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ノヴェルタの兵器  作者: imaginary
第一章 ハルト「理由」
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第十一話 百二十階の住人……


 魔法なんていうのは、どこかの誰かが想像して次世代に語り継がせた、いわゆる作り物なんだと思っていたけれど――というか、少なくとも僕の世界では本当にそうなのだろうけど、こっちの世界にはそれが実在しているというのだ。僕たちが科学技術を発達させたように、こちらでも魔術が発展した。


 これは、英才なホノメから聞いた話だから、まず間違いないことなのだが、魔法を発動させるには三つのものが必要になってくるらしい。一つはこの世界に存在する目には見えない未知なる力の源、通称レズン。それは、空気のように目には見えなくともそこにあって、循環しているそうなのだ。全ての魔法はこのレズンを実体化させて行う。そして、実体化させるのに必要なのが、二つ目であるラズン。これは、人体に潜むレズンの収縮体だとされており、同じく目には見えないが確かに体内を循環しているというのだ。そして、最後に必要となるのは、やはり才能らしい。


 空気中のレズンを体内のラズンと共鳴させ、うまく魔法として形成させるには、かなりコツがいるようだった。ホノメはもはや宇宙人の話し言葉にしか思えない用語を数々と引用して僕に解説したが、それ以上のことは僕には理解不能である。


 ようは、僕が兵器と呼ばれる理由は、僕の身体にあったのだ。


 僕の身体には、この世界の常人の、およそ二千倍のラズンが秘められているというのだ。もちろん、ラズンの使い方を知りえなければ二千倍だろうが何だろうが猫に小判なのだろうが、僕は無意識になったとき、それを知らず知らずと使っているようであった。けれど、それでも僕は百ある力の十すら使いこなせていないという。


 では、なぜろくに使いこなせもしない異世界の住人を精神体としてこの身体にいれたのか。それは、やはりそれなりの理由があった。


 僕の世界でいうアナフィラキシー・ショックというのが、一番近い例えのように思える。


 アナフィラキシー・ショックというのを説明するのには蜂を例えにするのが手っ取り早い。一度蜂に刺されると、その毒に対抗するため人間は体内に抗体を作る。しかし、作ったはいいものの、次に刺された際、その抗体が過敏に反応してしまうのだ。その反応のせいで急性循環不全を起こして死に至るということもあり、それをアナフィラキシー・ショックというのだ。


 この世界の人間は、例外なく誰もが少なからずラズンを体内に宿してあり、身体のほうも、そのラズンを蓄えておく心の器みたいなものが形成されるのだそうだ。これは、すでに蜂に一度刺された状態なのであるという。つまり、レズンという未知なる力に、ある程度の認識があるというのだ。


 しかし、認識があるだけに、もしもその認識を遥かに越える量のラズンを体内に宿した時、その心の器は溢れかえってしまう。内に秘めるラズンに耐え切ることができなくなり、瞬時に精神体が弾け飛ぶのだという。


 そこで、異世界の住人の精神体を使うことにしたのだ。


 まだ、心の器が形成されていない精神体ならば、常人の二千倍のラズンを蓄えた身体でも、すぐにそれに見合った心の器を形成させることができるのだ。実験前は一応推論でしかなかったそうなのだが、実際に僕の精神体が弾け飛ぶことなく定着したことで、見事にその研究を功を成した。


 僕が水槽の中で目を覚ましたとき、白衣の人たちがあれだけ狂喜していたのも頷ける。その研究に成功したという時点で、隣国のイシュバトラを滅ぼせるということになったのだから、無理からぬ話だ。


 まあ、結局は当の僕がそれを拒んだのだけど。


 アトランダムに精神体を転送させたそうだから、もしかすると、ろくでもない精神体を定着して、それによりイシュバルトは崩壊していたかもしれない。僕で良かったような、良くなかったような、である。


