5/5
友達と約束
彼女の留学生活も残り数ヶ月となった3月、震災が起こった。
幸いなことに私たちのいた街に被害はなかったが、彼女の故郷でも震災のことは大きく取り上げられたらしい。
彼女は予定よりも早くドイツに帰ることになった。
出発の日、久々に会った彼女は見るからに痩せていた。目元が腫れていてうまく表情を動かせないのか、ぎこちない。
「もう日本に来れないかもしれない」と彼女が言うと、
「じゃあ私がドイツに行くね」と私は答えた。
するりと口からすべるように言葉が出て、自分でも驚いた。
ドイツまでどれくらいのお金が必要で、貯めるためにどうすればいいのかわからない。
だけどなぜか「ドイツに行くんだ」という根拠のない自信をいつの間にか持っていた。
2年後、ドイツの空港の到着ロビーに出ると、友達が少し高い声で私の名前を呼んだ。
ハグをすると、また会えたことをじわじわと実感してどんどん涙が溢れてくる。
約束を守れて嬉しかった。痛いくらいに力を込められた腕も、友達が泣く声も嬉しかった。私はこみ上げてくる気持ちを抑えることなく泣いていた。




