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異世界転移したけど森の奥で引きこもってます。スカウト? いやぁ、森から出る気はないので遠慮します  作者: 初音の歌
第六章

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第97話・芽姫の送受信


 グラードライン辺境伯領――城館の談話室は、石造りの壁に囲まれているのに不思議と暖かかった。

 帝国との国境を睨む土地。

 剣と槍、弓と盾、そして祈りと誓い――それらが日常に溶け込む土地。

 なのに今、この小さな空間だけは戦争の匂いが遠い。


 時刻は夜。夕餉を終えた、一時の平和な時間。

 中心にいるのは、子猫サイズの小さなゴーレム――クロエ。

 アウローラの膝の上で、こっくり、こっくり。まぶたを落としては、また持ち上げる。その仕草があまりに可愛らしくて、見ているだけで頬がゆるむ。

 そして当然のように、その周りに人が集まる。


「クロエちゃん……っ! 今日もおつかれさまだねぇ……ほら、ここ、耳のところ。ここ撫でると気持ちよさそうにするの……っ!」

「セシリア、あなたは本当に……。その情熱を内政に回したら、辺境伯領がもうひとつ増えるわよ」

「回してますっ! 回した上で、優先すべきはクロエちゃんですっ!」


 セシリア――辺境伯の娘は、両手でクロエを包むように撫で、頬を蕩けさせている。母である辺境伯夫人も、孫を可愛がるような目で微笑みながら、クロエの頭をそっと撫でた。


「ふふ……この子、触り心地が不思議ね。いつもふわふわしている」

「頬っぺたなんて、ぷにぷにですよ母様! ああ、もう本当に……可愛い」


 辺境伯夫人とその娘セシリアの、とても穏やかで緩んだ顔。

 国境を護る一族だが、この小さなゴーレムを前にした時は愛でるだけの女性に変わる。


 クロエは「芽姫」と呼ばれ、可愛がられている。

 だが可愛いだけの存在ではない事は、周知の事実だ。


 試運転――という名の実務投入は、もはや「試し」ではなくなっていた。

 巡回の前に芽姫に聞く。誰が言い出したのか、今では当然の作法。

 芽姫が示した場所には必ず何かがいる。野盗。魔物。あるいは危険な単独個体。

 数も種類も、武装も、潜伏の仕方も――外れない。


 辺境伯領の兵が恐れなくなった理由は、勇敢になったからではない。

 恐れる必要がなくなったからだ。

 敵の数と位置が分かっているなら、戦場はもはや偶然ではなく計画になる。罠も奇襲も、計画に落とし込めばただの段取り。危険な筈の討伐が、掃除じみた業務に変わっている。


(……恐ろしいほどの戦力。しかも、こんな小さな姿で)


 アウローラは膝の上の重みを感じながら、心の中で呟く。

 クロエは「戦う」ための存在ではない。少なくとも、表向きは。

 だが、戦場で最も価値があるのは剣ではなく視界――つまり情報だ。

 敵の目を塞ぎ、自分だけ見通す。見える者が勝つ。

 クロエはそれを、領地規模でやってのけている。


 そんなクロエは――今ではこの領地のマスコット。

 今夜も同じだ。

 夕食を終え、寝る前のわずかな談話の時間。

 セシリアが離れない。辺境伯夫人も笑っている。

 女だけの空間。護衛として同席している者がいるが、それは影のように静かだ。


「……セシリア嬢。心配しなくても、明日また会える。クロエは居なくならない」

「でも……でも……! クロエちゃん、今日もたくさん働いたから……ちゃんと温かくして……! それに、殿下の傍を離れちゃ駄目だからね? それからそれから……!」


 それから、が尽きない。

 クロエはうとうとしながら、セシリアの声に反応するように、小さく首を傾ける。声はない。けれど、仕草が返事になっている。


 アウローラは、その光景を穏やかに見つめながら、同時に別の思考をしていた。

 窓の外。

 月光の下に伸びる国境線。

 そしてその向こう――帝国。


(クロエの探査は、今のところ国境付近に限定している。十回以上探らせたけど……帝国側の動きは、まだ見えない)


 見えない。

 それは「平穏」の証。

 同時に「沈黙」の証。


 沈黙は恐ろしい。帝都の奥底で、何が準備されているか解らない。

 帝国の準備は危険だ。彼らは武器を磨いて発展してきた。

 銃。火薬。魔法に代わる、新たな兵器。

 矛が生まれれば盾が生まれる。盾が生まれれば矛が磨かれる。

 技術とは、戦争の言い換えでもある。


 クロエには帝国兵装の絵姿も見せた。

 王国兵との違い。甲冑の形。銃の構造。旗印の色。

 クロエの目が「それ」と判別できるよう、知識を与えた。

 だから「見えない」は、本当に「いない」か、あるいは「見せない」かのどちらかだ。


(今こうしている時も……帝都で何かが動いている可能性は、ある)