 魔法には、さらに三つの種類がある。


 簡潔に述べると、出現魔法・変化魔法・特殊魔法だ。


 出現魔法というのは、何もない所から炎を上げたり、空から無数の氷柱を降らせたり、暴風を出現させたりするものだ。これにも属性というものがあり、人それぞれに得意不得意な属性があるのだとか。


 変化魔法は、肉体を強化させたり、傷を癒したり、ホノメがしてみせたように、周囲の重力を操作することのできる魔法だ。出現魔法よりも技術を要し、ラズンの必要量もかなりのものになる。


 最後の特殊魔法は、出現魔法にも変化魔法にも属さない魔法のことである。この例でもっとも身近なのがノグネスの魔方陣という魔法だ。例の、緑色の魔方陣。これは、好きな場所に陣をセーブしておくことにより、次回から簡単に転移できるというものなのだが、その利便性に似つかず、かなり簡単な魔法らしいのだ。一見は魔方陣を出現させるので出現魔法にも捉えられがちなのだが、その本質は空間移動なので特殊魔法に属する。ただし、この魔方陣は一度に二つまで――つまり入口と出口――しか作っておけない。くわえて作った本人以外は使用できない(パチンコ玉みたいのあれば大丈夫だけど)という難点も抱えている。


 それに、簡単とはいえ、誰にでも使えるものではない。この魔法を発明したノグネスという男の、特殊レズンを注射してもらわなければ、使えるようにはならないというのだ。ゆえに、ある程度の地位に立っている人間でなければ注射はしてもらえない。


「残念だけど、ハルトは無理かもね」


 申し訳なさそうに言うホノメは、そう言いながら軽々と魔方陣を出現させるのだった。




     ▼




 四百三十四階から百二十階へは三百十四階という地球では考えられない階数を下りる必要があり、さすがに徒歩で移動していると丸一日を棒に振ってしまう。そこで、僕はホノメの言葉に甘えることにして、ウイングロードを呼び寄せてもらった。


 僕らは来たとき同様にノグネスの魔方陣を使い、レゲナーの引き出しが連なる長い廊下に転送した。あとは、しばらく歩いて例の着地台に行くだけだったのだが、僕らはそこで奇想天外な人物に会うことになった。まあ、少なくともホノメには同じフロアの人間として移っているのだろうけど、僕自身はなかなか素直に喜べない相手である。


 転送したあとに僕らの身体を包んでいた緑色の光が霧消し、著しくすり変えられた風景に目を慣らしているときのこと。狭く長々しい廊下の先から、なにやらテケテケと小さな靴音を立ててこちらへ向かってくる者がいた。


 というか、ミルだった。


 満面の笑みを浮かべて、何が楽しいのか「のはははは」と嬉々とした声を上げながら、鳥のように両手を広げてこちらへ直進してきていた。


 そして、僕とホノメの存在に気付くと、ただちに手を振り上げる。


「よ!」


「おお、また会ったな」


 先ほど檻入りごっこが終わって、素直に帰ったのかと思っていたが、どうやらこの娘は一人でも問題なく遊べるらしい。彼女のひたいにはピンク色の髪が汗でくっついていて、かなり長い時間「のはははは」をしていたと見える。


