71.油断
「敵は攻めてこようとしてますね」
私は敵軍が二つに分かれ、1つが南へ軍を回しているのを確認する。
「皆さんの武器を教えてください」
まずはシア達の武器を知らなきゃ配置も出来ない。
「俺とシアは今【ケントロ】を使っている」
率先してフリードさんが報告してくる。2人ともスナイパーね。フリードさんは指揮官として経験があるし、シアも軍学校で色々経験しているからある程度指揮は可能か。なら、今回は任せても大丈夫そうだ。
「俺は【パラサ】だ」
ショーンさんはサブマシンガンね。グリップを付けて持ちやすくし、折り畳み型のストックも付けている。ずっと愛用してそうだ。
「私はこれ!」
ドロシーさんが見せてくれたのはアサルトライフル【アロ】。【レックス】など他のアサルトライフルよりも銃身が短く、取り回しの良いアサルトライフルだ。これならこの後の戦闘も大丈夫だろう。
「了解です。フリードさんとシアは城壁上から狙撃して援護をしてください」
「承知した」
「了解!だけどリリちゃん。少し弾薬が心元ないかも……」
おずおずと話すシア。
「ふふふ、なぜ私達が補給もなくやって来れたのか。その謎に迫る時が来たようだ」
私はもったいぶったようにシアに説明する。
「なんと!先生の血統スキルは【弾薬補給】だったのです!」
「おぉー!!」
シアは律儀に拍手してくれる。いい子やー。
「いや、リリーナ落ち目の能力だぞ。そんなに持ち上げるな」
先生がやれやれといった様子で割り込んでくる。
「何言ってるんですか。先生の能力がなきゃ私達は抵抗も出来ずに死んでます。大事な能力ですよ」
先生の顔は浮かない。
先生の能力弾薬補給は、弾薬を魔力を使って生成することが出来る能力だ。
近年は弾薬生成のレガシーアイテムの登場で弾薬の生産体制は盤石であり、安価で大量生産されている。弾薬はいくらでも補給出来る体制になったのだ。
昔から重宝されていた弾薬を創り出す能力は、このレガシーアイテムの登場を境に、下に見られるようになり、いつの間にかレイン家を見下す者が増えたのだ。
ウジウジする必要はないんだから、シャキッとすればいいのに。仕方がない。顔はちょっと遠い……私は先生の胸を引っぱたく。
「いたッ!?」
下を向いていた先生はびっくりして、胸を抑え後ずさる。
「ほらッ!集中してください!私に簡単にやられてますよ!先生の能力がないと、シアもフリードさんも援護出来ないんですよ!必要ないことで落ち込まないでください」
「お、す、すまん……」
(私が躱しきれなかった。こんなに強くなったリリーナが言ってくれてるのに、先生の私がいつまでもクヨクヨしていられないな)
軍学校の頃よりも、自分を出してくれるようになった先生は、こんな弱音も吐くようになった。私としては仲良くなった気がして嬉しいが、この件はなんにも卑下する必要なんてない。気を取り直してくれたようだ。私がそんなこと言った奴は潰しますから!
「じゃ、先生に弾薬は任せます!今回は私も下に降ります。フリードさんとシアが上から指示を出してください。ショーンさんとドロシーさんは部隊を分けるので彼らを率いて一緒に攻め込みますよ!」
「お、おう!」「う、うんッ!」
リリーナが背を向けたタイミングで2人はこっそり話だす。
「ショーンさん、さっきの見えました?」
「……一応」
「私、見えなかったんですけど!?」
「俺もこの距離だから見えただけだ」
「……おっぱいの揺れを?」
「……真面目な話をしてたと思ったのだが?」
「すいませーん。でも、これは彼女達頼りになりますね」
「全く悪いと思ってねぇな。まぁ、言いたいことは分かるけどな」
(リリーナは敵がすぐそこに居ても変わらず、ニコニコ楽しそうに笑ってる。今のリリーナは年相応の女の子だが、昨日とギャップありすぎだろ!?)
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「くそ!?なぜ昨日確保したはずの南門の守備兵がいないのだ!使えん奴らめ!」
ジェイレンは南門が見える位置まで部隊と共に移動していた。
「急ぎ南門を突破するんだ!進め!」
ジェイレン軍は塹壕を散開しながら南門へ進む。双眼鏡を使い南門の状況を自身で直接確認したジェイレンは各部隊に副官に指示をだす。
「南門を突破次第、市街地は土魔導師で確認しながら進め!」
「はっ!」
「いいか、奴らはずる賢い。どんなブービートラップが仕掛けられているか分からん。市街地は焦ってs……」
副官に激を飛ばしていたジェイレンの頭に風穴が開く。
「…ッ!?tッ…」
副官も糸の切れたようにその場に倒れる。
ノウレア攻防戦2日目の朝、ルンドバード軍は開戦早々に攻撃部隊の指揮官を失った。
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「おぉー、ナイッスゥー!」
シアが城壁の上から敵の指揮官を撃ち抜いた。私の目に赤くハイライトされていた指揮官が色を失う。
続け様におそらく副官と思われる者がフリードさんに撃ち抜かれる。
「腕を上げたね」
「んふふ、ありがとっ」
屈んでいるシアの頭をポンポンするとシアはご機嫌だ。尻尾があればきっとブンブン左右に揺れているに違いない。
シアは犬のようだな。大きいからきっとゴールデンとかラブラドールかな?
「それじゃ、今度は私の番」
私は気持ちを更に切り替える。私は私の大切な人を護る。それでどれだけ、敵を殺すことになったとしても……
「行ってくる」
「うん!行ってらっしゃい!」
アサルトライフル【アロ】≒M4カービン
サブマシンガン【パラサ】≒MP5
スナイパーライフル【ケントロ】≒SVD_ドラグノフ
見た目などはこちらのイメージで。但し、あくまでも性能はゲーム〖Hero of War 虹色の戦争〗を元となっており、実銃とは必ずしも同じではありません。
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