バトルレーシング2
「そうだ、これレースゲームだけど、どうやったらクリアってことにする?」
美子が尋ねた。
「んーどうせ難易度高いんでしょ? 一回でも一位取ったらクリアでいいんじゃないの?」
「ええ? ちょっと甘すぎないか?」
「甘いかどうかはやってみて判断しましょう」
「それもそうか……えー、次はコース選択か」
「初っぱなだし、このただの楕円形のコースでいいんじゃないの?」
「いや」
「それじゃあ、面白くない」
「うぉい! ウチのセリフ取るな!」
「……あのねぇ、わざわざ難易度高くしてどうするのよ」
「ちちち、ゲームをやる上で大切なのはただクリアすることじゃないのさ」
「……その心は?」
「どれだけ楽しんでクリアするかが大切なんだよ!」
「あっそう」
「……おかしいなぁ。いいこと言ったつもりなんだけど」
「バカ言ってないでさっさと決めてちょうだい」
「分かったよ。じゃあランダムで」
「いや、分かってねぇ! 変なのに決まったらどうするの……」
『毒沼トゲ山地獄コースに決まりました』
「あー、ほらぁ変なのになった」
「関係ねぇよ、地獄だろうが天国だろうが走り抜けてやる!」
「すごい自信ね。あんたレースゲーム得意なの?」
「いや、今日初めてやるけど」
「……今日は長くなりそうね」
「よし、レース開始だ。ぶっちぎるぜ」
「私達をのマシンを含んで4台でのレースね。頼んだわよ、美子」
「ああ、ビギナーズラックを期待していろよ」
「……本当に初レースゲーなのね。あ、カウント始まったわよ」
『2……1……スタート!』
「よし! 行くぜぇ……ってええ!」
スタート直後、美子のマシンの前を二台のマシンがぶっちぎっていった。
「いやいや、速すぎでしょ。 何? ロケットスタート?」
「……マシンの性能の差ってやつかしら? どうやらハズレを選んだっぽいわね」
「あれ? でも二台ってことは残り一台は?」
「画面下の小枠にノロノロ走っているのが映っているけど」
「……マシンの性能差ありすぎだろ。まあ、とにかく走るしかないな」
「不味いな、全然姿が見えない。これ追い付けるのか?」
「んーかなり厳しいわね……あれ?」
「どうした?」
「順位が二位になってるわ」
「え!……本当だ。いつ抜かしたんだ?」
「……抜かしたマシンはどうやら毒沼にはまったようね。画面下の小枠に無様な姿が映ってるわ」
「よっしゃあ! 地の利を得たな」
「いやまったく得てないから。あんたも毒沼にはまったら同じこと……」
『ボチャッ』
「あっ」
「おぅい! いってるそばから!」
美子のマシンが毒沼で犬かきをしている横を、先程抜かしたマシンが駆け抜けていった。