6.これから
私は考える。
これからの事...
あいにくと、私はただの5歳児では無い。日本で25年間の記憶があり、そしてこの世界がFPSゲーム〖Hero of War 虹色の戦争〗と同じことを知っている。
ただの子供であったなら、両親を亡くし泣いて、泣いて、泣きじゃくっていただろう。
いや、そもそも、亡くなったことを理解出来ていたかが分からない。また会えると思ってたいたかもしれない。
でも、私は理解している。目の前で見た。2人が撃たれる所を。
それは私の知っているエンディングと違った。そもそも、私という存在はゲームにはいなかったはず。
ストーリーモードを全部覚えている訳じゃない。むしろ覚えてないことのが多い。
でも、エンディングが違うことは分かる。
私が転生したことで内容が変わったのだろうか。ならなんで私は転生したんだろうか。
……考えても分からない。
でも、これは夢じゃないんだ。
私はこの世界で生きていくしかないんだ。
だったら…
仇をうち、好きなように生きて、私が思い描く未来へ、どこまでもやってやる。
復讐だけに囚われるなんてしない。全て私のしたいようにする。
ストーリーなんて覚えていないし、登場しないんだかんだから、いつ死ぬのかも分からない。
そう、前世と同じ。未来は分からない。
だから...........全力で生きてやるよ。
_____________
ガラッ!
「おぉ、起きてたか」
ノーステリア基地の医療棟の一室。リリーはここで治療を受け1泊している。リリーの足の傷は直ぐにクレアが応急処置をしたこともあり、直ぐに治ることだろう。
しかし、心の方はどうか……
親の死を間近で見てしまった。リリーが頭が良いことはわかってるがそれでもだ。
「えぇ、ザックさん、おはよう。ずっといてくれたの?」
この部屋ある椅子には俺の上着が掛けられており、誰か人が居たことは明白だった。だが……
「あ…あぁ、おはようリリー。ちょっと電話と売店まで行ってたんだ」
昨夜妻であるリサには電話で伝えていたが、改めてリサと娘のシアの分の入場許可が発行されたことを電話していた。ついでに朝飯も買ってきた所だった。
「ありがとう、凄いね。もう足の痛みは全然ないよ」
「そ、そうか。それは良かった。緊急回復薬を使えなくてすまんな。あれは15歳以上じゃなきゃ使えなくてな。それでも、ここの治療は最先端だからな!」
「(そうか、ゲームのあれはそういう感じなんだ……)なるほど、もっと勉強しなきゃだね」
前半はよく聞こえなかったが、なんか、リリーが冷静過ぎる。両親が死んだことを理解出来てないのか?
「あ、あのな…リリーの父さん母さんのことなんだけどな……」
「あの状況じゃさすがに父さんも母さんも助からないことはわかるよ。そうだ、ザックさんも助けてくれてありがとう」
っ!?
「そ、そうか…いや、いいんだ。」
リリーは頭が良い。とても5歳とは思えないとは思っていたがここまで…
シアがいるから余計にそう思う。
娘と同じ年齢なのに既に覚悟の決まった兵士の顔をしていた。
「そ、それで、これからなんだけどな。リリー、うちで一緒に暮らさないか?」
「え?」
「隊ちょ、リリーの父さんも母さんも親類がいないんだ。お前は大人びているが、まだ5歳。通常は孤児院に行くことになる……」
「そっか、それもそうだね…いいよ。
ねぇ、ザックさん。軍に、父さんやザックさんと同じような部隊になりたいんだけど、どうすればいい?」
か、軽いな。
「えっと、一般的には軍の入隊試験で合格して、それから特務部隊にスカウトされるのが普通だ」
「いくつから入隊試験を受けれるの?」
「確か18歳からだな。合格者は限られるが軍学校の場合は7歳から学んで、まぁ、エリートコースだな」
「軍学校か…いいね、それがいい。ザックさん、軍学校の試験を受けたい」
既に長官から誘うように言われていたが、俺から話す前にこんなに乗り気だとは、なんとも複雑だ。
レッドアイを使いこなせる人物が軍に入ればかなりの戦力なのは間違いない。
だが赤ちゃんの頃から見ている、元より娘の様な子に危険を犯して欲しくないのが親心だ。
「本当にいいのか?軍だぞ?……死ぬかもしれない、危険なんだぞ?よく考えてから」
「よく考えた結果だよ。私は…もう他の生き方は出来ないと思う。
絶対に後悔しちゃうから。知ってるのにやらなかったら…だから、私は軍にいく。行くからにはエリートコースを目指すよ!」
「そうか…
実は、長官からリリーが良ければ軍学校に入らないかと声がかかっているんだ」
「長官から?まぁ、私には好都合だけど、どうして!?」
「リリー、壁の向こうにいるはずの人を見た事はあるか?隊長と同じ能力、レッドアイを発動していたと思うんだが…」
「………………、あ!うん、見えてた。言われるまで忘れてたよ」
「そ、そうか…
まぁ、その能力を買われてな。リリーのそれは血統能力と呼ばれる能力なんだ。魔術師と同じく持ってる奴は少ないし、文字通り遺伝によるものが大きいんだよ」
「なるほど、これはそうゆう感じなんだね…」
ガラガラガラッ!
「リリちゃん!!」
「シアちゃん?」
シアは病室に入るなり、リリーの所にダッシュして抱きつく。
「こら!シア!リリーは怪我してるんだぞ!!」
「あ!!ごめんなさい!!」
慌てて少し離れるシア。
「大丈夫だよ、もう全然痛くないし、当たってないから」
「そ、そう?でも、リリちゃん大変だったって!」
シアは本当にリリーが心配だったんだろう。誕生日会で魔法を見せて貰ってから、いっつもリリーの話をしている。
「リリー、大丈夫かい?」
「リサさん本当に大丈夫ですよ!このとおりです。」
「そうかい?なにか食べたい物とかあったら言ってね」
「あ、そういえばお腹は空きましたね。この病室ってご飯はどうなるんです?」
「朝の時間は終わっちまったからな。さっき俺が買ってきたやつで良ければ食べてくれ!魔力欠乏もあったからしっかり食べたほうがいい」
「ありがとうございます」
「リサ、ちょっと頼むわ。リリーが目覚めたこと先生に話してくる」
「えぇ、じゃあ、リリーちゃんちょっと先にこれ食べててね。こっちは温めたほうが美味しいわ。
こら、シアずっとくっついてたらリリーちゃんが食べれないでしょ!」
「だって〜」
「ごめんね、遠慮しないで怒って構わないからね」
「はは、大丈夫ですよ」
俺は妻達の会話を聞きながら病室の外に出る。
あまりに普通過ぎる。いや、普通じゃないのか……
既に両親の死を受け入れている。
昨日の激昂したリリーナの方が子供っぽくて、親近感が湧く。
さっきの覚悟の決まった顔…、任務で仲間を失った時の隊長とそっくりだった。
思い出しただけで………寒気が…
あの子がこれからなにをするのか恐ろしい反面、頼もしくも感じる。まるで隊長のようで…
軍にくるならいつか一緒に…
「隊長すいません…俺が全力で見守りますから…」
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