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絶対防御の粉砕と、新国家『ゼノミルメス』の定義

※本作には残酷な描写や虫の生態に関する描写が含まれます。

遥か頭上を覆う巨大な樹冠の隙間から、太陽の光が何本も降り注いでいる。光と影のコントラストによって、複眼から得られる視覚情報は極限までクリアになっていた。


巨大なシダ植物の群生地を抜けていく中で、俺は自軍のサイズ感を客観的に観測した。

後方支援の通常兵を基準とすれば、俺のサイズはその倍だ。だが、先陣を切る三匹の第一世代たちは、俺よりもさらに一回り巨大化して出力されていた。


俺が生まれた時の栄養源は毒まみれの残飯だったが、こいつらは幼虫時代に極上のアミノ酸を潤沢に与えられ、万全の状態で遺伝子をインストールしたからだ。

巨大で凶暴な兵器。だが彼女たちの触角は常に俺のコマンドを拾うため、従順に後方へと向けられていた。


その時だ。

先頭を歩いていた第一世代の一匹が、巨大な朽ち木の陰でピタリと足を止めた。

地面を這いずる、鈍重な振動と乾いた土の匂い。


視線の先で蠢いていたのは、灰色の分厚い甲殻に覆われた生物。装甲車のようなシルエットを持つ【ダンゴムシ】だ。


足音と匂いを察知したダンゴムシは、体を丸めて完全な球体へと変形した。

キチン質だけでなく土壌のカルシウムで強固にコーティングされた、物理的な死角を完全に消し去る絶対防御。


凄まじい硬度と防御形態だ。その分厚い殻の中には群れを潤す莫大なタンパク質が詰まっている。次世代の兵力を出力するための極上の燃料として、残らず解体して搾取し尽くしてやる。


後方の通常兵数匹が飛び出し噛みつこうとしたが、硬く滑らかな装甲の表面を顎が滑るだけで傷一つ引っかけられない。

俺は待機している三匹の第一世代へ向けて、排除のコマンドフェロモンを放った。


命令を受信した瞬間、三匹の巨体が同時に躍りかかった。

彼女たちは表面を噛もうとはしない。俺よりも巨大で凶悪な大顎を、丸まった球体の三方向から同時に差し込む。


極太の筋肉が詰まった頭部を軋ませ、強靭な三つの万力が完全に連携し、寸分の狂いもなく中心に向かって同時に圧力をかけ続ける。


バキィィィッ……!!!


カルシウムの装甲が限界を超えて砕け散る、耳障りな破砕音が響き渡った。

絶対防御の外殻が陥没し、第一世代たちはその亀裂に顎をねじ込み、装甲を強引に引き剥がして無防備な中身を露わにした。


圧倒的な力業と完璧な連携。通常のアリの物理法則を完全に凌駕した兵器性能だ。

俺は後方支援の通常兵たちに解体を命じ、巣と肉塊を繋ぐ道しるべフェロモンを強烈に分泌した。第一世代には、この肉塊を中心とした円形の警戒網の構築を命じる。


警戒網の中を通常兵が一直線に往復する、完全なピストン輸送の確立。

使い捨ての採取は終わった。俺はベルトコンベアのように無駄なく稼働し始めた資源回収システムを見下ろしながら、コロニーの管理者として一つの定義を下した。


俺からすべてを奪い、ただ女王への奉仕という単一の古い論理だけで稼働する、アップデートの止まった旧式の群れ。

あれを【アーキミルメス(始祖の単一巣)】と呼称し、徹底的に破壊・吸収するターゲットとする。


対して、他種の遺伝子を読み取り、自らの形質を際限なく上書き進化させていく狂気のシステム。

俺は自分の足元を往復し続ける小隊と、その先にある薄暗いスラムに、新しい国の名前を付けた。


【ゼノミルメス(異種捕食進化巣)】。

この狂った森のすべてを蹂躙する、俺の国の名前だ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

本作のロジカルな世界観や戦術を楽しんでいただけましたら、ページ下部の【ブックマーク】および【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価システムへのフィードバックをいただけますと、今後の執筆の大きな原動力となります。

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