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不良神官なのに、イケメン好きの女神に気に入られて勇者になってしまった俺の話  作者: 新 星緒
《 エピローグ 》

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48/53

1 すべて終わった

 身支度を終えて廊下に出ると、カロンとダンテが並んで待っていた。

 おい。一緒にいすぎじゃないか?


「先輩、おはようございますっ」

 カロンが素晴らしい笑顔を俺に向けてくれる。

 可愛い。

「おはよう」

「私たちも王宮に泊まっちゃいました」

「いやぁ、最高の食事にベッド。神殿には帰りたくなくなるな」とダンテ。

 こっちも腹が立つほどいい笑顔だ。


「なんで泊まったんだ?」

 しかもふたり揃って。

「私の監視ですよ。魔王が隠れてないか」とカロン。

「俺は世話係ってとこ。ほら、勇者さまにカロンを頼まれているだろ?」と言ったダンテがプッと笑う。「不機嫌になるな」

「すみません、迷惑をかけてばかりで」

 カロンがなにを誤解したのか眉を下げる。


「なにひとつ迷惑なんて被っていないぞ」

「先輩は優しいなぁ」とカロンが微笑む。

「カロン、体はどうだ? おかしなところはないか?」


 彼女が剣に貫かれたのは昨日。丸一日経って不調が出てきたかもしれない。


「まったくないですよ。むしろ調子が良いくらいですってば」

「心配させとけ。カロンが巻き込まれて、こいつなりに罪悪感があるんだよ。な?」とダンテがしたり顔を向ける。

「もう二度とあんなことはするなよ、カロン」

「わかりましたよぉ。先輩てば会うたびに同じことを言ってます!」

「まだ三回くらいだ」

「十分多いです!」


 魔王が死んだあと、俺たち勇者は新しい魔物の襲来に備えて結界を張りながら、今朝、空が明るくなるまで穴のそばに交代で控えていた。何度か飛行系魔物に結界を破られたけれどすぐに対処できたし、それも昨日の午後にはなくなった。女神の話じゃ俺たち全員のレベルが上がって、結界が強力になったかららしい。


 今日の明け方に穴に蓋をして土砂を盛り、新しい碑を建てた。たまたま民間の施設にあった記念碑を流用したんだそうだ。前のものより小ぶりだが、ちゃんと呪文も彫り込んである。都中の石工やら彫刻家やらが動員されたらしい。

 全員で聖なる力を込めたし、結界を何重にも張った。

 女神は、碑を壊さない限り向こう百年以上は安泰と宣言してくれて、俺たちはようやく室内で休めることになったのだ。


 そんなわけで俺はあれ以降、カロン(おまけにダンテ)に会えたのは二回ほど。ほんの短い時間でろくに話せていない。

 とてもじゃないがカロンが足りない。

 しかも一度手にいれたた彼女の感触は、俺を満足させるどころか余計に貪欲にしている。



 ガチャリ、と音がして隣室からクレールが出てきた。


「話し声がすると思ったら、色情魔とお友達か。おはよう」

「おはようございます。よく眠れましたか」

 クレールが嫌そうな顔をする。

「もういいよ、うさんくさいのは。僕の前では普通にしてよ」

「その表情を見るのも楽しいですよ」

「サイテイ。僕は先に行くよ、色情魔。遅れたら、見習いとしっぽりしてるって言っちゃうからね」

 じゃあね、と去るクレール。


「しっぽりってなんですか?」とカロン。

「お前、色情魔って呼ばれてるのか?」と笑うダンテ。


「クセなんだよ。気に入った人間を変なあだ名で呼ぶのが」

 背後から突然声をがした。

 クロヴィスだった。

「起こしに来たんだが、必要なかったか」

 クレールが振り返る。俺たちに向かって舌を出し、すぐにまた歩き出した。


「気を悪くしないでやってくれ。感性が独特なんだ」とクロヴィス。「あ、クレールは従弟でな」

「従弟? エルネストはなにも言っていませんでしたよ」

「あいつは興味のないことはすぐに忘れるからな」と苦笑するクロヴィス。「クレールは俺やエルネストみたいな無骨なタイプは嫌いだし」


 へえ。自覚があるのか。

 というか従弟なのに、俺やエルネストに『クレールを頼む』とは言わなかったのか。こいつも面倒くさい矜持の持ち主らしい。


「まあ、ちょうどよかった、ジスラン」とクロヴィスが真面目な顔で俺を見た。「『だからなんだ』と思うだろうが、陛下が彼女の」とカロンを目で示す。「討伐命令を出したとき、エルネストは最後まで反対していた。あんなのは初めてのことだ」