 アウローラは、唇の裏を噛む。

 昼間は笑える。談話もできる。クロエを撫でて癒されもする。

 だが夜になると、王女としての思考が戻ってくる。

 どれだけ可愛いものを抱えていても、帝国は消えない。


(クロエのレベルは八十五。有羽は言った。クロエは「蛇の分身と戦うことも想定されている」と)


 つまり、帝国の内部にその規模の存在がいる可能性。

 剣聖ハガネが七十を超えてなお「人の到達点」と言われる世界。

 そこから逸脱した八十台。


(レベル五十九の私ですら、戦況をひっくり返せる。なら八十台は……人の理を軽く踏み潰す)


 だから、選択肢は二つに絞られる。

 攻めるか。

 待つか。


(クロエに頼めば、帝都まで探査できる。本人が地図の帝都をぺしぺし叩いた。できる。確実にできる)


 攻める――クロエの探査を帝都まで伸ばす。

 リターンは大きい。帝国の動き、兵器の準備、軍の配置、異常存在の所在。少しでも掴めれば、王国の防衛は一段上がる。

 だがリスクも大きい。探査は目だ。目は向ければ、向け返される。

 帝国が迎撃の術を持っているなら――クロエの視線に気づくなら――その瞬間、こちらの切り札を晒すことになる。

 銃を作った強国だ。新たな技術が開発されている可能性はある。

 クロエの探査ですら察知するような技術が。

 絶対に無いとは言い切れない。三年前に夫を亡くしたあの時から、アウローラは戦争において楽観的な考えを辞めている。


(待ちの一手なら、こちらの強みが生きる。補給線。物資。港。魔国との交易。長期戦では帝国が苦しくなる。鉄の消耗だって、帝国は桁違い。矛ばかり増やせば、いつか骨が折れる)


 待つ――国境線の防御を固め続ける。

 王国の得意な戦い方だ。補給線。港。交易。物資。兵糧攻めに強い。

 長期戦なら、帝国は鉄と火薬で消耗する。

 三年前の戦で、アウローラは帝国の「潤沢」を見た。潤沢すぎる武具が、逆に異常だった。戦争に最適化しすぎている国。つまり戦争を止めると、歯車が軋む国だ。戦果によって発展した国は、立ち止まることを想定していない。


(だが、レベル八十台は……物資の論理を無視できる)


 ここが、思考の壁だ。

 帝国がどれだけ消耗しようと、八十台の存在は単独で戦局を破壊できる。

 鉄の消費も、火薬の供給も、補給の優位も、全部「踏み潰せる」。

 そしてもし、その存在が帝国に「全面協力」するなら――王国の守りは、盾ではなく紙になる。


 アウローラは、呼吸を整えた。

 感情を鞘に。

 戦う者の顔に。


(決断しなくては。どっちつかずが最悪。守るなら守り切る準備。攻めるなら攻め切る覚悟)


 重い。

 決断の重さが、肩ではなく心臓にのしかかる。

 王女は宝石のように煌びやかな椅子に座るが、背負っているものは石や鉄のように武骨で重い。

 国境の一歩が、領民の明日を変える。


 そこへ、ふと、温かいものが触れた。

 クロエが、眠気で揺れる体を起こし、背伸びをして、アウローラの頬に小さな手を当てた。

 手のひらは柔らかく、温かい。

 そして何より――心配そうだった。


【……~~?】


 声はない。

 だが、確かに「大丈夫?」と聞こえた。

 不思議なことに、胸に直に届く。

 あまりに優しい問いかけに、アウローラは一瞬言葉を失う。


(……この子は、私の顔色を読んでいる)


 戦場の道具ではない。

 ただの探査装置でもない。

 クロエは、誰かの心配をする。

 アウローラは、そっとクロエの手に自分の指を重ねた。

 頬に当てられた小さな手を、包み込むように。


「……ごめんな、クロエ。心配させた」

【~~!】


 クロエは小さく嬉しそうに身を揺らす。

 眠気でふらつきながらも、安心したように目を細める。

 その仕草に、セシリアが即座に悶絶した。


「今の見ました!? 今の! 殿下の頬に! クロエちゃんが! ああああ可愛い!!」

「落ち着きなさいセシリア。あなたが興奮するとクロエが驚いてしまうでしょ」


 辺境伯夫人が笑いながら、セシリアの肩を軽く叩く。

 そのやり取りは、平和だ。

 だがアウローラの内側は、平和ではない。

 むしろ、クロエの手の温かさが、決断の冷たさを際立たせる。


(私は……この温かさを守るために、冷たくならねばならない)


 守るとは、優しいだけでは足りない。

 守るとは、知ることでもある。

 知って、備えて、必要なら先に動く。

 王女は、可愛いものに目を細めても、甘やかしてはいけない。


(……クロエの探査を、帝都まで伸ばすか否か)