「ヨセフとお兄さんのコラボか! めずらしいな!」


「別にコラボレーションしてるわけじゃないんだけどな」


 ミルは僕の突っ込みを意に返さず、機敏な動きでホノメに向き直った。


「ヨセフ、このお兄さんとどういう関係だ!」


「え?」


「た、爛れているのか!?」


 ホノメは子どものような外見でも、子どもへの対応は得意ではないらしい。何と言っていいか迷っているふうだった。だから、思わず僕のほうが代わりに否定してしまう。


「爛れてねえよ」


「じゃあ、淫らな関係か!」


「淫らでもねえ!」


「じゃあ、不埒な関係か!」


「僕らは健全な関係だ!」


 ミルはきょとんとした顔になる。


「……健全ってなんだ?」


 ……爛れるとか淫らとか不埒とか言っておきながら、健全が分からねえのかよ。


「清き美しい関係ってことだ」


「そうなのか! それは良いことだ!」


 僕の隣ではホノメが苦笑するばかりだった。


「遊ぼうぜ!」


 テケテケと歩いて僕とホノメの合間に立ったミルは、満面の笑みのまま右手で僕の手を、左手でホノメの手を握った。ちょうど、子連れの夫婦みないになる格好であるが、端からみれば二人の子どもを連れたお父さんになるのだろうな。


「いや、今からお兄ちゃんは帰らなきゃならないんだよ」


「そうなのかぁー? でも、今度遊ぶって言ったぞ?」


「うーん、その今度はいまじゃないんだよな」


「じゃあ明日あそぶか?」


 真剣な表情で僕の顔を覗きこむミル。何だか断りにくい空気であった。子どもの頼みを無碍に断るというのは、ちょっと後ろめたい気もする。よくよく考えれば僕はこの世界で何もすることがないのも確かだ。学校も塾も里帰りも家事もない。暇がずっと続く可能性はある。


「わかった。明日、このフロアに来るよ」


「おお! よくやった!」


 ミルはそう言って、僕と繋がった腕をぐるぐる回して喜んだ。


「じゃあな!」


 そう言い、手を放したミルは、またテケテケと一目散に駆け出して、あっという間に廊下の角に消えた。「のはははは」という高らかな笑い声だけが響いてくる。


「ミルちゃんといつの間に仲良くなったの?」


「ホノ――ヨセフが僕を待たせている間にね」




     ▼




 百二十階の住人数は、およそ四千人だそうだ。


 四百三十四階には四十人しか居ないのに対して、この人数はかなりのものだ。フロアは同じ面積であるから、四千人も居れば一人に割り振られる土地は極少ないものになるだろう。


 ウイングロードの背に乗って、今度は急降下という絶叫マシーンも可愛げな移動をした所で、ホノメとはお別れすることになった。まあ、明日にはミルちゃんと檻入りごっこをするために今一度四百三十四階へ行かなければならないし、結局は正午にウイングロードでホノメが迎えに来てくれるというから、惜しみ甲斐のない別れではあった。


「このフロアの長であるホーネクという男の家に行くといいよ。色々良くしてくれると思うし、ハルトの家も提供してくれると思う」という別れ際のホノメのアドバイスにのっとって、僕はがむしゃらに歩いていた。


 フロアごとに内装が変わってくるというのは、以前にも聞いていたのだが、この百二十階というのはまた驚くべき内装になっていた。まず、四百三十四階で見たホテル式の内装概念は全て捨てなければならない。僕が歩いているのは廊下ではなく道だった。


 一言でいうなら、町だ。城内にそのまま町をぶち込んだような、そんな造りであったのだ。僕が歩くアスファルトの道の脇には角砂糖のように真っ白で四角形な家々が続いている。家の大きさはそれぞれだったけれど、全ての家がそのようなコンクリート住宅だった。


 天井を遮るものは何もなく、屋外を思わせるほど高い。それに青いペイントが施され、まるで本物の空のように清々しかった。おそらく魔法で作ったのだろうと思われる擬似太陽が、三つ天井をゆっくりと回ってフロアに光を行渡らせていた。


 道端には雑草まで生えていて、まさに屋外だと誤認させる造りにしているんだなと納得させる。どこかから清々しい風が吹いてきたときには、そこまでするのかと圧巻だった。


 それより何より、住人の数が四千人ということもあって、何人もの人間とすれ違った。また「空気が違う!」なんて難癖をつけられ辻斬りに遭うのではないかと内心あたふたしていたが、すれ違う人の誰もが僕を珍しそうに見るだけだった。


