7.入学
あの事件から1ヶ月ちょっとが経過した。
ずっといろいろとバタバタしていた。
怪我自体は1日ですっかり元通りになった。早過ぎないだろうか?これがこの世界の常識っぽい。
医療技術は高いのか、人間の回復力が異常なのか...
父さん母さんと5年間暮らした家の物やらなんやらを整理したり、いろいろと手続きをしたり結構忙しかった。
片付けは涙が出てきて辛かったけど、何とか頑張った。
そして今日からザック・フォーデン家にご厄介になる。
戸籍上は養子となった訳では無いので私は変わらずリリーナ・ランドルフのままだ。
とりあえず、2年後じゃないと軍学校にいけないのでそれまでは出来ることをやることにする。
この世界がゲームと同じだと分かった今、この世界についても勉強しないといけない。何が同じで何が違うのか知っておくことが大事だろう。
あとは私の能力、レッドアイについて。これを自在に使えるようにしないといけない。
……あれ以来まだ発動出来てない。これは要練習だ。
魔力関係についても同じだ。シールドはもちろん、引き続き水の生成で魔力量を上げたい。
思い付くのはそんな所か……
よし、一旦、やることは整理できた。やっていくぞ!
「リリちゃん!何してんの?」
おっと、シアちゃんの相手も必要だった。これも追加だな。忙しくなるな…
____________________
あっという間に、2年経過した。
この世界について、ある程度分かったが、ゲームである、HoWと基本的に同じだ。シールドや私のレッドアイなどの血統スキルも全部魔力で行われている。
そんな、前世では説明出来ないものは、全部が魔力要素だった。
よく分からんものっていうか、前世とは違う、ゲームならではのものは魔力が関係してる感じ。
瞬間回復薬とか、ゲームなら当たり前の回復手段だけど、現実だったら物の数秒で回復するって事だ。
うん、ヤバいね…
ただ、貴重ではあるらしく1部隊に1、2本が限界らしい。
なくても、徐々に回復していく所がエグい。さすがに大きい傷などは時間がかかるけど、かすり傷程度はみるみる治る。
たしかにゲームも時間経過で治っていたけど、実際に傷を生で見るとヤバいなって思った。
これも体内魔力が関係してるらしい。
要するにこの世界の人間は前世の人間とはスペックが違うんだ。
これが本とザックさん達に聞いた限りでわかったこと。この歳では行動範囲が限られてそれ以上は分からなかった。
いよいよ今日から軍学校だから、あとはここで勉強出来るだろう。
軍学校の試験は血統スキル持ちは免除で入校できた。そもそも、6歳でアルメリア国民全員が血統スキルと魔術師適正の確認を受けなければならないらしい。
まぁ、こんな便利スキル、悪用されるのは困るからちゃんと記録しとかないといけないよね。
逆に軍としては有能な人材が欲しいから、優遇して入って欲しいんだろう。そして軍学校で英才教育って感じか。
私はこの世界がゲームと同じなため、知識がある。レッドアイというスキルもある。なら、両親が生きていても、恐らく軍に行っていた。
自分が強くなることが楽しいのは、ファンタジーでも同じだろう。それによく考えたらファンタジー世界の冒険者だって危険って意味では同じじゃないか。
やはり、最初から軍学校でエリートコースに乗った方が安泰だ。エンドさえ倒せればあとは出世して安泰の後方勤務なんていいだろう。
私は復讐してやりきった目的を失ったみたいなタイプでは無いのだ。
人生計画ができた所で、第1歩目だ。
さぁ、軍学校だ。玄関で気合いを入れ、身だしなみを整える。
軍学校は制服だ。男子生徒は青をベースにした迷彩服。女子生徒は赤をベースにした迷彩服だ。下は短パンとストッキングを履いている。
同じ敷地内であるため、正規軍と学生は服装で直ぐに分かるようになっている。
「リリちゃん、待ってー!」
「シア!早くー!」
ここは昨日から泊まっている軍学校の寮、風呂トイレ別、2段ベッドが設置されたワンルームだ。1Kって言うんだっけ?とりあえず、ここに決してザック・フォーデン家ではない。
ではなぜ、シアがいるのかと言うと、シアも軍学校に入学するからだ。
なんとシアは魔術師適正があったのだ。シアの魔法は氷だった。まだ1cmほどの氷の礫を打ち出すくらい。飛距離は10mほどだろうか。
私が水で蛇口から出すようにチョロチョロ流すことしか出来なかったが、シアはランク2の魔石で打ち出せる。
…羨ましい
ちなみに、水の魔術師適正があれば水鉄砲のように出せるらしい。
……羨ましい
そのおかげでノーステリア軍学校に入学となったのだ。
私に感化され、シアたっての希望で適正検査前から魔石で試したら出来たのだ。
ザックさん達もめちゃめちゃびっくりしてた。
「いよいよ今日からだね!」
「うん、頑張ろうね」
元気なシアはワクワクが顔に出ていた。
寮から対して離れていない所にある軍学校に到着する。同じ敷地なのだが、広いためそれなりに歩く羽目になった。
校内に入ると初日ということで<1年生はこちら>と書かれた看板がある。途中見た上級者はがっしりとした体つきをしており、制服を来ていなければ生徒に見えない人もいた。
「さっきの人凄いデカかったね」
「うん、9年生かな?」
軍学校は7歳から15歳までの9年間だ。その後は各軍に配置され正規軍として活動する流れとなる。
おっと、1年生の教室は入口に近い位置でもうついてしまった。
中には既に数名いるようだ
ガラガラッ
今、教室には私達以外だと男子1人と女子1人いる。
「お!今度も女子か!今年は何人入学したんだろうな」
入室するなり、赤髪の短髪をした少年が話しかけてきた。
「聞いてないけど、机は12個あるわね」
教室内は日本の一般的な形と一緒だ。黒板があり、4列で3つ机が置かれている。
教室自体はそれなりの広さなので、少しスカスカしている気がする。
「なるほど!それって多いのかな?」
「どうだろうね?上級生の人数が分からないから…」
「そっかー、あ!俺はハーヴィン・コッドだ!」
ハーヴィンはその髪に負けず劣らずの明る男子って感じだな。
「私はリリーナ・ランドルフで…」
「わ、私はシア・フォーデン…です」
相変わらず人見知りではあるが、シアも頑張っている。いい子である。
頑張り屋さんだし、茶色の肩より伸ばした髪は艶があり、顔も可愛い。
シアはどう見てもモテるであろう。
「我がやってきたぞ!」
急に声がして振り返ると、金髪で耳までかかったマッシュヘアーだったか?の口調通り傲慢そうなガキが入ってきた。
みんな見ているがピントきていない。誰だろうと首を傾げていた。私も同じだ。
「イーノスさん、イーノスさん、みんなわかってないっスよ」
「なに!このイーノス・ストゥーキーを知らないだと!
ならば覚えておけ!我が最強になる男!ストゥーキー家の長男、イーノスだ!」