01:好き放題モンスターからスキルをドロップできる人は非モテ男子。
「ほい」
ボールよりも二回りほど大きな球体である浮かんでいるスフィアを刀身の内側が空洞になっている剣で綺麗に斬る。
斬ったことでスフィアは光の粒になるが地面に残ったものがあった。
「うーん……ハズレスキルか……」
地面に落ちているものはスーパーボールほどの球体でそれは「スキルボール」と呼ばれ使用することでスキルを獲得することができるものだ。
そのスキルボールを「鑑定」で見れば「アイテムボックス」というハズレなスキルだった。
別に戦闘に使えるわけでもないしもう十個も覚えているから何個もいらない。しかも何個も使っても容量が増えるとかじゃなくてポケットが増えるだけというどこに何を入れたか忘れるパターンだ。
いっぱいあってもいいけれど今は在庫が増えるばかりだからハズレスキルだ。
かれこれ一年以上探しているが全く出てこないスキルがある。
「……透視どこにあるんだよ!」
ダンジョンの中でそう叫んでしまう。
俺の目的のスキルが全く出ないまま一年以上が経っているわけだ。その間に色々なハズレスキルをかなり引いている。
七属性の魔法に始まり、多種多様な魔法。剣術や槍術などの技術に関するスキルも手に入れた。防御や攻撃に関するスキルもある。他にもアイテムボックスや鑑定などのダンジョンでは欠かせないスキルもある。その他もある。
だが……だが……! どうしてエロ三種の神器が出ないんだよ!?
エロ三種の神器とは透視・透明・催眠・改変・時間停止の異能エロでは定番になっている能力である。なお俺が勝手にエロ三種の神器と定めている。
「千里眼だけだと意味ないだろ……!」
千里眼は目的のものを遠くからでも見ることができるスキルではあるが女の子のおパンツを見ることやお風呂を除くことは叶わない。
だからずっと透視のスキルを探していて千里眼と組み合わせればどこにいても見放題だと思っているのに……!
千里眼も千里眼でエッチな場所は覗けないようになっている。くそがっ!
エロ三種の神器が一切出てこないのが今の俺の悩みだ。他のスキルなんてゴミスキルなのにどうして永遠に出てくるのだろうか。
「ハァ……帰るか」
明日も学校があるからこれで帰らないといけない。
いつになったら出てくるのやら。くそっ、想像しただけでムラムラしてきた。
想像だけじゃなくて見たいんだよ! この溢れんばかりのリビドーを満たしてくれるのは実際に見るしかないのだ……!
☆
ダンジョンから出たことで電波が届くようになってスマホを開いて「スキルホルダー」のサイトを開く。
ダンジョンで出たスキルボールはダンジョン庁が管理しているこのサイトで売買することができる。
出品者がオークション形式や即落札額を決めることができ俺は即落札での金額を提示している。
まずエロ三種の神器をここでも探していて出品しているスキルを探すことから始まる。
でもスキルは鑑定しないとそのスキルかどうか分からないためアンノウンで出すスキルがほとんどだ。稀に鑑定スキルで鑑定してもらったとものがあるが本当に極稀だ。
アンノウンのスキルボールを買って鑑定して見てもいいのだが……何せ高い。一つ三千万以上するのだから。
そもそも俺以外の人はスキルボールをそう簡単に出すことができない。さらにスキルの有無でダンジョン攻略が有利に進むためスキルボールは高額売買されている。
俺は簡単にスキルボールを出すことができるが、魔石を出すことができない。だからお金を稼ぐことができずこのままではダンジョンの高い入場料を払えずに貯金ゼロになるというゆゆしき自体になる。アンノウンのスキルボールを買うどころの話ではない。
その解決策として俺もスキルボールを出品している。出品していると言ってもこのスキルホルダーのサイトではなくSNSでだけど。
俺としてはゴミスキルを出品しているから三百万円くらいで募集している。でもこれがダメなんだろうな。
コメント欄では「こんな価格でスキルボールを売るわけがない。詐欺です」とか「騙されないでください。これは詐欺です」とか「通報しました」とか言われている。
通報されようが俺は特に問題ないけどコメントのせいで安くても全く売れない。
でも三千万で売るのも申し訳ないと思ってできないんだよなぁ……ハァ、どうしたものか。スキルホルダーのサイトでは最低価格が一千万円以上だからそんな高額販売は無理だ。
「ハァ……!」
何だか腹が立ってきたな。ムラムラしているから余計に腹が立つ。
なんだよ詐欺って。こっちが善意で安くしているのによぉ! 買え! 買ってから文句言え! ハァ、そんなこと思ったってなんにも解決にはならないか。
ダンジョンで下層に行けているのにどうしてこんなに金欠になるんだか……もうそろそろで俺の貯金が底を突くぞ。ダンジョン入場料はバカにならないんだから。
とっとと帰って抜こう。美味しいご飯を食べてネットを見て寝れば大抵気持ちは切り替えられる。
今日のおかずは何にしようか……うーん。
年上か? 女上司か? 妹か? と考えているところで目立っている女子グループが視界に入った。
俺と同じクラスのトップカーストの女子三人がそこにいた。ギャルギャルっ娘にダウナーギャルっ娘にボーイッシュ王子様っ娘の三人だ。
相手は俺みたいな陰キャを知らないだろうがあの三人は綺麗所で目立つから嫌でもわかる。しかもギャルギャルっ子が陰キャにも優しい感じだから勘違いしてしまいそうだった節がある。
俺を意識してる? とドキドキして家に帰って賢者タイムに入った瞬間に冷静になったけどな。
……今日はギャルをおかずにするか。ギャルの薄い本は夢があるよな。
冴えない男がふとしたきっかけでエッチな関係になるとか夢みたいだ。だからそういうジャンルは薄い本がいっぱい出てる。
あー……ギャルみたいな幼馴染がほしかったなぁ。そんなことを考えてたらむなしくなるからやめよう。
陰キャな俺は妄想するだけしかないって虚しくなる。でも妄想している間はリビドーが滾るからその瞬間は最高潮だ。