 このフロアの住宅はどれもが四角形のコンクリート住宅である。「ホーネクの家を訪ねろ」などと言われても、とうてい見つかりそうにない。表札ぐらいあればとも思うが、それもない。真っ白な四角形の家には、窓とドアしか着いていないのだ。長というぐらいだから、このフロア内では一番立派な住宅に住んでいるだろうし、最も大きい四角形を探せばいいのだけど、まさにワンフロアが東京ドームのような広さを誇るノヴェルタ城であるから、しらみつぶしに探せば半日は掛かりそうだ。


 途中で四角形を卒業したドーム型の白い建物があり、妙に人々が集まっているから何事かと覗いてみたところ、そこには食料品や生活雑貨が売り買いされていた。おそらく、このフロアのスーパーマーケットといった所だろうなと思う。他にも小さな雑貨店や飲食店などは見つけることができたが、やはりホーネクさんの家は見付からなかった。


 そろそろ、道行く住人にホーネクさんの居場所を尋ねなければと考え始めたころ。


 歩くテンポもリズムを崩し、歩幅も乱れ始めた僕の前に、道端で塞ぎこんでいる女子がいた。両膝を抱えて座り込み、顔を両腕の内にうずめている。肩を震わせているところを見ると、泣いているようだった。


 僕との距離、およそ五メートル。


 知らず知らずして立ち止まっていた僕は、声も掛けずにじっと彼女を見つめていた。なんというか、彼女には何か引き付けられるものがあったのだ。体つきからして、僕と年齢は近いように思える。心なしか、彼女の周りだけ空気が違うように感じた。


 彼女の髪は、空色だった。肩甲骨あたりまで伸びた空色の髪は、ふわふわとしていて、されど艶やかでもあった。屈み込んでいるせいで詳しくは分からないが、白いワンピースに白いロングブーツに白いウエディンググローブのような薄地の手袋と、いちいち変態な行為に及ばずともパンツの色も白なんだろうなと連想できてしまうような服装であった。まあ、紳士的な僕は決して連想はしていないのだけれど。いや、ホントに。


 まあ、正しくは、その時の僕の脳には、そんなことを連想できるほどの余裕すらなかったのだ。おまけに肌まで雪をすり込ませたような白色をしている彼女は、まったくこの場に似つかない、どこかの雪国から来たような雰囲気を醸し出していた。レイトが僕を斬りつけた理由に「空気が違う」というのを持ち出したのも意外に頷けるかもしれない。空気の違いというものは、案外分かるものだ。


「なあ……あんた」


 僕は、声を掛けた。静かに涙を流していた彼女に、少しだけ歩み寄る。


 ぴくっ――と。震えを見せていた肩が、反応して止まる。そして、独りっきりで泣いていた彼女は、ゆっくりと顔を上げて、僕のほうを見上げた。

彼女の泣き顔が僕に向けられる――その瞬間、僕の世界から音が無くなった。


 無音。


 無音のまま、僕は彼女と見つめあう。


 本当は数秒であったけれど、僕にはそれが数時間ともいえる長い時間に感じた。


 美しかった。


 全身に鳥肌が立つのがありありと分かるほど、美しい女の子だった。


 本当に、雪のように、今にも溶けてしまうんじゃないかと思うぐらい儚げな存在。混じりけのない、潤んだ瞳が、ひしと僕を見つめている。


 小さくもふっくらとした薄い色の唇、角ばってなくてなめらかな鼻、泣いている所を他人に発見されたのが、不甲斐ないと思っているのか、少し眉をひそめていた。その表情には、道を過ぎていく、飼い主になってくれるかもしれないだろう人間に、捨てられた子猫が向けるような、心に切なさを植えつける何かがあった。


