浴槽の夢
湯に浸かり、力を抜く。
身体から、心から、魂から。
湯船の中で私はクラゲに刺され、
虚構のしびれを味わう。
そして無味という名の塩味を感じながら
浴槽の海へと溺れ沈んでいくのだ
やがて浜辺に打ち上げられ、私はこう呟くだろう
嗚呼、私は何としぶといのだと
この湯に溶けてしまったら
私はきっと透明になる
望んでいたのと寸分違わぬ
どこまでも透明で目立たない湯へ
どうか引き揚げないでおくれ
どうか咎めないでおくれ
鈍色に疲れたのだ
虹色を見飽きたのだ
ただ私は
心すら映さない無色へと
この身を委ねたいだけなのだ