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新入生…………男子15人

      

     「ふぅ……終わった終わった。」


 

      しかしあの少年、不思議な子だったな。あんな理由でこの学校を選ぶなんて……

      ……悪く言えば馬鹿なんだろうけど。だが、もしかしたら彼はこの学校を大きく変え

      ていくかもしれないな。…………可能性は30%ぐらいだろうけど。


     「まぁでも面白い存在ではあるからなぁ。できれば担任になってみたいものだな。」


     「誰の担任になりたいんですか?」


      ん?誰だこんな廊下で、しかもまだ学校も始まっていない時期に………


     「……っと、あぁ、澤村か。」


     「こんにちは久我山先生。」


     「まだ学校も始まってないというのに、生徒会長は大変だな。」


     「好きでやってることなので別に苦じゃないですよ。」


     「……生徒の鑑だなお前は。」


     「ところで、さっき担任になりたいとかって言ってましたけど、誰の担任になり

      たいんですか?」


     「さっきまで面接してた子だ。中々面白い子でな。」


     「え?この時期に面接ですか?」


     「色々その子にも事情があってな。簡単に一言で言うと日本にいなかったんだよ。」


     「へぇ……。どんな人なんですか?」


     「ん~……外見的なことを言えばまぁかなりのイケメンだとは思うが。」


     「えっ?イケメンってことは男子なんですか?」


     「あぁ。でも少ししみったれた顔をしてるかもな。何か常に疲れてる

      みたいな感じだ。」


     「ふぅ~ん、男子か……。」


     「まぁとにかく、そいつに会ったら仲良くしろよ~。」


     「は~い。」


       














      ふぅ…………学校で必要なものは全部そろったな。つーか、入学式

      当日に制服が届くとかどうかしてるだろ、ったく……


     「っと、もう時間か。えぇっと、今日は入学式とクラス分けで終わるっつってたから

      鞄だけでいいか。」


      よし、行こう!すぐ行ってすぐ帰ってすぐ寝よう!!








      

      


     「う~ん……何と言うか、圧巻だな。」


      今学校まで約500m地点を歩いているんだが、これはすげぇな。道行く人全員が

      女子だな。男が俺しかいないってのは…………嫌な気分だな。


     「この気分をこれから毎日味あわなきゃいけないのか。はぁ…………まぁあの馬鹿両親

      と一緒に居るよりかはマシだな。」


      うん、そうだな。そうやって前向きに考えていこう!…………じゃねぇと心が廃れ

      そうだ。


「はぁ………っと、あれ?ここが正門であってんのか?面接のときは裏口から入ったから

      よく分かんねぇな…………。」


     「あの~………」


     「へ?」


     「えっと、新入生だよね?ここが正門であってるよ。」


     「あ、そうっすか。どうもありがとうございます。」


     「いえいえ。しかし男子の新入生かぁ………」


     「えっと、先輩っすよね?俺は波川瑞樹です。これからよろしくお願いします。」


     「ほっほっほ、そんなにかしこまらんでもいいぞ瑞樹君。あたは雨宮凛、君と同じ

      一年生だ。」


     「はっ?」


     「どやぁぁぁ。」


     「……………。」


     「これからよろしくたのぐおぉ!?」


     「………てめぇ、同じ学年のくせによくもまぁそんなでかい態度取れたな。あぁ?」


     「ひょ、ひょっひょしはショークやよ!ふみはへん!

      (ちょっとしたジョークだよ!すみません!)」


     「ちっ…………。」


     「うぅ~………………ひどいじゃないか。いきなり女の子の顔を握力でバキバキ

      するなんて。」


     「すべてお前のせいだろうが。ったく…………。」


      何なんだこいつは。厄介な奴にからまれたな…………


     「…………まぁでも、教えてくれてサンキューな。」


     「おっ!やっとあたしのありがたみに気づいたな?最初からそうやって理解してれば

      よかばぁぁあ!?」


     「…………前言撤回、さっさと死ね。」


     「#$%&!*!!??」


     「はぁ…………」


     「だはっ!?はぁ……はぁ……はぁ……。」


     「えぇっと、雨宮………だったか?」


     「いたた………り、凛でいいよ。」


     「じゃあ凛、俺達新入生はどこに行きゃいいんだ?」


     「あたしたちは体育館の裏に集まるらしいよ。そこから直で入学式だから。」


     「そっか。んじゃ行こうぜ。」


     「そだね。………それより、瑞樹君は何でこの高校にしたの?男子が確か20人にも満たない

      とかって噂だったけど。」


     「あぁ、俺も一昨日の面接で知ったよ、その衝撃的事実。」


     「………まぁ何で一昨日に面接をやっていたかは後でいいとして、瑞樹君知らなかったんだ。               てっきり知っていてハーレムを作りに入学したのかと思ったよ。」


