ワン助はあの子に一目惚れする
一匹の犬――ワン助は飼い主と散歩をしていました。ワン助は散歩が大好きなのです。飼い主がリードを手にするのを見ると、すぐに駆け寄るほどです。
ワン助の視界に門が飛び込んできました。なんとはなしに門の向こう側を見ると、一匹の可愛らしい犬が佇んでいました。くりくりとした瞳に真っ白な毛が美しいチワワでした。
ワン助は胸がドキドキするのを感じ、思わず視線を逸らしてしまいます。一目惚れでした。
何も言わずにワン助はその場から駆け出しました。立ち止まってしまうと飼い主の手を煩わせることになりかねないし、恥ずかしいということもありました。
散歩から帰宅した後もワン助の胸のドキドキはおさまりませんでした。ドックフードも喉を通らず、残してしまいます。
飼い主は心配そうにワン助の頭を撫でます。ワン助は飼い主の優しさが嬉しく、心が温かくなるのを感じました。飼い主の膝の上に乗り、安心しきった表情でワン助は眠りました。
それからというもの、ワン助は門の前を通るたびにドキドキするようになったのです。あの子をもっと眺めていたいという気持ちと恥ずかしくて早く立ち去りたいという気持ちが綯い交ぜになっていました。
あの子は目が合うとニッコリと微笑むので、余計に恥ずかしくなるのです。
そんなある日、飼い主は門の前で立ち止まりました。
ワン助は怪訝な表情で飼い主の表情を伺います。飼い主は微笑み、門の向こう側を指差しました。飼い主はワン助があの子に惚れていることに気づいていたのです。
ワン助は意を決してあの子に声をかけ、前から好きだったことを伝えました。するとあの子も前から好きだったと答えたのです。ワン助は好かれていたことが嬉しく、思わず吠えてしまいました。
これがきっかけでワン助はあの子とその飼い主と一緒に仲良く散歩するようになったのでした。
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