 僕は、言葉を詰まらせた。


 なんて言ったら良いのか、見当もつかない。


 すると。


 こちらを見つめていた彼女は、ぷいっと、あからさまに嫌な顔をしてそっぽを向いた。つっけんどん過ぎる態度だった。


「あのさ、こんな所で、どうしたんだよ」


「………………」


 完全なる無視だった。


 こんな僕でも、ここまでの無視をされたことはない。


 しかも、それが、今まで見たこともないような美少女であったがために、少しだけショックでもあった。今までの僅かで微妙なやりとりの中に、彼女から嫌われるようなことがあったのだろうか? いや、ない気がする。


「ホーネクさんの家、知らない?」


「………………」


「僕、ハルトっていうんだけどさ……」


「………………」


「君、名前は……?」


「………………」


「いや、その……」


「………………」


「………………」


――泣きてえ!


 ここまで無視されてしまっては、いたたまれない。今すぐここから逃げ出したい気分であった。


 と、その時である。


 背後に、誰かの気配を感じた。


「あははは! またバカな男がシェリルのこと口説いてる!」


 振り返ると、そこにはボサボサした赤毛頭の女が立っていた。身長が、僕よりも高く、肩幅も広い。年齢は二十代後半といったところだ。顔もどこか凛々しくて女武将のような覇気が感じられた。その考えの足掛けともいえるのが、彼女の服装であり、まる鎧兜のようなものを装着していた。


「あ、あらあ? ろくでもない男だと思ったら……案外、いい男じゃない。……うん、やっぱりいい男」


 振り返った僕の顔に、長身の女はさぞかし驚いた表情を見せた。


「いや、別に僕は口説いていたとか、そういうんじゃなくて、ただ泣いてたから声を掛けただけだ」


「あ、そうなの! まあ、見ない顔だし、シェリルのこと知らなくてもしょうがないか」


 そう言った長身の女は、僕の肩をばしばしと叩いた。それで気付いたのだが、この女性は手のサイズも並みではない。軽く冗談で叩いてきているのだろうが、結構馬鹿にならない重量感がある。


「いい? あの子はね。この世に存在する男という生物が嫌いなのよ」


「はあ……」


「まあ、あんだけの容姿もってるくせに、男と取り合わないって、何だか私は勿体ないと思うんだけどさ」


「勿体ない……ですか」


「そうよ! もうあの子ったら、星の数ほどの男の求愛を受けているんだけど、全部無視なのよ。もはや断ることすらしないわけ。そのなかには、もちろん地位の高い人間からの求愛もあって、余裕で玉の輿狙えるっていうのにね~」


 妙にお喋りな女の人だな、と思いながら「そうなんですか」と圧倒され気味に僕は応える。


「あなたは確かにこの城内でもトップクラスだと思うけど、それでもシェリルに振り向いてもらうのは、ちょっと無理ね。彼女は男っている存在が嫌いなんだもの」


「いや、だから、口説いていたわけじゃないんです」


「いいのよ、男なら誰でも一度は夢見ることだしね。彼女と仲良くなるっていうのは」


「そうなんですか……」


「あはは、ところで君、名前は?」


 決して清潔とはいえないボサボサの髪をザッとかき上げて、彼女は僕に訪ねてくる。


「ハルトって言います」


「ハルトかあ。なるほど――ちなみに私はアネナ」


 雄々しく親指を突き上げて、自分を指差すアネナ。いや、これはボーイッシュとかそういうのではなくて、もはや男気に溢れすぎている。


「ところでハルトはどうしてここに? どこのフロアから来たの?」


「あ、僕じつは新入りなんです。ここに住むことになったんですけど、ホーネクさんってどこに御住まいか分かりますか?」


「へ? ここに住むんだ。ほうほう」


 意表を突かれたような顔をして、アネナは驚く。そして、僕の頭の先からつま先までに舐めとるような視線を向け、やがて意味ありげな笑顔になった。


「いいよ、ホーネクさんとこ連れてってあげる」


 何かを企むような表情でアナネは言った。 


 人の親切にこういうふうな感想を持つのはどうかと思うけれど、正直嫌な予感がした。


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