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ご
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「悲しくないのに、涙が出るのは何故」
1つの疑問を目の前に、私は目を瞑った。
「君が居るのに、貴方が居ないのは如何してか」
騒音を聞きたくなくて、私は耳を塞いだ。
「知っているのに、知らんふりするのは気分がどうだい?」
分からない分からないと喚くより先に、私は口を貼りつけた。
視えないし、聴こえないし、話せない。
これで傷つかなくて済む。これで楽になれる。
だから苦しまなくていいんでしょう。解放されるんでしょう。
身体はしっかりと現実と向き合った。
ただ、現状を知らせる感覚器官を閉ざした私は、向き合ってると言えるのでしょうか。
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手にした本を、棚に戻した。
私が所持した時は一冊の本となっていたが、戻した瞬間、この本も集団の一部となった。
結局この子は、何も理解できずに逃げただけ。
それじゃ変わらないのに。
しばらくジッと本を見据えた後、その場を離れた。
ほら、私なんか、いとも簡単に現実と触れ合ってるのにね。
なんて悪態を心の中で付いた。