窓際の夏模様
こんな出会いもアリですかね
7月の初め
窓際の席は地獄
教室の中で日射病なんて笑えない
窓を開けた所で、温い風に吹かれるだけ。
気休めにもならない。
「あっち〜な〜」
「ちょっと水浴びしようぜ」
「いいね〜!」
グランドの水飲み場から聞こえた男子の声。
見下ろしてみると、5人いる。
下級生かな…
「この暑いなかサッカーなんかしたら死ぬ」
「お前テニス部だろ」
「いつも外で走り回ってんじゃねーか」
「バカお前テニスは高貴なスポーツなんだよ!サッカーと一緒にすんな」
「テメー、サッカーをバカにすんなよ」
「こうしてやるわっ」
「ぶわっ⁉︎」
1人だけ盛大に水をかけられ、遠目に見てもずぶ濡れなのがわかる。
「ばっかヤロー!パンツまでビショビショじゃねーか!」
「ギャハハー!」
楽しそうな笑い声。
男子って元気いいな…
「どうすんだコレ」
「誰かタオル貸してやれ」
「俺の汗付きタオルでいいなら…」
「きたねータオルなんかいらね〜よ!」
「あら、ヒドいわっ」
「キモいんだよバーカ!」
確かに、誰かの汗つきタオルは遠慮したい。
そういえば…
「ジャージ脱いでその辺に寝てろよ。すぐ乾くって」
「パンイチで寝てたら変態じゃねーか!」
「こんな所誰も見に来ねーよ」
「大丈夫。みんなでパンイチ怖くない」
「みんなで渡れば怖くないみたいに言うなよ」
「うまい!」
「うまくねーよ!変態の集団じゃねーか」
「ギャハハー」
……………
今授業中なんだけど、笑わせないでよ。
肩震えてきたわ。
もう古文なんか一切頭に入ってこない。
「とりあえず脱ぐか」
「そうだな」
「なんでお前らも脱いでんだよ」
「1人変態は寂しいと思って」
「変態言うな!」
「わかった。しかたねーな、俺のパンツ貸す」
「「「…………………」」」
………………だ、誰か止めてよ
「助けてくださ〜い!」
「ホンモノのヘンタイさんがいますー!」
「もういい。そのきたねータオルでいいから貸せ」
「まあ、失礼しちゃうわね」
「人に物を頼む時は何て言うのかしら」
「お母さんそんな子に育てた覚えはありません」
「育てられた覚えはありません。めんどくせーヤロー共め」
ずぶ濡れ男子がいよいよズボンに手をかけた。
確かに見えにくい場所だけど、
見えてるから。
ここからバッチリ。
しかたない…
カバンの中のタオルを丸めて
彼の頭めがけて投げつけてみる
「どわっっっ」
「何か降ってきたぞ」
「上か⁉︎」
見事命中。
5人は上を見上げる。
「…………」
授業中に大声を出すわけにいかない。
目があって、ヒラヒラ手を振ってみる。
「え?」
「タオルじゃん」
「何だ?」
「貸してくれるんじゃね?」
「え、マジ⁉︎」
「ダレ?あそこ視聴覚室じゃね?」
見上げたまま話す彼らが、何だかかわいい。
ちょうどチャイムが鳴って、教室がざわめき始めた。
「見えてるから、脱いじゃダメ」
「「「⁈」」」
聞こえたかな………
固まっちゃったな………
「ユキ、教室戻るよ」
「うん」
友人の声で、窓から離れる
「何してんの?」
「別に」
ごまかしてみるけど、
「何か楽しそうじゃん」
3年の付き合いになる彼女にはわかるらしい。
「男の子って、アホっぽくて面白い」
自然と口角があがってしまう。
「?なにそれ」
夏の窓際の席も悪いことばかりじゃない。
…………………
「…………つーか、」
「丸見えの上に」
「丸聞こえだったんじゃねーか」
「ジャージ脱がなくてよかったな」
「パンツ脱がなくて良かった」
「「「………………」」」
「誰だあれ?」
「どう見ても先輩だろ」
「…………いい匂いがする………」
「「「………………」」」
「ちょっと貸せ!」
「バカ触るな!」
「1人締めなんてさせねー!」
「オレに貸してくれたんだぞ!」
「バカ!俺が水かけてやったんだろ!」
「何だそれ!カンケーねえ!」
「感謝しろ!そしてお詫びにソレよこせっ」
「お前が詫びろバカ!」
タオルをめぐって醜い闘いが始まった事なんて、知らなかった。
暑い夏の日。彼との出会い。
あたし達がこの先、長い付き合いになるなんて、思いもしていなかった頃の話。
初作品。
ここから恋愛に発展していくのかな。
夏の窓際なんて近寄っただけでとろけます。
若いって素晴らしい…。
小説って難しい…