 その問いが、頭から離れない。

 攻めれば、見えるものが増える。

 だが同時に、相手からも見られる危険性。


 アウローラは、クロエの小さな頭を撫でた。

 眠りに落ちかけている芽姫の、ふわふわとした感触を確かめるように。

 その一撫でに、クロエは安心したように力を抜く。




 ――次の瞬間、クロエが止まった。




 膝の上にある重みは変わらない。ふわふわで、ぷにぷにで、ぬいぐるみみたいな触感だけがそこに残り――葉のような緑髪の揺れも、硝子玉みたいな澄んだ眼の瞬きも、すべてが「固定」されたように動かない。


 ほんの一拍の間。

 呼吸の間。

 静寂が、逆に大きく聞こえるほど。


「……クロエ?」


 アウローラが呼びかけても返事はない。

 セシリアも異変に気付いたのか、息を殺して覗き込んでいる。辺境伯夫人も、侍女たちも、同じく言葉を飲み込む。夜の談話室に、氷の膜が張ったような静けさが落ちた。

 そして――突然。


【~~!?】


 クロエが弾かれたように動き出した。小さな両手がわたわたと動き、胸の前で揺れて、何かを訴えるようにぶるぶる震える。目は大きく見開かれ、硝子玉の奥に淡い光が走った。

 声は出ない。言葉もない。

 けれど、必死さだけは痛いほど伝わってくる。


「クロエ、落ち着くんだ。落ち着いて……そうだ、ゆっくりでいい」


 アウローラはあえて優しい声音を選んだ。

 焦りは波のように伝染する。子供をなだめる時と同じだ。最初に落ち着くのは大人でなくてはならない。

 クロエの動きは、徐々に、少しずつ、収束していく。

 まるで息を整えるように、胸のあたりが小さく上下した。眠りかけていたときの柔らかさとは違う。


 クロエが両手を伸ばす。

 背伸びをするように、両掌をアウローラへ突き出す。

 ――まるで、触れて欲しいのではなく、受け取って欲しいと言うように。


(……そうだ。有羽は言っていた)


 アウローラの記憶が、冷静に引き出される。

 ――クロエは送受信用ゴーレム。

 探査だけではない。受信だけでもない。

 得た情報を、相手に「送信」できるゴーレムなのだと。


 今、まさにそれが起きている。

 クロエの掌から、言葉ではない「塊」が流れ込んでくる。

 熱でも光でもない。

 理解だ。映像でも音でもない知識が、そのまま脳に落ちる。

 それは川のように、しかし乱雑ではなく、整理された束として流入した。



 帝国に潜む蛇の分身の名称。

 レベル。

 能力の大枠。

 容姿の印象。

 嗜好。

 そして――目的。



 全て有羽からの情報だった。

 どうやって得た?

 なぜこの情報を?

 情報源は何処から?

 その理屈は分からない。

 ここは魔境ではない。目の前に賢者はいない。

 彼が今、あの森で何をしているか、アウローラは知り得ない。


 だが――本能が告げる。

 これは「嘘」ではない。


 クロエの送信は、噂話ではない。伝聞の形をしていない。

 肌に触れる温度のように、確かなものとして伝わってくる。


(星髪のアギト……)


 頭の中に、名前が刻まれる。

 同時に、像が浮かぶ。


 若い少女の姿。

 星空のように揺れる髪。

 冗談を好み、酒を好み――人と交流できるように調整された「手」。

 本体から伸ばされた分身体。


 レベル八十五。

 その数字が、脳裏で冷たく鳴った。

 人の理の上に立つ領域。

 剣聖ハガネの七十を超える。

 そしてクロエと同格。


 さらに情報が流れる。

 魔力圧による制圧。

 局地の時間・地形の固定。

 境界系の干渉――閉じる、縫う、噛む、切る。


 全てを理解できたとは言いがたい。

 だが「恐ろしい」という本質は、理解できる。

 それらは戦術ではない。現象だ。

 兵の数でどうこうする領域ではない。


 城壁は紙になる。

 魔力障壁は膜になる。

 人の備えは、容易く裂ける。


 そして最後に――目的。

 文字ではなく、刺さるような意志として届いた。





 神聖国の滅亡。

 光輝神の殺害。





 アウローラの喉が、ひくりと鳴った。

 息が止まりそうになる。だが止めない。

 止めることを、王族の誇りが許さなかった。


「…………」


 だが、声が出なかった。

 談話室の全員が、アウローラの変化に気づく。


 セシリアの背が正される。

 辺境伯夫人の笑みが消える。

 侍女が無意識に唇を噛み、喉が鳴る音すら、はっきり聞こえた。

 クロエは、送信を終えたのか、両手をゆっくり下ろした。

 その目は不安げで、同時に「伝えた」という安堵が混じっている。


(……有羽は、これを知った上で私に送った)


