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わいは、豚である  作者: 愛雌 雄
4/10

わい、愛される

「わい、愛される」



「豚さん、釈放ですよ~」


「ブヒ……?」


暗い拘置所に一人の若い警察官が入ってくる。

彼は俺を見て爽やかな顔で釈放を告げた。


警察署の外、入り口で彼と話をする。


「いやあぁ、この度は、うちのものが本当に申し訳ございませんでした、私の指導不足です。今度また、お詫びに伺いますね」


彼はそれなりに上の地位にいる警官なのか、彼が俺に誤った。

俺を捕まえた警察は取り調べの最中でここには来れないらしい。

ここはひとつ、誰にでも間違いはありますよね? 気にしないでください! なんて爽やかに言ってやろうじゃないか。


「え、えええ、えと、その、あ、だ、誰にでもまち……」


「え? なんですか?」


「い、いや、何でも、無いです……」


「そ、そうですか。 それで、改めてお礼に伺いたいので、住所を教えてほしいのですが……」


「え……えぇ!? あ、ああ、あの、俺、ちょっと母親に家、追い出されて」


「あ……、ああ! だ、だからそのような格好なんですね!?」


彼は俺の容姿を気にしていた。

こんな姿で街を歩いていれば、別のことで捕まってもおかしくなかっただろう。


「あ、あの、お礼とかはいいんで……帰りますね」


「帰る……どこへです?」


「ああ、公園にすん……」


その時、俺の声を遮る女性の声。

警察署から出てきた、俺が助けた女の子だ。


「そのひとは、私の家に帰ります!」


「「え?」」


唐突な発言に俺と警察官は驚く。


「え、ええ!? どういう……?」


「貴方は今日から私のうちに住んでください……迷惑ですか?」


「い、いやでも、なんで……?」


「いいから! じゃ、警察さん、もしお礼に来るときは私の家に来てくださいね? 住所とかは他の警察官さんに伝えてありますから」


警官もそれが楽だと思ったのか


「あ、ああ、はい、わかりました! あ、わ、私は高田と申します、何かあったらいつでも頼ってください! それでは!」


こうして俺は出てきた女の子と道に出る。

彼女に腕を引っ張られること数分。

女の子の手が暖かいとか俺の手汗がヤバいとか考えながらついて行った、体感3時間。


彼女の家に着いた。


そのアパートの一室、古びた部屋の鍵を開け、「ど、どうぞ入って?」と彼女は俺を部屋にいれる。

思い返せば約35年ほど。

小学生以来誰かの家に入ったことは無い。

その昔、唯一いた、男友達の部屋に遊びに行くと、それがクラスの女子に人気のある男子だったため、彼女らから熱烈ないじめを受けたその事件以降、一度も人の家に遊びに入っていない。

自室こそが永遠の友達、永遠の恋人。

雨の日も風の日も、つらい日や嬉しい日、クリスマスや正月だって一緒に過ごしてきた俺の部屋。

このまま結婚するんだと思っていたが、まだ早いみたいだ。

俺の部屋、今までありがとう。 今日、新しい世界に旅立ちます!

心の中でそうつぶやいて、しかし自分でも自分が結構キモイことに気が付いたので、さっさと玄関に足を進める。


それは畳の敷かれた小さな部屋だった。

お世辞にも綺麗とは言えない。

そりゃあ掃除はくまなくされているのだが、建物が古いせいで昭和味を感じざるを得ない。

しかし、そんなちょっと古い雰囲気が暖かい。

彼女の生活の匂いが、直ぐになじんで離れない。


「いい部屋だ……」


「へっ!? あ、ああ、ありがとうございます!!」


「ええ!? あ、ああ、い、いいや、あはっ、あはは……ブヒ」


どうやら俺の心の声の一端が体の外へにじみ出てしまったようだぜ!

惚れられたかな? ブヒブヒ。


何もない畳の部屋に向き合って座る。

彼女は俺に頭を下げてこう言った。


「この度は、本当にありがとうございました! あなたがいなければ私、私っっ……」


女の子がまた泣き出す。

俺はキョドりながらも声をかけてあげる。


「え、あああ、な、泣かないで……」


「グスッ…… えへへ、優しいんですね?」


そこで、そこで初めて彼女の笑顔を見た。

パアッっと花が開くような綺麗な笑顔。

部屋が一気に明るくなったようで、報われた気がした。



「その、私実は最近ここに引っ越してきて……」


「?」


「でも、すごい人見知りで、友達とか全然いなくて、警察の方には無理して話してましたけど、ほんとはすっごく緊張してて……」


「(そうだったのか)」


「あの男の人に襲われた時も、どうすればいいのかわからなくて、怖くて声も上げられなくて……でも、そんなときにあなたが来てくれました……」


「(周りに誰もいなかったからな、俺が来なければ危なかったよな。 怖かったろうに)」


「なんだか、貴方とは私と同じようなものを感じて、だから、助けて!!、って叫べたんです!」


「(俺と同じ物を感じたのか。 襲われているときに全身タイツの豚人間が現れたら共犯者をまず疑うはずなんだが……コミュ障どうしは惹かれあうのかな)」


「そ、その、それで……」


女の子の頬がみるみるうちに赤くなっていく。

胸の前で指先を絡めては解き、何か言いたげで、口を開けようとしてはまた、閉じる。

モジモジ擦る太ももは柔らかそうというか、マジ顔をうずめに行きたいというか、あれ!? 何だろう俺!? 三次元に興奮している!?!?


その女の子が満を持して口を開く。


「わ、私と結婚してください!!」


「え、えええあああ!?!? ……ブ、ブヒ」


「ブヒ……?」



第四話「わい、愛される」


ちょっと早めの投稿です!!

これくらいがちょうどいいのかもわかりません

明日も夜に投稿します!


……花粉凄いっすね( ;∀;)

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