83.形勢逆転
「硬いッ!!」
シア達は街まで敵の塹壕はあと1層程度の所まで食いこんできていた。しかし、そのノードの街まであと少しと言うところで行く手を阻む者が現れたのだ。ネームド:守護神である。
「我等のちからァ!思い知れぇー!!」
ガーディアンはシールドを張りながら、ミニガンを特務機関へ乱射する。身長は2m、筋骨隆々とした体付きにスキンヘッドの厳つい見た目をしており、武器は回転する銃口が8つ付いたミニガンである。ベルト給弾方式で供給される弾丸は無尽蔵とも呼べる程の弾幕をシア達へお見舞いしている。
「ぶっ飛べ!」
ロブの放った弾丸がガーディアンへと炸裂。爆発する。風によって土煙を払われても、ガーディアンのシールドは健在であった。
「クソッ硬ぇな!うぉッ」
ミニガンがロブを狙うが塹壕へと避難する。これがガーディアンの真骨頂、その類稀なシールドが敵の攻撃を弾き、ミニガンによる制圧射撃を得意とする。拠点防衛に置いて破られたことのない鉄壁の布陣。ガーディアンの名の由来ともなっているものだ。
移動速度は早く無いため得意なのはもっぱら拠点防衛であるが、今回のようなシュチュエーションこそ真価を発揮するのだった。
ガーディアンの周りにはルンドバード軍魔術師による分厚い土壁が生成され、彼を中心に防衛線が組み直されていく。
「火力を集中しろ!!」
フリードから指示が飛び、特務機関側は銃弾をガーディアンに集中させる。しかし、ガーディアンのシールドは一般兵士のそれとは隔絶している。同じシールドとは言えない程の差がある。割れる気配などなく、銃弾を弾きその硬さを遺憾無く発揮していた。
ノード北側の特務機関による進軍はここで停滞する。たった一人で止めた。誰にでも出来ることではない、ネームドは1人で戦況を左右するほどの影響力があるのだった。
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ガーディアンによって北側が抑えられた頃。南側、第3、4師団の戦場にもネームドが現れていた。
「アッハッハッハッハッ、ざんねぇーん!」
第3師団135分隊の隊長が背後からの銃弾に倒れる。目の前で自分以外の分隊の仲間が殺された第3師団の若い兵士は恐怖で震えていた。何が起きたのか理解出来ていなかったのだ。
だが、誰がやったかは分かっている。目の前にいる、ルンドバード軍の兵士。
カーラ・エリオット、アルステリア軍にはネームド【ギャップ】として知られていた。
軍服の上に白いコートを着用しており、そのスタイルの良さがひと目で分かるほど、胸元ははだけており、首から下げているネックレスチェーンが谷間に吸い込まれている。その整った顔は獲物を見つけた目をしており、口角は吊り上がりニヤリと笑う……
舌をペロリとする姿は妙に色っぽい仕草であった。
しかし、彼女に見つめられている兵士は未だに震えていた。彼の命は今、彼女の手のひらの上にある。自身が楽しむために他人をいくらでも犠牲する彼女の手に……
「怖いの?怖いの?降参するなら君の命は助けてあげることも出来るよ?」
震えながら兵士は素直に銃を放す。
「コココ、降参ひます」
「あはははッ、コココって、ニワトリかッて!いいねいいね。素直で大変宜しい。じゃあ、次は服脱いで土下座しよっか!」
兵士は言われた通りにする。既に戦意は喪失していた。彼は死なないためだけに、彼女の言いなりとなっていた。
「あら、結構鍛えてるじゃない?うんうん、いい感じの土下座ね。もしかして土下座し慣れてるの?ぷぷぷッ、OKだよ」
「あ、ありが「バンッ!」んぐっ……」
カーラが兵士の背中を1発撃ち抜いた。
「アッハハハハッ!!助かったと思った?思ったよね?途中まで言ってたもんね」
「う……ぐ…」
「お、いいね!反抗的な目だね。そんな人の顔も楽しいんだよぉ!?」
そう言うとカーラはパチンと指パッチンを行う。すると兵士の下の空間が円形に切り抜かれ、その中は青く見える。そこへ兵士は吸い込まれる用に落ちて行った。
「ぷぷぷッ!今の顔!みた!?みた!?面白ッ」
落ちた兵士は遠く、アルステリア軍の拠点方向、上空から叫び声が聞こえ、間を置いてぐしゃッと鈍い音が響く。
カーラの能力は空間と空間を繋ぐ。まるで何も無い空間が円形に切り抜かれ、そこからもう1つの切り抜かれた場所に繋がるのだ。円形のそれはまるで、窓のようにもう1つの窓の先を映している。
銃弾を撃たれれば、自分の手前にその窓を作り、別の窓から銃弾は出ていく。それが敵を向いていれば、それだけで敵は自分の撃った弾丸で死ぬのだ。
「あ、やっと来た。ほら、ジャレっちが頑張ってんだから、あんたらも頑張んなさい!」
「「はい!」」
「ったくー。次の獲物はあっちかなぁー」
進み出したカーラをアルステリア軍は止めることが出来ず後退。ルンドバード軍がカーラが崩した防衛線へ食いこんでくる。
南側の戦況は拮抗していた戦線がアルステリア軍の押される形で動き出す。
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