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最後に君と

作者: 中谷工場

『この日本国にはブサイクな男と女が増加する一方だ。このまま放置をしておけば、より日本にはブスという人種が増加し、日本人の顔面偏差値はより低下する。昔の日本みたいに家と家との結婚。つまり、親が自分の子供の結婚相手を選ぶ文化があったではないか。そのお陰で美男子、美少女も多くいたし、優秀な日本人が日本を成長させてきたのだ。これは違憲に近いことかもしれないが結婚は美男と美女しかしてはならない。そして、結婚した暁には苗字は古谷にして頂く。』

とテレビから古谷首相の国会所信演説が流れたのは午前9時頃のことだった。

『この美女と美男しか結婚出来ないようにする政策は国家秘密とする。仮に国家秘密を知って悪用するブスもいるからな。』

と独裁者のような古谷首相が総理大臣に就任してから、はや3年。確かに日本にはブスが増えた。アイプチ。二重埋没は当たり前。一重まぶたばかりの男子。

『しかし、古谷首相の政策は気になるなぁ~。母さん。』

『私は結婚してるから、全然、気にならないわ。』

と朝食を食べながら、母親とそんな会話をしたのは日曜の朝のことだった。


次の日の月曜日。僕にはなんら変化のない日常が流れていた。

そして、高校の教室に入ると佐藤司が

『おい。山田の奴。何か台風のような激しい風に巻き込まれて行方不明らしいぞ。』

と言ってきたので、僕は

『まぁ。山田浩輔はブスだからな。もしかして古谷首相の政策と関係してたりして。』

と佐藤に冗談まじりに僕はそう返した。


そして、高校の放課後。川原祐太と一緒に下校していると川原の目はいきなり虚ろになり、身震いしながら、ある方向へ足を運ばせていた。気付くと川原が向かう先には可愛い女子高生がいた。『おい。大丈夫か!?』

とほっぺを叩き、確認すると

『いや。いきなり、砂漠のなかにいるような熱さを感じて、その先に水道があるような光景が目に映ったから、つい俺はこんな行動をしてしまった。長谷川に止められていなかったらと考えると本当に危ないところだった。』と川原は言った。

川原が僕にそう返すと、僕のスマホの着信音が鳴った。

佐藤司からだった。

『おい。長谷川。クラスの女子の田所と新谷が自分からイケメンの男子に挙動不審に近付いていって、痙攣のような症状を起こし、身体が段々、小さくなっていって亡くなったらしい。しかも、本当に山田浩輔の奴。台風に巻き込まれて死んだらしい。しかも、死んだ全員の共通点はみんなイケメン男子や美人などを見て、痙攣や発作などを起こして死んだらしい。』

と佐藤は言った。

僕はそれを聞いた時、古谷首相の政策だと確信した。

何故なら、亡くなった田所も山田もブサイクであったし、明らかに普通の死に方ではないからである。


帰宅すると、母親が

『美人や可愛い女の子には気をつけなさいよ。最近、そういう美女を見て不審な死に方をする男性が増えているらしいから周作も他人事ではないからね。』

と言った。

確かに母親が言ったことは正確なのかもしれない。僕も今いる世界が現実なのか非現実的なものかわからなくなってきている。

『しかも、美人を見て死んだ人全員がなにかの幻のような世界に吸い込まれて亡くなったらしいわ。物騒な世の中になったものね。』

と母親が付け加えて、そう言った。


ただ、僕には心配な事が1つあった。

僕の彼女の舞のことだった。

舞は目がぱっちりとしていてボブカットの髪型で誰が見ても可愛い女の子だった。僕が舞と会っても大丈夫なのか?

でも、そんな事考えても思考が袋小路になるだけで意味がないと悟った僕は舞に電話をかけた。

『もし。もし。舞。』

『周作。大丈夫?』

と聞く舞に

『大丈夫だよ。それよりも舞に会いたいんだ。』

『今の時期、会って大丈夫なの?』

『舞は俺の彼女だろ。大丈夫だよ。』

と僕が返すと、僕らは午後8時に僕が舞に初めて告白した小原公園で会うこととなった。


小原公園に行く最中も道行く化粧美人を見ては異性とは違った意味で心臓が高鳴り、擦れ違う女性も僕に警戒してるようだった。

そして、午後8時の小原公園で舞は僕を待っていた。

『舞!!』

僕が舞を呼ぶと舞は心配そうに僕に近付いてきた。

『周作。大丈夫?』

『大丈夫だよ。少しドキドキしてるけど。』

『大丈夫じゃないんじゃない?』

と不安そうな表情を浮かべる舞に僕はそっと

『18歳になったら僕と結婚して欲しいんだ。』

と告白した。

口唇を緩め、嬉しそうに微笑む舞。

『舞と結婚することで僕が女の子を見て死ぬ事もなくなるじゃん。そもそも、美人と美男以外が結婚することを阻止する政策だし、僕と舞が結婚することで僕は古谷の政策で死ぬことはなくなるじゃん。だから、舞。結婚しよう。』

と周作が言った時、小原公園の大きなテレビのビジョンがある速報を流した。

(臨時ニュースを速報します。現在、内閣総理大臣の古谷首相が

美人の秘書を見たため、急死致しました。古谷首相はどうやら自分以外の全国民に黒魔術をかけたつもりでしたが、魔術のかけ方に失敗し、自分にもかけてしまい急死した模様です。臨時ニュースをお伝えしました)


そのニュースが流れた後、僕は舞をぎゅっと抱き締めた

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