第十二話 大切な人
「なぁ、もう話は終わったんだろ? だったら、もう殺してもいいよな? 早くあの威勢のいい奴らのゆがんだ顔が見たいんだよ」
「まぁ、話は終わったので、赤い封筒を持っている人以外はいいですよ」
「よっしゃ! じゃあ、あの娘からにするかなぁ」
男は、美音のことを見た。
二人の物騒な会話を聞いて、怯える生徒たち。
美音ももちろんその一人だ。
さらに狙われているとなればなおさらだ。
その中、亮は怒りに任せて、テロリストたちに言い放った。
「おい! さっきと言ってることが違うじゃねえかよ。俺を捕まえたら、だれにも手を出さないんじゃないのかよ!」
「おっと。それは誤解ですよ少年。『わたくしたち』というのは、わたくしたち組織のことをさしているのであって、そこの男が所属している組織のことは指していませんよ」
「てめぇ! 嘘つきやがって」
「嘘はついておりません。そちらが勝手に、勘違いをしただけでしょ」
「......っ!」
フードをかぶった人は、亮を挑発するように言う。
亮は、言い返したいようだったが、唇をかんで我慢していた。
美音にいつも煽られていたため、それに対する耐性はついているようだった。
無言の世界が広がる教室。
そんな時、ずっと黙っていた類が口を開いた。
「あのさ、勉強の邪魔。うるさいんだけど、静かにしてくれるかな。あと、ずっと聞いてたけど人を殺すだの言ってたよね。僕の大切な人たちに、特に僕の姉様に手を出したら分かってるんだろうね」
その声は、いつも聞いていた優しくて暖かい声ではなく、低くて怒りがこもっているような声だった。
その声に、皆びっくりする。
特に私たち三人は、毎日のように会話をしていたから、初めて聞いた声に戸惑った。
それに、『兄弟はいなくて、一人っ子だよ』って言っていたのになんで『姉様』なんて言ったんだろう?
そんなことを考えていると、男が唐突に笑い始めた。
「ふふふ、ふははは、ふはははははは。君良いな。じゃあその『姉様』とかいうやつから殺すとするか」
というと、男は刃物を構えこちらへと向かってこようとする。
でも、その前に男はフードに人によって手で押さえられていた。
「まぁ、そんな焦らないでくださいよ。あそこには彼がいます。先に彼には、こちらに来てもらってからにしてください。でないと、傷がつかないか心配で」
「ふん、どうせ自分たちの手で傷をつけるくせに」
「それとこれとでは、話が違います。ということですので、そこの少年、こちらに来てもらえますか? こちらに来ていただければ、今だけは命はありますよ」
とフードの人は、亮に手を差し伸べる。
でも、亮はそのことを断った。
「行くわけないだろ!」
「そうですか。では力ずくで行くしかないですね」
フードをかぶった人はそう言うなり、姿を消した。
正確には、目で追えない速さで動いた、だが。
「うわ、どこにいきやがった」
亮が探していると、亮の後ろ側から、声が聞こえた。
「こちらですよ」
振り返った時には、もう遅く、亮も声の主もいなかった。
いなくなったと思った亮は、フードを深くかぶったの人につかまっており、刃物を持った男の所にいた。
「はなせっ!」
亮は、つかまれている手を振りほどこうとしてじたばたする。
でも、フードの人はびくともしない。
「たとえ『神に近きもの』だったとしても、今のままでは、わたくしからは逃れられませんよ」
フードの人は、亮の首筋に指をあてる。
すると、さっきまで暴れていたのが噓のように眠ってしまった。
「亮!」
さっきまで、声すら出せなかった状態の美音が思わず声をあげる。
「わたくしの目的は果たしたので、もうやってもいいですよ」
「全く、どんだけ待たせる気だったんだ。でも、ここからは、楽しい残虐ショーの始まりだ!」
と言うなり、私たちの方に向かってくる男。
フードをかぶった人はというと、亮を抱え、そのまま事の終わりを見届けるようにして立っている。
男は、私たちのところまで来ると私の目の前で、美音のことを刺そうとした。
なぜかその時、美音に黒髪の男の子の姿が重なって見えたような気がした。
その男の子はどことなく類に似ている。
でも、幻惑なので実際には存在しないが。
それを見たような気がした私は、『また同じことをするのか』と自分自身に問いかけていた。
何故そんなことをしたのかは私自身も分からないが、なんとなく前にもこんなことがあったような気がしたからだろう。
自分でも今の発言は中二病を連想させるなと思いながらも、ただ棒立ちをしていることができずに、私の足は勝手に動いていた。
そう、美音と男の間に挟まるようにして。
「えなちゃん......!」
「絵菜!」
後ろから声が聞こえたが、なりふり構わす美音を庇った。
『グサッ』
私のお腹あたりにナイフらしきものが、刺さる。
痛みが走り、思わず顔をゆがめてしまう。
あぁ、まだ十五年しか生きていないのにもう死んじゃうのか。
まだまだ、やりたいことがあったのにな。
類の楽器を決めたり、皆で曲を作ったり、どうでもいいことを話して、時には喧嘩もして、馬鹿みたいに笑って過ごしていたかったな。
それに、高望みはしないから、今まで通り美音と亮のバカみたいな話も聞いていたかったな。
私は、消えていきそうな意識の中いろいろなことを思い出した。
これがいわゆる走馬灯というものなのだろう。
最後まで、美音と類は声を掛けていたようだが、もう私には意識を保つのも限界だった。
ごめんね。
次会える時は、必ずみんなのこと守るから。
でも、『次』なんて保証はないか。
そういえば、『神に近きもの』がどうのこうのって話してたっけ。
じゃあ、最後にお願いぐらいしても良いよね。
どうかお願いします。
皆を守ってください。
あわよくば、私に力をください。
なんて頼みすぎか。
私の意識はそこで途切れた。
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追記:二作品目も投稿しているので、もしよかったら読んでください。




