バトルレーシング3
「ふーっ、やっと毒沼から脱出できたぞ」
美子が言った。
「かなり時間とられたわね。まあ、幸い順位はまだ三位だけど」
江奈が顔をしかめながら言った。
「まあでも、運次第ではあるが、前のマシンを抜かすことが可能だということは分かった。最後まで諦めねーぞ」
「そのいきよ、美子……にしても四位のマシン遅すぎないかしら?」
「後方車両のことはどうでもいいよ。ウチらの相手は前の二台だ」
「……それもそうね。あっ」
「お、前のマシンが見えてきたな。マシンの真横スレスレから抜かしてやる」
「また余計なことを。せっかくのチャンス、油断すんじゃないわよ」
江奈がそう言った次の瞬間、相手のマシンの車体から、巨大な刃物が現れ、美子のマシンを突き飛ばした。
「はぁ!? なんだそれ!?」
「……なるほどそういことね」
「どういうことだよ?」
「どうもこうも今のがこのゲーム、「バトルレーシング」のバトルの要素ってことよ」
「……マジかよ。これじゃあ近寄れねぇぞ」
「落胆するのにほまだ早いわよ」
「え?」
「目には目を、歯には歯を、武器には武器を! きっとこっちのマシンにも武器が備わっているはずよ」
「なるほど、そうか! えーと……このボタン使ってないな」
美子はコントローラのボタンのひとつを押した。すると、美子のマシンの先端からミサイルが発射された。
「おっ! すげぇ!」
「おあつらえ向きの遠距離攻撃! これで前のマシンもひとたまりもないはず!」
二人はガッツポーズをした。
しかし、その喜びも束の間、放たれたミサイルは美子のマシンの前方に落下した。
「飛距離みじかっ!!」
「……完全にハズレ装備ね」
「ちくしょー、打つ手なしかよ……」
美子がそう言った次の瞬間、前方のマシンが毒沼に落ちた。
「……」
「……」
「……なんだこのコース?」
「あんたがランダム選んだせいでしょうが!」
「よし! 運も味方にしてくれたおかげで、残り一台抜かしてゴールすりゃクリアだ!」
美子が意気揚々と言った。
「……運しか味方にしてないけどね。まあ、結果が全て。油断はなしよ」
江奈が釘を指した。
「おう、もう余計なことはなしだ。地味に勝ってやる」
「……どんだけ魅せプレイしたいのよあんたは……あっ、ラスト一台、見えた来たわよ」
「きたな…………しゃあっ! 抜かした!」
「やるじゃないの! このままゴールラインをぶち抜きなさい!」
「おっし! ゴールライン確認! いっけえええええ!」
美子が絶叫した次の瞬間、美子のマシンの真横を高速の物体が横切り、そのまま一位でゴールした。
「……え?」
「……あれは……ずっと四位だったマシンだわ」
「……まさに、ダークホース」
戦意を失った美子は操作の手を止めてしまい、彼女達の結果は四位となった。