「『だからどうしました』? あいつは、結果はでなかったけれど努力の過程を褒めらられる、というのは大嫌いでしたよ」

「……なるほど」


 頭を下げて、クロヴィスから離れる。

 彼からだいぶ離れたところでカロンが、

「私なら大丈夫ですよ」と言った。「怖かったし痛かったけど」

「そんな軽いものじゃないだろう!」

「まあ一週間に二回も瀕死になるのは、そうそうない体験ですよね」とカロンが笑えば、

「体験手記でも書くか」とダンテが混ぜっ返す。


 いや、瀕死は恐らく一回だ。二度目、彼女は死んでいた。

 最初はぎりぎりで命が繋がっていたのだと思ったんだが、回復させるために聖なる力を送り込んだときに、それまでのどの状態とも違う感触があったのだ。たぶんだがアマーレが助けてくれたのだろう。


「でも本当に大丈夫なんです」とカロンが柔らかな笑みを見せる。「先輩を殺める存在になるほうが恐ろしかったから」

「カロン」


 めちゃくちゃ抱きしめたいんだが!

 いけるか?

 今なら健気な後輩をねぎらう先輩として、許される範囲じゃないか?



 ガチャ、とすぐそばの扉が開いた。

 なんだってこんなタイミングで!


「あれ、ジスラン殿と神殿の方々。おはようございます」


 爽やかに挨拶してきたのはマルセルだった。だが目の下のクマがひどい。怒る気が失せるレベルだ。

 そういえば宮殿に戻ったらジョルジェットに再プロポーズをすると言っていたが、これは――


「あ、酷い顔ですよね。自覚はあります」とマルセル。「またジョルジェットにフラれてしまいまして」

 やっぱりか。

「私がなにを考えているのかサッパリわからない、と。ジスラン殿。あとで相談にのっていただけますか」

「……わかりました。ジョルジェット嬢とも話をしてみましょう」

「助かります!」


 マルセルが俺の両手を握りしめる。

 と、別の扉が開きバルトロが出てきた。

「みなさん、おはようございます」とバルトロ。「マルセル殿、一緒に行きましょう」

 バルトロが意味ありげに視線をカロンに移す。

「あ、そうか」とマルセル。「これは気がきかないで、失礼しました。寝不足だと頭が回らずダメですね。では先に行っています」


 マルセルは小走りでバルトロに駆け寄り、ふたりは早足で去って行く。


 カロンがなぜか満足そうな顔をしている。

「いい人たちですね。先輩は神殿の人間(こちら側)とちゃんとわかってくれてるなんて」

「そうじゃない」とダンテが小声でツッコむ。「ま、同じようなものか」


「私たちはこれから謁見をしなくちゃいけないのだが、カロンたちは?」

「終わるのを待ってる。おさから一緒に帰れとの命令だ」とダンテ。

「勇者から解放された先輩がふらふら遊びに行かないように、首に縄をつけておきなさいって言われました!」

「カロンがな」

「なんだそれは」

「女神が安全宣言を出したこと、正式発表はまだだが貴族たちには知れ渡っているみたいなんだ」とダンテ。「お前目当てのご婦人たちがわんさか待ち構えているんだよ」


「先輩、ダメですよ?」カロンが至近距離から俺の顔をのぞきこむ。「今日は神殿に帰ってくださいね。ようやく神官に戻れるんですから。私、祭服の先輩を見たいです!」

「もちろん帰るとも」


 ほっとしたように微笑むカロン。

 無防備に近づき、いつもどおりの振る舞い。

 俺とキスをしたことは記憶にないのか。

 それとも治療の一環程度の認識なのか。

 あんなに俺の腕の中で可愛くしてたのに。

 もうちょっと意識してくれたっていいんじゃないか?



 はぁぁ、と。

 なぜかダンテがそっぽを向いてため息をついた。

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