第十三.五話 双子の弟
絵菜が目の前で刺された。
そのことに衝撃を受けた僕は、正気でいられるかが分からないぐらい怒りに満ちていた。
僕が、この世界に来てからのことだ。
生まれた当時は、前世の記憶がなかったが、ここではないどこかで、過ごしていたような気がしていた。
そもそも、赤ちゃんは、本能では動くかもしれないが、こんなにはっきりと思考できることも、今でも記憶に残っているということもおかしいと思うからだ。
それから、五年経った頃だった。
丁度、五歳になる誕生日の夜だった。
夢の中で、少年と少女、黒い猫、白い狐、メイド、執事がいる夢を見た。
でも、そこは僕が今いる『地球』または、『宇宙』ではないどこかだった。
それから、何度か似たような夢を見た。
でも、出てくる人物は同じなのに場面はいつも違った。
それに、夢を見るたびにそれが現実で本当にあったことのように思った。
それからさらに、二年が経った頃、僕が七歳になった日、それは突然視えるようになった。
それは、人や動物、植物などの生き物や建物まで周りに視えた。
茶色の人が多く、時々、緑や青の人もいた。
でも、僕だけが白色だった。
白色に少しだけ黒が混ざった色。
だけど、よく似ないと白色にしか見えない色。
そして、それが何なのかもわかっていた。
それが、魔力だということを。
その日の夜だった。
また、夢を見た。
その夢は、いつもと同じ人たちと、二匹の動物たちの夢だった。
いつもと違うということがあるとするならば、現実で見えるようになっていた魔力が夢でも見えるようになっていた。
そして僕は驚いた。
その夢にいつも出てくる少年と魔力の色が同じだったからだ。
それで、僕は何者なのかを、今までの不信感を払えたのだ。
僕は、神の子どもで、もともと違う世界で生きていたという前世を持っているということを。
姉様を追いかけるようにして、転生をしたということ。
それから、僕は姉様を探すようになっていた。
姉様の魔力は、白色でほんの少し桜色が混ざっていた。
姉様の魔力も僕のものと同じで、注意深く見ないとただの白色に見えてしまう。
だけど、そもそも白色の魔力を持っている人はいないから、分かりやすいと思った。
でも、そう簡単には見つからなかった。
それから何年経った頃だっただろうか。
彼女、『本田 絵菜』を見つけたのは。
たまたま、家族で旅行をしていた時だった。
白くて、でも僅かに桜色が入っている魔力をまとった人を見つけたのだ。
彼女は、茶色の髪をしていて、友達と話しているようだったが、その時に見せる笑顔が、姉様の笑顔と似ていた。
当時、僕は十五歳で、高校試験を受けたばっかりだった。
だから、彼女と同じ学校に行くには、転校をしなければならなかった。
その結果、六月に転校をするというおかしなことが起こったのだ。
だが、転校しただけの価値はあった気がする。
僕は、人付き合いが苦手だ。
そんな僕でも、美音と亮、それから絵菜とうまく話すことができていた。
ちなみに、美音と亮の魔力は赤色だった。
僕は、平和なこの時間が好きだった。
なのに、あの『謎の封筒』もとい『神に近きものを判別する封筒』から、どんどんこの好きな時間が、大切な人が僕の手からいなくなってしまう様な気がしていた。
案の定、予測していたことが的中した。
目の前で大切な人が絵菜が、姉様が、刺されたのだ。
僕の姉様だから神の子どもでもあるし、神という存在、特に創造神の子どもともなると死ぬことはない。
その場で生き返るか、転生するかのどちらかだ。
そうであっても、僕は許せなかった。
美音を刺そうとしたことも。
亮を連れて行こうとすることも。
絵菜が刺されたことも。
なによりも、何もできなかった自分に対してもだ。
後ろでは、美音が信じられないというばかりに泣きじゃくっている。
「えなちゃんが......えな、ちゃんが......私のせいで...」
せめて、絵菜が姉様が、ここに戻ってくるまでは皆を守らないと。
でも、今の僕に力が制御できるのか?
もしかすると、また前みたいに世界を......
いや、今はそんなことを考えている暇はない。
とにかく、守ることを考えよう。
僕は、姉様が帰ってくるまで、守ることを決めた。
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