86.トニーの誤算
side:カーラ【ギャップ】
クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが!!
アルステリア帝国にカーラの能力がバレた?ふざけんな!?
いや、まってまって……カーラは強い。カーラは最強なんだ。大丈夫……混ぜ込んでたブラフがバレただけ。【虚空】の本質はバレていない。そもそも、バレたところで負けやしない。保険も効いてるし、焦る必要はないね。
うんうん、大丈夫!
「焦っているようだな?」
女隊長がカーラのことを侮辱してくる。既に死に体のボロボロの癖にだ。ムカつく!!
「うっさい。死ねよ!」
銃を構えて殺そうとすると、キンッと音を立ててシールドが発動してそれを阻む。撃たれたんだ。この位置は確かに目立つかもしれないけど、どこから?
顔を上げるとアルステリア軍の本拠地の方から援軍がやってきている。
「チッ……」
ムカつく、ちょっと見破ったからって、いい気になりやがって。イラつくいていると、ルンドバード軍の兵士も向かってに来ていた。やっときたか。
「ふふッ、じゃあ、カーラがアイツらもやっちゃおっかなぁ」
カーラにちょっかいを出したアイツらは潰しておかないとね。
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side:第3師団長トニー
あの長年苦しめられてきたネームド【ギャップ】の能力がかなり明らかになる情報をリンゼ達が見つけてくれた。
これはかなり重要情報だった。その都度サイズも変えているのなら、任意で発動しているはず。先程の狙撃で仕留めたかった。完全に不意を付いたはずだった……
それなのに防がれた。あれも能力なのか?
敵軍も来てしまい、かなり苦しい展開となった。この前線に兵の余裕なんてない。なけなしの兵を連れてここに来のだ。ここが引き際だろう。これ以上は立て直せなくなり、ノード奪還どころか、逆に攻め込まれてしまう。
リンゼ、すまん。
「全軍てっタイ「ぁあ!!」
「い、ま、の、はぁ!お前達だなぁ!?」
「ッ!?」
ギャップが100m以上離れたここまで飛んできた。まだ突っ込んで来るのか!?
「無闇に撃つな!近接格闘をメインに味方と離れるな!!」
「チッ……黙ってやられろよ!!」
バンッと撃ってくる弾丸をシールドでガードする。よしよし、通じる。
「ふぐッ!?」
と思った瞬間に腰に衝撃が走る。何がッ!?俺の右後方、シールドの内側に窓が出来ていた。こんなのどうやって防げって言うんだ!?
「距離を取るな!!奴に近付いて、戦闘しろ!!」
「うぉお!!」
部下が言う通りにアサルトライフルの柄で殴り掛かる。また窓が開かれ、銃身が飛んで、殴りかかった部下の腹部に返される。部下は苦しそうだが、弾丸を返されるよりはマシだ。
俺と一瞬に来たのは俺も含めて10人。部下達が間髪入れずに組み伏せに行く。
「ハハッ!それで勝てるとでも!?」
組もうとした所を躱され、撃たれる。次の兵士は拳を窓で返され、蹴られる。違う兵士は撃たれる。
奴が周りを気にせず撃てるのもあるが、奴自身が単純に体術も強い。
今も、蹴ろうとした兵の足が窓で飛ばされ、自分の顔を蹴りあげる。窓が消えた瞬間、足が空間で切り飛ばされた。
「ヴぁぁあああ!!」
「アッハッハ!!痛いよね?痛いよね!?だって足が無いんだもんねぇ!?アハハハッ!」
足を切り飛ばされた兵士の叫びが響く。あんなことも出来るのか。能力に依存した者ならば、とっくに組み伏せられたはずなのに、あのような振る舞いのクセにその動きは鍛えた者の動きだ。
……強い。
何とか接近戦をしているため、時間がかかっているが、少しずつ怪我をする兵士が増えていく。敵の兵士も2分隊、10名くらい近付いて来ている。逃げるにも、敵の機動力が高すぎて逃げることも出来ない。状況は最悪だ。
ギャップを何とかするしかない!
「全員、気合いを入れろ!!」
俺は無能力だ。能力で超常現象を起こすことなど出来ない。だが、それでもここまでのし上がって来た。こんな銃創で止められる俺ではないわ!!
痛みを気合いで推し留め、銃をバットのように振る。
「おっと!」
屈んで躱された。間髪入れずに蹴る。
「危ないじゃんかぁ!」
銃を持った右手で受け流され、そのまま銃口がこちらに向く。銃をクルリと回して、肩から銃を掛けるためのスリングベルトを伸ばした腕に絡ませて銃口を逸らす。よし、ついでに奴の右手を捕まえた。このまま引っ張って、バランスを崩し左手のコンバットナイフを……
窓が俺の腕を挟むように出現した。まずいッ!
片方の窓から、奴の足が出てきて俺の肘を内側を蹴る。俺の肘はたまらず、俺の意思とは関係なく無理やりだが、正しく曲がる。それが良くなかった……
もう片方の窓に肘が押し込まれ、窓が消える。
「んぐぁッ!!」
俺の肘が空間に切断され、右腕は肘から先が皮でかろうじて繋がっている状態となる。痛みに硬直すると、顔面を蹴り飛ばされ、俺は転げる。
「フハハッ!!あんた強いねぇ!?でも、カーラちゃんはもっと強いのだ!」
「ふぅー、ふぅー、ふぅー」
あまりの痛みが脳に突き刺さるようだ。ブラブラする右腕が余計に痛む。コンバットナイフで肘だった部分に残された皮を切り落とす。
「うっわー!痛そ〜!汗すごいよ!脂汗!!ぷぷぷッー!」
痛みに気絶しそうな思考を気合いで引き戻し、策を練る。……練る。
一緒に来た、部下達も既に満身創痍であった。
健全な状態な者は誰もいない。誰もが血を流し、傷付いていた。唯一、怪我のないのは目の前の女だけ。
「バケモノめ!」
「こんな可愛いカーラちゃんをバケモノとか!おっさん目腐ってるんじゃなーい?こっからは楽しい楽しいお仕置きの時間だよ!」
邪悪な笑顔がこちらを向いている。
「エリオット様、こんなに突出されては、部隊が追いついてません」
「あんた達が遅いの!ちゃんと付いて来てくれないと」
どうやら敵軍も集まってしまったようだ。終わった。せめて、撤退指示を出さねば……少しでも兵が生き残り次こそ、このバケモノを倒してくれ。きっと今回の情報が役に立つ事を願う。
奴らが話してる隙に、残る左腕で無線機に手を伸ばす。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
急に銃声が響き、敵兵が倒れた。な?何が?いや、誰が?もう誰もまともに動ける者はいないぞ!?
キョロキョロと見回した、俺の視界に赤い軍学校の制服を着た少女が現れた。
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