     「はぁ?意味分かんねぇ。つーか、そんなこと思ってたのによく話しかけたな。」


     「雰囲気で違うと思ったから。」


     「言ってること真逆じゃねぇか。」


     「まぁ実際違かったから結果オーライでしょ?」


     「……………それより、そのハーレムってのは何だ?実際にそんなことしようと

      してる奴が居るのか?」


     「ハーレムが目的ではないだろうけど、女の子目当てで入学したっていうのは本当だと

      思うよ。ほら、あっちの方。」


     「あっちの方?」


      あっちって………あぁ、確かに男子がいるな。でも別に女に言い寄ってる感じでもないが

      …………いや、ありゃやばいな。あの目つきやら仕草やら、もはや犯罪者だな。


     「なるほど、お前が言ったことはどうやら当たってるようだな。」


     「でしょ?全く、これじゃ落ち着いて生活できないよ。」


     「誰かといつも一緒にいればいいんじゃね?最低二人ぐらい。」


     「う~ん、やっぱそれが一番だよね。よしっ、そうしよう!………という訳で。」


     「ん?」


     「これからは君があたしを護るようにしなさい!」


     「…………あ?」


     「ほら、やっぱり女の子を護るのは男って決まってるじゃん?だから瑞樹君が……って!

      どこ行くの!?待って、待ってください!!」


      はぁ……付き合ってらんねぇ。何で俺がそんなことしなきゃならんのだ。俺は平穏を

      求めてるんだ。この高校では極力人とかかわらないようにするのが今の第一目標だ。

      だからここは無視するのが一番だ。………語尾に『だ』が付きすぎたな。

      

     「ちょっと待って!お願いします!一緒に居させてぇ!!」


     「誤解されるような言い方やめろ!!大体何で俺なんだ!!お前なら友達の一人や二人

      すぐできんだろうが!!」


     「そうかもしれませんけど!!運命というものもあるじゃん!ちょっとはそういうの信じて

      見ようよ!レッツビリーブデスティニーだよ!!」


     「なんだその馬鹿丸出しの英語は!?」


     「お願い一緒にいて!!一緒!一緒!一緒!」


      だぁ~!!うるせぇ!もう何なんだこいつは!?これじゃアメリカから

      戻ってきた意味がねぇ!平穏とかけ離れてるじゃねぇか!!

      …………はぁ、もういい。もう折れた。そして疲れた。


     「………分かった。分かったから少し落ち着け。」


     「えっ!?いいの!!本当!?」


     「もういいよ、どうでも。好きにしろ。」


     「ヒャッホ~ゥ!!やった~!!」


     「もういいから、頼むから静かにしてくれ。」









     「えぇ~新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。えぇ~本校は………」


      はぁ…………何で入学早々こんなに疲れなきゃならねぇんだ。普通だったら校長の

      話を聞いて疲れるもんだろ。全く、全然話が頭に入ってこねぇ……


     「…………行ってほしいです。これで私からの話は以上です。」


     「校長先生、ありがとうございました。続いて本校の生徒会長、澤村さんからの言葉です。

      澤村生徒会長、お願いします。」

 

     「…………ご紹介に預かりました、本校生徒会長の澤村です。この学校は…………」


      あれがこの学校の生徒会長か。なんというか、威厳に溢れた人だな。まぁ普通にしていれ

      ば関わることはないだろう………


     「………です。あまり話が長くなるとあれなので、このあたりで切らせていただきます。

      …………ところで、そこのぐったりしてる男の子!」


      おいおい、入学式で名指しで注意かよ。全く…………って、あれ?何か俺の方

      向いてないか?


     「…………もしかして、俺?」


     「君以外ここでぐったりしてる人なんていないわよ。ほらっ、もっとシャキッとする!」


     「は、はい………」


    「うん!それでよし!皆さんもこれからの高校生活、楽しくシャキッとして行きましょう!」


      パチパチパチ…………


     「…な、何だったんだ今のは?」 


   


   








     「すぅ~…………はぁ。外の空気うめぇ。」


     「えぇ~っと、瑞樹君はどこに………あっ、いた!お~い!」


     「ん?あぁ、凛か。」


     「やぁ、入学早々ぐったりしてる君。」


     「ぶっ飛ばされたいのかお前?」


     「でも実際事実じゃん。あの生徒会長が言ってたんだし。」


     「まぁ確かにな。しっかし……何だったんだあの人?」


     「びっくりしたよね。なんというか、格好良かったよ。」


     「でも口うるさそうだったな。俺はああいうタイプは苦手だ。知り合いに

      少し似てる所がある。……まぁでもこれ以上関わることも無いだろうし、俺には関係

      ないな。………って、どうした凛?」


     「い、いや、その……」


     「ん?俺の後ろに何かあんのか?」


      それとも何か脅かそうとでもしてんのか?全く、俺も舐められたもんだ。今の俺は

      究極に疲れてるから、何があっても驚かない自信がある!


     「さぁ!俺の後ろにはどんな………………」


      むにゅ!!


