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第17話 ロゼが去った後の下男下女

 ロゼを嘲り手酷い反撃に遭ったヤミーは、レオンが去った後もその威圧に怯え震えていたが、後ろから衝撃を受けて転んだ。


 驚いて振り返ると、かつて仲間だった使用人たちがヤミーを見ていた。

 同情の目で見ている者もいるが、冷たい視線が大半で、特に怒りの視線を向けている初老の男を唖然とした顔で見た。


「……お前のせいで、危うくとばっちりを食うところだったじゃねぇか!」

 初老の男はヤミーに怒鳴る。


 ヤミーは蹴られたことがわかると、じわじわと怒りが湧いてきた。

「……テメェ! 何をすんだよ!? 第一、とばっちりだと!? お前らだってそう思ってたのに、なんで声に出しただけの俺があんなに言われなきゃなんねーんだよ!? お前らも同罪だ!」


 こう言われて、同情の目で見ていた者も目をつり上げた。


「お前と一緒にするな! 俺は本当に奥様に対してなんとも思っちゃいなかったよ! 執事から命令を受けようが奥様から命令を受けようが俺のやる事は変わらねぇ! ……なのに、テメェのせいで職を失うかもしれなかったんだぞ!」


 睨んでいる全員がうなずいた。

 文句を言っていたのは辺境伯当主の歳に近く、幼い頃から一緒に遊んできた者たちで、歳を取っている者たちはわきまえていた。

 もともと辺境伯当主から命令を受けていない彼らは、上が誰に代わろうが、やることは変わらないのだ。

 貴族が偉いという感覚はなかったが、雇い主や上に逆らわずひたすら自分の仕事をこなし給料をもらうだけ、と淡々としていた。

 むしろ、辺境伯当主の幼なじみを自慢しているこの連中を苦々しく思っていたのだ。

 ……今回は、苦々しいどころか怒り心頭だが。


 ヤミーは睨みつける連中に戸惑っていたが、次にはヤミーも怒りだした。

「……よくもまぁそんな薄情なことを言えるよな!? ずっとやってきた仲間だったのによ!」

「縁が切れてせいせいしてるわよ。アンタが旦那様の幼なじみ自慢をするの、マジむかついてたから」

 下女が吐き捨てたら、ヤミーが目を剥く。

「なんだと!? うらやましかったのならそう言えよ!」

 ヤミーが叫んだとたん、下女は見下すようにあごをしゃくった。

「……そういうところよ。あれだけ旦那様に言われてクビになったのにぜんぜん反省してないじゃないの。何様のつもり? アンタってそんなに偉いわけ?」

 ヤミーはぐっと詰まる。


 ――と。

 ジョセフが手をパンパン、と叩いた。

「お前たち、もういいから仕事に戻りなさい。人手が足りなくなりましたので、しばらくはカバーしてもらうことになります。もちろん、解雇した者たちの給料が浮きましたので、働きによっては歩合給も出しましょう」

 彼らは一斉に頭を下げ、持ち場に戻っていった。

 辺境伯当主の説教があったあの後ではさすがに従順になる。


 ジョセフは、呆然としているヤミーと絶望して泣いている者たちを冷たく見下ろす。

「明日中に、荷物をまとめてここから出ていくように。旦那様から『辺境伯領から』と言われたのを私も聞きましたよ。……わざわざ辺境騎士団を使わせないよう、自分たちの足で出て行ってくれることを願います。……あぁ、ヤミー」


 ふと思い出したように声をかけ、侮蔑の声で続けた。


「侮辱罪で捕縛されずに良かったですね? でも、これ以上奥様に対して失礼な発言をするのなら、犯罪者として処理するように進言しますよ。正直、聞くに堪えません」


 ヤミーがビクッと反応し、信じられないといった顔をするので、ジョセフは冷笑した。


「あぁ、知らなかったようですね。平民が貴族に対して無礼を働いたら侮辱罪が適用されます。貴方は、辺境伯夫人に対し『ひざまずいて懇願しろ』などと言ったのですよ。旦那様はその言葉を聞いていなかったようですが、聞いていたとしたら恐らくその場で殺されていたでしょうね」


 それでヤミーは、今まで自分に向けられたことのなかった威圧を思い出し、震えた。


 ――だが、これだけ言われてもまだ理解はしていなかった。

 今まで仲良くやってきたのにどうしてこうなったのか、貴族のガキが現れたせいだとロゼを恨んでいた。


 次回、ヤミー視点で、この後の話です。

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― 新着の感想 ―
そりゃ何様なんだって話だよね。
さよならバイバイごきげんようヤミー。来世ではマトモになれよ(フライング気味)
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