ビームヒーロー2
「まあ、トゲの出現地点は覚えた。ビビっても仕方ない、進むぜ」
美子がそう言うと、スタート地点に戻されたヒーローを再び前進させた。
「時間制限あるけど、気にせず慎重に行きましょう」
江奈が言った。
「ああ……と、ここだな。よし、ジャンプで回避!」
ヒーローは先程のトゲのトラップを跳躍でかわした。
「その調子その調子ぃ」
「へへへ。おっ、何か歩いて来たぞ」
ヒーローの前方から、目玉のついた黒い丸い物体が突進してきた。
「敵……か?」
「いや、どうみても敵でしょ。かわしてもいいけど、せっかくだし応戦しましょ」
「おう。ビームヒーローっていうぐらいだから、ビームで攻撃できるんだろう。攻撃はこのボタンだな」
美子はコントローラのボタンのひとつを押した。
すると、ヒーローはオノを取り出し、敵キャラを切り裂いた。
「ビームじゃねぇのかよ!」
「……タイトル詐欺もいいとこね。しかも、仮にもヒーローの武器がオノってどうなのよ?」
「きっと、実家が木こりか何かなんだろう」
「……またどうでもいい裏設定が増えたわね」
「まあ、敵は倒せたんだ。この調子でどんどん行こうぜ」
「ふー、何とか中盤まで来たぜ」
一息ついた美子が言った。
「……十回死んだけどね」
江奈が言った。
「それを言うなよ。初見殺しのトラップまみれだから仕方ないだろ」
「それにしても以外と単調ね。アイテムとかないのかしら」
「確かに、何かあってもいいよな……ん?」
「どうした?」
「いや、何かそこの背景の木の所から気配が」
「気配? あんた何言ってんの、大丈夫?」
「おい、ヤバイやつ扱いやめろ。何か気になるんだよな、攻撃してみるか」
ヒーローは背景の木の近くでオノを振った。
すると、その背景が切り裂かれ、中から木の実らしきものが出現した。
「ほら、隠しアイテムだ」
「……隠しもなにも初アイテムなのだけど」
「なんだこれ? りんごか?」
「イチゴじゃないの?」
「イチゴは木から採れないだろ」
「じゃあ、りんごでいいんじゃないの?」
「……本当にそうか?」
「いや、そこどうでもいいから! とっととそのアイテム取りなさいよ」
「分かったよ。ほい」
ヒーローは木の実を食べた。
そして、ヒーローは消滅した。
「いやいや、おかしいおかしい」
「……罠アイテムだったのね」
「わざわざ隠しといて、取っちゃダメなやつとかどんだけ性格悪いんだよ」
「何かもう、余計なことしない方がよさそうね」
「くそぅ、もう一回トライだ」
美子はコントローラを握り直した。