にあてられて、もう神にすがる思いといったようで怯えてしまっている。
クラスメートや穂乃花先生も同様だ。
この世界、特にこの国には戦争といった争いごとがない。
だからこそ、こういったものには慣れていないのだろう。
それよりも、今は類を止めないと。
ここで殺してしまっては、余計にトラウマを植え付けるだけだ。
「類、そんなに魔力と殺意をむき出しにしたらだめだよ。それに、ここで人を殺すのも」
「なんで? 何でだめなの? だって、そいつは、そいつらは亮を実験台にするといっただけでなく、人質にもして、美音が襲われ、絵菜に関しては一回殺されたんだよ。なのにそんな奴らをほっとけって? それこそダメだろ。」
「それは、そうだけど。」
私は、言葉に詰まった。
確かに類の言う通りだ。
以前の、前世の私だったら同じ考えになっていたかもしれない。
でも、あることがあったから、私は力を制限するようになっていた。
人の命を奪うことでどれだけ多くの人を悲しませてしまうのかを知ってしまったから。
感情的になって力を暴走させてしまったとはいえ、許されることではないのだから。
たとえ神であってもだ。
あのときは、どうかしていたし、幸い創造神の力を使ってなかったことにできたからよかったけれど今回はそうもいかない。
だから、親友に弟に大切な人に同じことをしてほしくない。
だから、止めなければ。
類を。
弟を。
「何にも言わないってことは、良いんだよね」
「......ない。...く、ない。良くないよ。ここで殺してしまったら皆にさらにトラウマを植え付けてしまうんだよ。それに、私みたいになってほしくない。だから、やめて、ほしいかな。」
私は、いつの間にか前世の姿になっていたらしい。
皆が目を見張っている。
まるで、夢でも見ているかのような目で見ている。
それもそうだ。
私の前世の姿と今世の姿ではだいぶ違うからだ。
今世は、焦げ茶っぽい黒色の髪で、目の色も黒だ。
でも、前世は桜色が少し混じっている白銀の髪で、目の色も桜色だ。
この世界の人には、信じられないものでも見ているような気分だろう。
エルフの青年も同じような反応をしていることには少しびっくりしたが。
「そっか。姉様がそこまで言うなら仕方ない。命拾いをしたな、そこのエルフ」
「なぜ、あなた方がここにいらっしゃるのですか。創造神のお子様方が。」
信じられないものを見ていた理由はそれか。
なら、納得がいくようないかないような。
「信じられない。なぜわたくしはあの方々に気づかなかったのだろうか。というかあの方々に刃物を突き刺して許させるはずがない......」
などと、エルフの青年はぼそぼそと言っている。
まぁ、とりあえずこの教室はもう大丈夫そうだな。
でもほかのクラスがどうなっているかはまだ分からない。
早く助けないと。
私は、次やるべきことを考えながら、亮を救出する類の姿を見た。
また会うとは思わなかったな。
これからどうなっていくかは、分からない。
でも、きっと大丈夫だよね。
私は、横で寝ていた美音の髪の毛をなでた。
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