 経緯は分からない。

 なぜ分身が神聖国に敵意を抱くのか、その感情の発火点も分からない。

 だが、結果は重い。


 帝国に、レベル八十五がいる。

 しかも、その意志は「国家の滅亡」を目的として定まっている。


 それは、隣国に「国を滅ぼしかねない竜」がいるようなものだ。

 そしてその竜が、いつでも牙を振るえる位置にいる。

 しかも――帝国の帝王の隣にいる可能性が極めて高い。


 目的の矛先が北へ向いているのは僥倖であり、同時に災厄の兆しでもある。

 災厄の牙が、王国に向けられないなどと誰が決めた。

 神聖国を滅ぼした後は、目標は南王国になるかも知れないのだ。


 アウローラは最悪を考える。

 相手の考えが分からなくても、備える義務がある。


 アウローラは一度、目を閉じた。

 冷たい闇が瞼の裏に落ちる。

 胸の奥に沈む恐怖を、鞘に押し込める。


 そして――目を開いた。


 そこにあるのは、王族の顔だった。

 柔らかな談話の空気を切り裂き、場を「会議」に変える顔。

 この辺境の女たちは、それを見て理解する。理解してしまう。

 平和な夜は、終わったのだと。


「セシリア嬢。夫人」


 短い呼びかけ。

 二人が、同時に背筋を正す。


「――はっ」


 返答も短い。

 恐怖を飲み込み、責任を引き受ける声。

 アウローラは、クロエを抱えたまま立ち上がった。

 膝の上の温もりを失わぬように。けれど、その手は揺らがない。


「すぐに会議を開く。辺境伯を呼んでくれ」

「直ちに」


 セシリアは立ち上がり、早足で侍女に合図する。普段のふわふわした熱狂が嘘のように消え、辺境伯家の令嬢としての顔が前に出た。


「国境軍にも伝令を。帝国の奥で、神聖国に対する何らかの大規模作戦が練られている可能性が高い」

「……承知しました、殿下」


 辺境伯夫人が、声を低くする。

 彼女も戦場の家の女だ。危機の匂いに慣れている。

 慣れているからこそ、恐ろしさも分かっている。


「クロエを通して情報が届いた。魔境の森の賢者――有羽からのものだ」


 侍女の一人が小さく息を呑んだ。魔境、賢者――その単語の重さに反応したのだろう。

 だが誰も口を挟まない。挟めるはずがない。


「帝国に潜む超常存在――名称は『星髪のアギト』。レベルは八十五。能力の詳細は会議で共有する」


 アウローラはそこで一瞬、言葉を選んだ。

 この情報は、強すぎる。危うすぎる。

 けれど、国境は猶予をくれない。

 だからこそ、要点だけを刃のように渡す。


「今は目的だけを伝えて回れ。一言一句、間違えるな」


 談話室の空気が、凍る。

 冷気など無い筈なのに、寒い。

 アウローラは言葉を選び抜いてから告げた。





「名称『星髪のアギト』の目的は――『神聖国の滅亡』及び『光輝神の殺害』だ」





 誰かが、喉を鳴らした。

 悲鳴を飲み込む音。

 けれど辺境伯家の女たちは、顔を崩さない。

 セシリアが、強く頷いた。


「承りました。直ちに、準備に取り掛かります――殿下」

「頼んだ」


 アウローラはクロエを胸に抱え直す。

 小さな芽姫は、まだ不安げだ。だから指先で背を撫でる。

 大丈夫だ、と言葉にしなくても伝えるように。


(……「待ち」の選択は、意味を持たない)


 さっきまで迷っていた二択が、今、片方から崩れ落ちた。

 敵が人間なら、物資と補給で勝てる。

 敵が超常なら、備えの形が変わる。


 王国の選択は「攻め」になる。ならざるを得ない。

 今夜、ここで決まった。


 グラードラインの石の廊下に、足音が走り出す。

 伝令が飛ぶ。

 兵が起きる。

 灯りが増える。


 夜はまだ深い。

 だが国境にとって、夜は「休み」ではない。


 クロエが、アウローラの胸元で小さく身を震わせた。

 それは寒さではない。不安の震えだ。

 アウローラはその震えを受け止めるように、抱く腕に力を込める。


(……有羽。お前は、必要な時に必要な物を投げてくれる。ありがたいが――少しは手加減してくれ)


 僅かに苦笑。

 そして、心の中でだけ短く誓う。


(この情報を無駄にはしない。無駄にできるほど、私は甘くない)


 暖かな談話室は消えた。

 そこに残ったのは、国境の夜と王女の決断だけ。


 グラードライン辺境伯領の大地が、静かに戦場の色へと染まり始めていた。


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