魔王様の憂鬱
「だからさぁ!
タカハシさん並みの逸材を用意できる派遣会社となると【マジンパワー】一択なんだって!
随意契約で良いだろ!?」
「なりません。公平性、透明性、経済性を担保するためには競争入札は譲れない。そう法務部と監査室が口を酸っぱくして説明しているじゃないですか。」
「そしたら安かろう悪かろうの業者が契約取っちまうじゃねーか!」
「そうならないように仕様書の内容で縛ればいいんです。」
「じゃあ
『警備業務 要件:勇者を撃退できる能力を有すること』
って書いても良いのか?」
「そういう特定の業者以外を排除するような要件はダメです。」
「やっぱり駄目じゃねぇかあぁぁっ!!!!」
ワシ、魔王。
先日、超絶ハイスペック派遣職員のタカハシさんに転職されてしまい。その穴を埋めるために大わらわなのだ。
タカハシさんの何が凄いって、時給たった1,315ウェンの派遣さんにも関わらず、たった半年足らずの間に36人もの勇者を撃退してのけたところである。
幹部全員で5人撃退がやっとの間にである。
あのゴミカス派遣会社『アクトック』から派遣されてきたとは思えない、奇跡のような人材だったなぁ。
魔王城正門守衛室詰めの夜勤なんかじゃなくて、最高幹部で迎えたかったなぁ...まさか会計事務所に就職が決まっていたとはなぁ...。
ということで、現在新しい人材を求めているところなのだが...、
ああ、組織の手続きというのは何故こうも融通が利かないのか。
「分かったよ、良いよもう! じゃあ正職員で求人かけようぜ。」
「それは出来ません。現在、職員定数に空きがありません。」
「はぁ!? 魔王城の危機だぞ? そんな事言ってる場合じゃないだろ!?」
「そうはいきません。職員定数は財政規律の要。魔王国各領でも厳守させております。
本国が、まして魔王様自らが破ればタガが外れます。」
「ああぁ面倒くせぇなあ。
あれだ。もうあの役立たずの六魔将あたりクビにしようぜ?」
「労働契約が有りますれば、重大な過失も無い者を解雇することはできません。」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!!」
畜生。勇者一人も撃退できない六魔将なんて既に重大な過失じゃねーか。
世の中理不尽だ。
「魔王様大変です! 勇者に潜入を許しました!! すでに3階職員カフェテリアまで到達。現在昼食中です!!」
「なにぃ!? どうやって入った?」
「それが...1階インフォメーションカウンターのヤマグチさんを六魔将の一人がしつこく食事に誘っていて、その隙を突いて正面から入ったようです。」
彼奴等...ホント邪魔しかしねーな。
この世から解雇してやろうかな。
「四天王はどうした? 迎撃には出ていないのか?」
「四人で近くの鰻屋にランチに行ったまま、まだ帰ってきていません。」
ローテ組めよぉぉ、シフトに穴あけんなよぉぉ。しかももう1時15分。昼休み終わってるじゃねーかぁ!!
くっそぅ! 結局ワシが直接戦うしか無いのか?
ワシは仕事で忙しいんだよ? 書類とかさぁ! 会議とかさぁ!
どこの世界に直接暴漢と戦う首長が居るんだよ。ワシと暴れん坊将軍くらいなもんだよ。
...あれもフィクションじゃねーか糞が。
「では魔王様。【闇の衣】をご着用ください。」
あ〜はいはい、やりゃいいんでしょやりゃあ。
畜生!!
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「ふい〜、なんとか追い返せたな。」ボロッ
「お疲れ様です魔王様。
では、こちらの提出をお願いします。」
「えぇ〜、やっぱり書くの? これ。」
「当然です。【闇の衣】を破かれたのですから【備品損傷報告書】の提出は必須です。」
くそぅ、なんでワシが...勇者撃退したのに。
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「ほ〜い。書いたぞぉ。」
—---〔備品損傷報告書〕-----
•日時:魔王歴247年9月9日
•備品番号:232S197843
•品名:闇の衣
•場所:魔王城七階大ホール
•損傷箇所及び損傷程度:別紙図の通り
•経緯と原因
勇者と交戦中、攻撃を避けようとしたところ、ホール内に放置されていた長椅子と接触。それにより当該備品の左裾部分に長さ5cmほどの裂傷が生じた。
•改善策
日々、ホールの整理整頓を徹底させる。
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「拝見します。
.....日時の欄。時間の記入が抜けています。『通り』は『とおり』の誤りですね。
それと、場所の『七』階だけ漢数字になってますね。揃えてください。」
「もう知るかぁぁぁっ!!!!」
おしまい




