うで
風邪が治ったよーって琴音に連絡すると、すぐさま琴音は、オレの部屋へとやってきた。
コンコン
「失礼致します。そしてこの部屋からご退室ください。」
と、琴音はオレの部屋に来るなり…オレを部屋の外へと追いやった。
「あ…え?」
「採血の準備いたしますので、三番前でお待ちくださ〜い。」
って言われたよね。
オレの部屋って…三番だったん?
って思っていると、琴音がオレの部屋からひょっこり顔を出して、
「上城さーん、三番へお入りくださーい。」って呼ばれた。
部屋に入ると…ありますね。
色々意味のわからないグッズが。
テーブルにタオルとシャーペン…。
これで採血を?
…ちと、恐ろしい。
「あ、上城さまですね?」
「はい…」
「それでは、おかけください。」
「もしもし」
「電話じゃない!座ってってこと」
「あー…」
言われるがまま、座るとタオルを手に持つ琴音。
「それでは、腕を出してください」
オレの目をまっすぐみて、タオルをぐるぐるする琴音。
「なんだよ…そのタオル…。」
まさか…目隠しとかしないよな…?
「こちらは、採血するのに血液をとどめる役割を果たしますよ。」
そう言いながら、オレの二の腕あたりをクイっと縛り出した。
「痛くありませんか?」
「あー、うん」
縛られた腕の先は、みるみる血管が浮き出した。
「うわー、すご〜」
琴音は、オレの血管を指でツツーってなぞった。
おわっ…く、くすぐったい…よ。
「看護師さん…くすぐったいです」
「あ、ごめん。つい…」
つい…ってなんよ?
そんな看護師さんみたことないわい‼︎
琴音は、早速シャーペンを握った。
「え?な、なにするんよ?」
「もちろん採血ですよ?」
「シャーペンで?」
「はい。」
当たり前ですけど?みたいな琴音。
「それって…刺すの?」
「ううん、ふりだけだよ。」
ホッ
琴音は、オレの太い血管をプニプニ優しく押すと、ここに決めた‼︎といい、濡れたティッシュでそこめがけて、拭き拭きした。
そして、シャーペンで針の向きをどう向けるか奮闘中。
「こうかなぁ?いや、どうなん?」
と、オレの腕を触りまくりだ。
てかさ…なんなら髪の毛もオレの腕の上でサワサワしてくすぐったいんよね。
オレの腕を…オレの近くでオレの血管を凝視する琴音。
一生懸命に頑張っている琴音は、なんだかとてもかっこよくみえた。
でもね、色々ヤバいんよ…
「あのさ、琴音…角度がもっと緩い方がいいんじゃない?」
「あー‼︎そっかぁ。血管に沿う感じね!」
⁉︎
琴音がいきなり顔をあげたから、オレたちは…とてもお顔が近くなりましたよ?
「え、琴音がめっちゃ…ちかっ」
「あ、ごめん…ね。」
琴音は、慌ててオレから離れた。
「うん、いやいいけど…それよりさ、オレも人の血管探したいかも。」
その言葉を聞くと琴音は、
「あ、うん。そ、そうだね。ちょうど暑くなってきたから、腕まくりするし…どうぞ」
と、差し出された琴音の腕。
…
え?
この、細くて白い不思議なものが…腕ってやつなんですか⁉︎
めっちゃ細くて白くてすべすべしとるんやけど?
「ちょっと…あんまりジロジロ…見ないでよぅ」
…
お、そうだよな。
「や、なんか…この世の物とは思えなくてさ…つい見入ったよね」
「はぅいっっ⁉︎し、失礼すぎーっ…」
「あー…ごめん。つい…」
ほおずりしたくなるくらいの艶やかさなんだよ…なんて言えるわけもなく…。
気を取り直してと、
「そんじゃ、タオル巻くからねー。痛かったら歯ぎしりしてくださいねーー」
「なんで歯ぎしりよ」
「…あ、間違えた。痛かったら右手あげてねー」
「無理じゃない?右手にタオル巻かれてるのに…」
「あー…もう…琴音ちゃんはワガママちゃんだねー。それじゃあ、まったく痛くないようにせんちぇーが優しくまきまちゅからねー。安心してくだちゃいねー」
って、ふざけながらタオルを優しく縛った。
この手は…それくらい優しくしないとホント折れそうなくらいなんよ。
「その言い方…キモい」
「キモいとかいうと…ギューしますからね?いいの?あなた?」
「やっぱりキモい」
「まだいうんか!ならばギューします‼︎」
オレは、琴音を心置きなくハグした。
ムンギュー♡ってね。
「えっ…ギューって…腕を強くするんじゃないのぉ⁉︎」
「当たり前です。あなたの腕をギューしたら折れますよ?」
「だ、だからって…いきなり抱きしめるとか…」
「いや…抱きしめては、いません‼︎ギューの刑です」
「いや、わたしにしたら一緒なの」
「ほう、これはお勉強になりました。」
「てかさ…いい加減離してよ」
「えー、どうしよっかなぁ?じゃあ、オレっちキモくない?」
「オレっちって…言い方キモー…」
「またキモいっていいましたねー」
ギュー♡
「琴音さん…ほんとはギュー欲しいんじゃありませんか?なんだかんだで、キモいキモいって。このツンデレさん♡」
パコっ
頭を軽くパコリされました…ね。
「ツンデレさんじゃないっての!この、ど変態めっ」
怒られましたね…。
まぁ、今回ばかりは…変態すぎましたね…。
続く。