     「……………は?」


      俺はこのとき、疲れすぎていて思考回路がぶっ飛んでいたのかもしれない。何故俺は

      腕を思いっきり広げて振り返ってしまったのだろう。本当に人がいたらぶつかって怪我を

      させてしまうかもしれなかったのに。だが、そんな事態には陥らなかった。

      それはそれで喜ぶべきなのだろう、幸運だったと安心するだろう。しかし、今回はそれ

      よりも大変な事態に陥った。ついさっきの擬音を聞いたらすぐに誰でも分かるだろう。

      そう……俺の手が誰かさんのお胸にジャストフィット!!ということだ。


     「いぃ!!??」


     「なっ!?ち、ちょっと、瑞樹君!?」


     「……………。」


     「……………すいませんでした。」


     「あの体勢から音もなく土下座した!?何その技術!!??」


     「君は…………」


     「この度は誠に申し訳ありませんでした言い訳する気もありません全面的にわたくしめが

      起こした最低極まりない行為ですですからどんな処分も甘じて受ける所存でございます

      たとえ………」


     「お経みたいになってるよ瑞樹君!?」


     「………君は確か、さっき私が注意した子だね。」


     「はいそうですこの度この高校に入学してしまった波川瑞樹と申すもんでござんす。」


     「キャラが崩壊してる!?」


     「!波川瑞樹………そう、君が波川君ね。逢いたかったわ。私は二年A組の澤村奈月。

      入学式でも言った通りこの学校で生徒会長をやってるわ。」


     「えっ!お、俺のこと知ってんすか?」


     「えぇ、久我山先生から色々聞いたわ。面白い子が入学して来たって。だから

      一回直で見てみたかったのよ。でも、まさかこんなことをするとは流石に予想も

      しなかったわ。」


     「そ、それに関しては本っっ当に申し訳ありませんでした!!!」


     「べ、別にそこまで謝らなくても……。私がそういうことを気にするタイプに見える?」


     「いや、タイプとかの問題じゃないと思うんすけど………。」


     「とにかく、これからよろしくね。波川君と、えっと…………」


     「あっ!えっと、自己紹介が遅れました。雨宮凛です。今年からこの学校に入学しました。

      よろしくお願いします!」


     「フフッ。よろしくね雨宮さん。ところで、貴方達はもうクラスを確認したのかしら?」


     「あっ!すっかり忘れてた………」


     「色んな事がありすぎたからもうどうでもよくなってたな………」


     「どうでもいいって………うちは一年のクラスからそのまま三年間変わらないから、

      人によっては一番重要なのよ?」


     「でもクラスなんて正直どこでも良いし………」


     「えぇ~?あたしは少しでも知り合いが居た方が安心するけどな。」


     「まぁとにかく見てみましょ?」


      はぁ……本当にどうでもいいんだよなぁ。どうせどこのクラスでも基本寝るだろうし。

      確かに凛が言ってることも一理あるとは思うが………


     「えぇ~っと、あたしのクラスは………あった!C組かぁ~。瑞樹君は?」


     「俺はっと……………ん?あれ?俺の名前が…………無いだと!!??」


     「な、何で!?どういうこと!?」


     「ま、まさか………俺は本当は入学してないのか!?」


     「う~ん………おそらくだけど、間に合わなかったんじゃないかな?」


     「間に合わなかった?」


     「波川君、君はほんの2日前に入試が終わったじゃない?だからまだクラスまで

      決まらなかったんじゃないかしら。」


     「あぁ~、なるほど!」


     「ほっ。何だそういうことか。ガチで入学してなかったのかと思ったよ。」


     「でも、そしたら瑞樹君のクラスはどうなるんですか?」


     「心配はいらない。」 

        

     「……ん?」


     「あっ、久我山先生。何でこんな処に?」


     「久我山……ってことは、あたしのクラスの………」


     「そ。一年C組の担任の久我山だ。これからよろしくな、雨宮。」


     「よろしくお願いします。……あれ?何であたしの名前を……」


     「そりゃあ自分が受け持つ生徒の名前ぐらい覚えるさ。それとも、君は私がそんな

      こともできない馬鹿とでも言いたいのか?」


     「そ、そんな訳ないじゃないですか!?」


     「はははっ、冗談だ。」


     「えっと……確か一昨日の面接のときの先生っすよね?」


     「あぁ、久我山だ。よろしくな。」


     「よろしくお願いします。それで、俺のクラスは………」


     「私のクラスだ。」


     「てことは……………あたしと同じだ!やったぁ!」


     「えぇ……………」

 

     「……………何か不満でもあるのか?」


     「…………特にはないですけど…………」


      こいつと一緒にいると目立ちそうでヤダなぁ。


     「いやぁ本当によかった!知り合いが一人いるとすごく変わるからね。」


     「はいはい、そうですか。」


     「波川君は嬉しくないの?」


     「まぁどこだろうと基本変わらないでしょう。むしろこいつがいると疲れると思いますよ。」


     「そ、そう……………」


     「そんな照れ隠ししてぇ、可愛いなぁこのこのぉ。」


     「……………超絶うぜぇ。」


     「………この二人はいいコンビになりそうだな。」


     「フフッ、そうですね。……………って、もうこんな時間!

      先生、そろそろ教室に行かないと。」


     「おっと、そうだな。ほら、二人も早く教室に行くぞ。」


     「はぁ~い。あぁ、あたしの薔薇色高校ライフが待っている!!」


     「あぁ……………俺のどん底高校ライフが待ち構えている……………」

 


     

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