67.再会
「ッ!」
リリーナに何か言おうとしたシアを手で制す。
「まだだよ」
リリーナは優しくシアに諭す。
「指揮官とネームドの討伐を確認。ノウレアに帰還します。みんな付いてきて下さい」
「了解した」「お、おう」
フリードとショーンはクレアやシンディを知っている。しかし、その場を支配しているのは完全にリリーナであることに戸惑いながらも同意する。
「シア、【オヴィ】のサプレッサーはあるか?」
「あ、あります」
シンディがシアに確認し、もらい受ける。シンディの本来の形、刀とハンドガン、オヴィのスタイルだ。補給のほぼ無いノウレアはサプレッサーが無く、思うよに発砲出来ていなかった。
リリーナを先頭に天幕を出ると所々で火の手が上がっていた。もちろんリリーナ達の仕業である。
「こっちです」
リリーナに誘導されながら敵陣を進む。時折、敵兵を静かに倒しながら…
フリードはその様子をジッと見ていた。
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「はぁはぁ……」
天幕から全力疾走で脱出出来たエメットは燃え上がる火の手を見て、敗戦を悟る。
ロベルト少将がやられ、残ったライトニング殿も時間の問題だろう。相手が悪すぎる……
あの眼帯の少女。あれがノウレアの指揮官……
見た目は少女だが俺のスキル告げていた。
アレは……やばい……
俺の血統スキル【危機感知】は俺自身への危険を察知する。見た瞬間に俺の全身が逃げろと叫んでいたのだ。
兵士たちの噂には誇張が含まれていると思っていたが、隻眼の死神とはよく言ったものだ。まだ鳥肌が止まらない。
天幕から逃げる時、全員動きが止まっていたはずなのに、彼女だけは俺に銃口を向けていた。あのまま撃たれたら終わりだっただろう。発砲音が上がるのを避けてくれたおかげで命拾いした。
もう、俺は会いたくない。
部隊長エメット。彼はルンドバード軍の中でもかなり優秀な軍人である。彼の闘争心は折れてしまっていた。
だが、そんな彼を通じて、ルンドバード連邦国もまた、リリーナ・ランドルフのことを認識した戦いでもあったのだった。
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「リーダー!無事か!良かった」
「リーダー!おかえり!」「リリーナちゃん、おかえり!」
「うん、ただいまー!」
「ワイリーしっかり仕事してきたか!?」「ちゃんとやったよ!」
リリーナ達が帰還し、ノウレアの住民達が労っている。既に夜も遅く日付が変わっているはずだが、かなりの人々が起きていた。
そんな人混み抜けてノウレアの軍部支所へと向かう。
「リーダー!どうでしたか?」
すぐに支所に入ると髭がしっかりしたガタイの良い男が近付いてくる。彼がリリーナ達を抜いた最上位者、キース少佐である。
「作戦は成功です。敵指揮官及びネームドを処理しました。明日はまともに責めて来れないでしょう」
「流石ですね。皆に周知して参ります」
「ありがとうございます。あと、こちらの4人は援軍です。この後、会議を開きますのでキースさんも来てくださいね」
「承知しました!では急ぎます!」
顔に似合わず礼儀正しいキースは、この朗報を広めるべく動き出す。リリーナ達は先程、天幕に居合わせたメンバーで会議室へはいる。
「リリちゃん!!リリち゛ゃ゛ぁん。あ゛い゛だがっだよぉ゛ぉぉ〜」
もう気持ちを抑えられなくなった、シアはリリーナに抱きつく。その顔は涙と鼻水でくしゃくしゃになっている。
「よしよし、久しぶりだね」
「も゛う、会えないがと゛思った」
「必ず戻るって言ったでしょ!?まぁ、シアが迎えに来た感じかな?」
抱き締めながらそう言って、シアの頭をなでなでする。しかしながら、身長差はシアが圧倒的に大きいため、見栄えは違和感が凄い。
「…」「…」
クレアとフリードは涙を浮かべながらも、言葉はなかった。言葉がなくても問題ない。そんな2人の関係が分かるように無言で抱き合い。お互いの無事を確認してゆっくりと離れる。長年一緒にいる夫婦の信頼関係がそこにはあった。
「ワイリー、全くあんたは心配かけて!」
ドロシーはワイリーの背中をバシバシと叩く。言葉とは裏腹に顔は安堵の表情だ。
「いで!いって!叔母さん」
「誰がおばさんよ!!ちゃんとお姉ちゃんと言うように言ってるでしょ!」
ドロシーの叩く強さが上がり、鈍い音が聞こえる。傍目にも痛そうなレベルに変わり、ドロシーの表情は安堵から般若へと変わっていた。
「ちょ!?待って!!ほんとに痛いから!」
それぞれが各々の形で再会を喜んでいた。
「先生もお久しぶりです」
「あぁ、久しぶり。シアは大きくなったな」
「はい、いつの間にか……」
「おかしい……、私も大きくなったはずなのに。前より見上げる気がする……」
「リリちゃんはそのままがいいのに」
「なんだとぉ!?おっきいからそんなことが言えるんだ!」
(いつものリリちゃんだ。良かった)
「先生はお変わりないようで」
「まぁな。シアもかなり腕を上げたな」
「でも、さっき逃がしちゃって……」
シアは先程の戦闘を振り返り、俯く。
「あの軍人…恐らくかなりの腕前だ。卑下する必要はない」
「そう…でフぎゅッ!?」
「ほらほらー、せっかくまた会えたのに、なに落ち込んでるの?」
シアはリリーナにほっぺをグリグリされながら、顔を上げさせられる。まだ先程の涙でほんのり赤い顔。
「私、今度はリリちゃんの力になれる?」
「え?」
(そっか、ずっと気にしてたんだね)
「シア、大丈夫だよ。シアは強くなってる。これからは一緒に頑張ろう。でも無茶しちゃダメだからね!シアは家族なんだから、心配しちゃうよ!」
「うん!」
パァと笑顔になるシアは、また直ぐにちょっと怒った表情をしてリリーナに話す。
「でも私もリリちゃんのことも心配するんだからね」
(あ〜…………私としては生きるためにやってたつもりだったんだけど、そう見えるか……)
「ごめん…そうだね」
(無茶に見えないように頑張るから……)
「シアちゃん、あんな表情するのね」
「家族、だからな…」
ドロシーとショーンがその様子を見て微笑んでいた。
久しぶりの再会に会話が弾んでいた所で、キース少佐が会議室に帰ってくる。
「じゃあ、今後に向けて会議を始めようか」
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