キングロードクエスト2
「おっ、始まった始まった。テキストが出てきたな」
美子が言った。
「えー、何々……」
江奈は画面に目をやった。
『ある日、魔王に姫がさらわれた』
「……」
「……」
「……王道だな」
「ベタの間違いでしょ」
「オイ、ウチのオブラート一瞬で溶かすなよ」
「まあ、時代が時代だからしょうがないけどね」
『そして魔王から姫を救い出すために、勇者は旅立った』
「へー分かりやすくていいんじゃないの」
「まあ、シンプルなのはいいことね。あっ、名前入力よ」
「はいよ。ミ……コ……っと」
「あ、ごめん。お茶取ってくるわね」
「おう……あっ、ジュースは?」
「……あるけど」
「じゃ、ジュースで」
「こいつ……まぁ、いいけど、丁度賞味期限切れのあるし」
「うぉい!」
「冗談、冗談」
「まったく、頼むぜ」
「お待ちどー」
江奈が下から戻ってきた。
「おう、待ってないから気にすんな」
美子が答えた。
「ん? どういうことよ」
「んああ、まだ名前決めてないんだ」
「まだかよ! さっきのでいいじゃないのよ」
「いやー、何か面白みにかけるなぁと思って」
「別にそこに面白みはいらんでしょうが」
「だって、この先クリアまでずっと使う名前だぜ。さっきの名前じゃ盛り上がりにかけるよ」
「自分の本名をけなすとは斬新な」
「なんかこう、愛着のわく奴ないかな?」
「えー、愛着ぅ? ……そうねぇ」
「どうよ?」
「勇者……でしょう? 勇者、勇者……」
「おう」
「……」
「……」
「……ユウちゃん」
「は?」
「は? っじゃないわよ! ユウちゃんよユウちゃん! 勇者のユウちゃん! それで決定よ!」
「えー……まあ、いいけど」
「まったく、こんなんで時間使ってどうするのよ」
「……あっ」
「今度は何?」
「……四文字までだった」
「この野郎!」
結局、勇者の名前はミコに決まった。
「あー早速、始められるよ。すでに一時間ぐらいやった疲労感があるな」
「誰のせいだと……まあ、いいわ。フィールドに出たから、モンスター出てくるわよ。気をつけて」
「……何をどう気を付けんるだ?」
「……」
「……」
「……確かに、言われてみれば……何に気を付けるのかしら?」
「おいおい、しっかりしてくれよ」
「うぐっ……いいから、進めなさい」
「あっす……おっ」
『ゴブリンが現れた』
「何か出たぜ。宇宙人かな?」
「世界観! 世界観! そこ大事だから!」
「そうなのか? んーゴブリンねぇ、ゴブリン」
「何よ?」
「いや、何かアイドルのニックネームみたいだなと思って」
「どうでもいい!」
戦闘開始。