75.5年ぶり
朝食を一緒に食べようとしたらシアがまだ戻ってきていなかった。呼びに行くと何やらフランクさんと話している。何かシアは真面目な表情だ。
「おはよーフランクさん。シアご飯食べるよー。フランクさんと話してたの?」
「おはようリーダー。いやな、シアちゃんがうちの娘の後輩だったんだよ!」
「えッ?フランクさん娘いたの??」
ジッとフランクさんの顔を見る。ふーん、この顔でねー。
「おい、なんか失礼なこと考えてないか?」
「言ってないからセーフですね♪」
「それはほとんど言ってんだよ。ってか、リーダーには娘のこと言ってなかったか?」
「初耳なんですけどー。シアの先輩って私も知ってるんじゃ?名前は?」
「メリアってんだ!」
「おーい!知ってるじゃんかよ!クウィントンで一緒の班だよ!」
「何ッ!?メリアがクウィントンにいたのか!?」
「あッ、フランクさん大丈夫ですよ。メリアさんは無事にノーステリアに帰還しています。お父さんに会いたいと言ってましたよ」
「そ、そうか。なら良かったんだ」
「あの頃から帰還出来てないのは、皆さんの方です」
「あー、ハハハ。そりゃ確かに」
悲しげなシアの顔を見て、私もフランクさんも目が会い、苦笑いだ。ノウレアを放棄することもできず、ここで5年戦うしかなかったからね。
話題を変えなきゃ。あ、朝ごはんに呼ぶところだった、ん?……
「そうだ、リーダーなにかシアちゃんに用があったんじゃないか?」
私の左目が動き出した敵を補足する。個ではなく集団の動きだ。
「あれ?どうしたのシアちゃん?」
私の顔を覗き込んできたシアに意識を戻す。
「あ、ごめんごめん。敵が動き出したみたい。一旦、司令室に戻るよ」
私はそう言って、来た道を戻る。
南東の敵キャンプ地の動きを見ながらみんなを招集するのだ。今日の敵軍の動きは統制が取れ、動きが早い。指揮官を倒した混乱はもう無さそうだ。
至急ノウレア軍の幹部を集めた。大体いつものメンバーである。
「と、言うことで敵が統率された動きをしてますが、攻めてくるようにも見えないんですよね」
「んー?敵は包囲維持に方針を変えたってこと?」
「どうでしょう、そこは、偵察班の回答待ちですね」
私の能力だと敵の大まかな動きは分かるけど、流石に遠いので攻めてく時のように大きく動けば分かるけど、何をしているかははっきりしない。そこは肉眼で見てもらう必要がどうしても必要なのだ。
「わかった。リリーナに従おう」
ウンウンと頷いてるフリードさん。どうしよう、昨日から私に対してなんでも肯定するイエスマンになっている気がする。
「……ここでの階級トップはフリードさんですよー」
「俺はリリーナに従おう」
「……いいんですか?これで?」
フリードさんはもうダメそうなので、ショーンさんに振ってみる。
「ハハッ、いいんじゃないか?階級的には問題かもしれんがな!」
「そこが気になって仕方がないですがね……」
ショーンさんは笑っている。まぁ、ショーンさんはその辺ちゃんとしてそうだから、違うと思えば言ってくるだろう。
「俺の指示の元で、軍が動くことは何も問題はないぞ!俺がリリーナの意見を聞いてるだけだ!」
「私が軍法会議にかけられたら頼みますよ?………私はやりやすいのでこの際徹底的にやらせて貰いますよ!責任は全部フリードさんで!!」
変にぶつかって来られるよりはいい。いちいち報告と確認で止まるより、レッドアイの情報で動きやすいのは助かる部分だ。
「よし!分かった!」
ウンウンしてるフリードさんは置いておき、話を進める。
「そういえば、長距離通信機を置いて来てるんですよね。回収したいところですね」
フリードさん達は敵軍奥に長距離通信機を置いてきてしまっているとのことだ。
夜襲を仕掛けて戻る算段だったところで、私達と遭遇し、こっちに来ているためしょうがない。
ノウレアの設備は既にぶっ壊れているので、私も本国と通信するって言う初歩的な話がすっかり頭から離れていた。
「明日の夜にでも少数で取りに行きますか?」
「そうだな、補足されないように少数で…」
そんな話をしているとキースさんに連絡が入る。見に行って貰った偵察班だ。
「今、リーダー達にも聞こえるようにした!話していいぞ!」
キースさんがスピーカーにしたようで、全員に聞こえるように切り替わる。
「報告します!敵兵は撤収準備をしていたようです。物資を積み込んでノード方面に向かい始めました!」
「おぉ!」「押し返したか!!」
籠城側が有利とはいえ、圧倒的な戦力差を押し返したのだ。皆から喜びの声が上がる。
しかし、ノード方面か。ノウレアが孤立しているのは変わらないか。
「緊急です!正体不明の集団が南方面からこちらに向かって来ます!」
ッ!?
なんだそれ?
私は南の方向を向く。レッドアイにはここ数日戦っていたルンドバード軍と思しき集団のみ。ほかは何も映らない。ただ遠すぎるだけなのか、敵意がないのか。それは分からない。
「その集団の規模は!?」
「まだ遠く正確には分かりませんが、既に車両が10台以上は確認出来ます!」
「リリーナ、レッドアイにはどう映ってる?」
「まだ見えません……、ひとまず敵軍想定で南門で迎撃準備!!私は先に南門にいく!
フリードさん、あとお願いします!
シアは狙撃装備で一緒に!」
「承知した」
「了解!」
私は司令室を飛び出して南門へ走る。必要とあればシアに遠距離狙撃してもらう。
レッドアイの仕分けは正確だ。敵と判断された人は漏れなく赤くハイライトされる。
そして、敵かどうか、仕分ける基準は私の思考と連動すると思う。軍学校の演習ではクラスメイトだろうと見えていた。校庭のベンチで練習してた時は学校にいる人が全員赤くハイライトされていた。
だから、私の認識、状況次第で仕分ける基準は変わる。
基準は変わるけどその仕分ける相手を私が知らなくても問題ないのだ。なんとも謎能力。
心変わりして……なんてことがあるのかもしれないけど、今のところないし、実験も出来ないのでそこは仕方がないだろう。
索敵には使える。むしろ索敵にしか使えないとも言う。
だが、FPSにおいて敵の位置が常に分かるのはどれだけ強いことか、やったことある人なら分かるだろう。
敵なら合流するのかもしれない。でも味方だったら?ルンドバード軍とかち合うのではないか?
南門に着くと土煙が舞い上がっているのが見える。望遠鏡を使って視界に入れても赤くハイライトされない。ルンドバード軍の奥に見える集団はハイライトされない。
5年振りの援軍だ。だが、その味方は今にもルンドバード軍と正面からぶつかる。今は互いに死角になっているだけだ。
アレはまずい……
ルンドバード軍は未だ3000人規模の軍だ。対してあの援軍はいいとこ100人規模、車両が多めだとしたら、もっと少ない。このままぶつかるのはまずい!!
私は無線のスイッチを押して、ノウレア軍に呼びかける。
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