わい、家を失う
「わい、家を失う」
「母上、妹よ……わい、豚になった」
そんな俺の言葉を受けて母親はフッと笑う。
「あんたみたいなやせ細った男が私の息子なわけがないだろう? 呆れた嘘だね! さっさと正体を明かしな!」
「いやいやいや!! 母上! わいがあなたの息子! その名も耕太郎でござるよ信じてくださいまし~~!!」
「あんたと息子では容姿が合わないんだよ! まあその浮世離れした気持ち悪い言い草だけは似ているけどねぇ」
そういう母の顔は、濃くなった皺に後悔のような感情が見える。
その間、俺の部屋の中へ探索に言っていた妹が戻ってくる。
随分と慌てた様子で、ロングの黒髪が激しく揺れていた。
上気した顔で言う。
「おかあさん!! お兄ちゃんこの部屋にいない!!」
「なんだって? ……おいお前、早くお兄ちゃんを出しな! どこへやったんだい!!」
「母上!! 妹!! ワイがおにいちゃんやねええん!! なんで信じてくれんのやあ!」
妹が正に”ゴミを見る目”で見下して言う。
「あんたがお兄ちゃんを語るなら、腹に詰め物でもすることね。 お兄ちゃんは体重が100kgを超える豚みたいな男で、中学の時からキモイアニメばっか見てる社会の癌みたいなやつなのよ! 力が幼児並みだからドアをふっ飛ばすとかできないの、わかったならお兄ちゃんの居場所を吐きなさい! ……兄の生死は問わないわ」
「ちょっと待つんだブヒ!? 燐はわいをそんな風に思っていたのか!? 生死は問わないのか!? 兄がいなくても悲しくはないのかあああ!? ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイ!?!?」
「ちょっと! なんで私の名前知ってんのよ!! お兄ちゃんよりキモイ生き物なんて存在しないと思っていたけど、あんたも最高レベルでキモイわね!!」
「ブフッハアアアアッブハッゴフッブフォフォフォ!! お兄ちゃんは妹のことは何でも知っている者ブヒ!! この家のことも! 兄であることを疑うのなら何でも聞いてみるブヒ!」
すると母上が強い口調で質問を投げる。
「あんたの年は!?」
「42! (=彼女いない歴) パラサイト歴18年!!」
「友達の名前は!」
「いない!!」
「小学校の時の恥ずかしい出来事は!?」
「好きな女の子に告白しようと目を合わせたらセクハラと騒がれ、先生にめっちゃ怒られたこと!!」
「や、やるわね……今の悩みは!!」
「わいは、ほうけ〇、なんだブヒ!! ってちょっと待って、それは言わない約束」
母親が驚愕に後ずさり。
その手からさすまたが離された。
「お、おまえ、本当に耕太郎なのかい……?」
俺は立ち上がり、母親の目を見て言う。
「わいが耕太郎なんじゃあああああああああああ」
「出てけ」
「ああああああ!!……え?」
俺は家を失った。
近所の公園で一人、段ボールに囲まれている。
寒い。
第二話「わい、家を失う」
二話です!
明日? 今日も夜に投稿しようと思います!
ちょっといつもより早く投稿するかも