第6章:放送ジャック ~白き布の宣言~
体育での白タンクトップブーム(?)に気を良くした恵斗先輩。次は生徒全体への普及を狙い、ついに放送部に手を伸ばす。果たしてその作戦の行方は――。
「次だ、俊介! 今度は全校生徒に直接アプローチする!」
「また無茶なこと考えてません?」
俺が呆れていると、恵斗先輩は生徒会室のホワイトボードに書き出した。
『白タンクトップPR放送』
「え……まさか、放送で?」
「そうだ! 全校放送で白タンクの魅力を伝えれば、全員が心を動かされるに違いない!」
「いや、絶対動かないと思いますけど……」
さっそく放送部の部室へ向かう恵斗先輩。部長の宮田先輩が困惑顔で迎えてくれた。
「放送を使って、白タンクトップの素晴らしさをPRしたいんです!」
「いや、そういう個人的な企画はちょっと……」
「頼むよ! 白タンクは心の革命なんだ!」
宮田先輩がチラッと俺を見て助けを求めてきたが、俺もどうにもできない。
「えっと……一応、企画書があれば考えるけど」
「任せてください!」
そう言って恵斗先輩は一瞬でホワイトボードに書いたアイデアをそのまま紙に移した。
『白タンクトップの7つの魅力』
1. 心の統一
2. 精神の解放
3. 通気性の向上
4. 汗の速乾性
5. 美しいシルエット
6. 筋肉を引き立てる
7. ファッション性の追求
「いや、これ全然説得力ないし……」
宮田先輩が頭を抱えたが、恵斗先輩は止まらない。
「そして、このPRには、あの仁田が協力してくれるんだ!」
「仁田くん……? 柔道部の?」
「そう! 白タンクが筋肉を引き立てる様子をスロー映像で流す! さらにBGMには壮大なクラシックを使って、白タンクの神聖さを演出する!」
「いや、そんな放送流したら苦情来るでしょ……」
俺が冷静に指摘すると、恵斗先輩は胸を張って言った。
「大丈夫だ! 芸術として認識させれば問題ない!」
「いや、芸術じゃないし……」
数日後、昼休み。
「本日は、特別番組『白タンクトップの真実』をお届けします」
流れ始めた放送に、教室中がざわつく。
「え、なにこれ?」
「仁田くんじゃん!」
画面には、白タンクを着た仁田先輩が、ゆっくり腕立て伏せをする映像が映っている。BGMはやたらと壮大なクラシック。
「この布が、僕らを自由にする……」
ナレーションは恵斗先輩。
「タンクトップ、それは己をさらけ出す勇気……」
教室中が笑いに包まれた。
「なにこれ、超ウケる!」
「仁田くん、なんでこんな映像に協力したの?」
仁田先輩本人は画面に映る自分を見て困惑していた。
「え、俺こんな感じだったっけ……?」
放送が終わると、教室中が大爆笑。
「いやー、久々にあんな腹抱えて笑ったわ!」
「放送部もすげぇな、あれOKしたのか?」
俺が生徒会室に戻ると、恵斗先輩が意気揚々と迎えてくれた。
「どうだ、俊介! 大成功だったろう?」
「いや、大成功っていうか……笑いものにされてましたけど」
「それでも話題になればいい! 白タンクが校内に浸透すれば、それでいいんだ!」
「……まあ、確かにインパクトはありましたけど」
そこへ宮田先輩が慌てて飛び込んできた。
「ちょっと、恵斗くん! 校長先生が放送内容に激怒してる!」
「なんだって?」
「『生徒会長としての自覚を持たないなら、解任も視野に入れる』って……」
恵斗先輩は一瞬だけ硬直し、すぐに力強く拳を握った。
「校長がどう言おうと、俺は信じる道を突き進むだけだ!」
「いや、普通ここで反省しません?」
「反省? いやいや、白タンク普及のためならこの命、惜しくない!」
「いや、命かけるとこ間違ってるんですけど!」
白タンクトップPR放送は、思わぬ形で校内に話題を振りまいた。しかし、校長の逆鱗に触れてしまったことで、恵斗先輩の生徒会長としての立場が危うくなる。果たして、恵斗先輩の布教活動はどうなってしまうのか?
あなたは、この状況をどう乗り切るべきだと思いますか?