66.天幕決戦
ライトニングが特殊兵装、レールガンを掴んだ瞬間から、帯電しバチバチと音をたてる。既に発射の準備をしている証拠だった。レールガンを構えながら振り返る。
「終わりだァ!!」
「はぁぁあ!!」
そこにフリードが踏み込んでレールガンを蹴り飛ばした。狙いをそれたレールガンはあさっての方向に発射される。水平方向であれば壁を無視して貫通するほどの威力を持つレールガンは、間一髪のところで天幕に穴を開けるだけに留まる。
「いっちょ前に、耐性があったようだな……」
「お前の名前もそろそろ返上する時だ」
(とは言ったものの、こいつの出力は俺でも何度も耐えられないな)
同じ雷魔導師であるフリードをもってしても、ネームドであるライトニングの雷魔法は脅威であった。
フリードは腰のナイフを振りかざすが、再びスパークがフリードのナイフを襲う。あまりの衝撃にフリードはナイフを落としてしまった。
(こいつ、雷をナイフに誘導しやがった。手馴れてやがる)
仕方がなく、フリードは肉弾戦を仕掛ける。対するライトニングもレールガンを蹴り飛ばされてしまったため、肉弾戦に応じた。両者共に雷を帯電したままである。
2人の雷魔導師以外は痺れから復帰したのはほぼ同時だった。
しかし、内心焦っているのはシア達イエロー部隊であった。
(さっきのスパーク音と発砲音、急がないと敵がくる)
敵に囲われたこの天幕、バレずに指揮官達を処理したかったが、ネームドの壁がそれを阻んだのだ。最初のスパークで武器を落としてしまっているため、シアはハンドガンを拾おうとするが、部隊長エメットがシアの顔面を蹴り飛ばそうする。寸前で躱すシアだがハンドガンは拾えなかった。
仕方がなくエメットと対峙する。シアの鋭い蹴りがエメットに迫る。
シアの対人格闘スキルは非常に高い。特務機関配属時の査定ではA判定を受けた程である。元々高いポテンシャルにクウィントン以降より一層の努力を積んでいる。身長に女性としてのハンデはなく、身体も柔らかい。その長い手足はしなり、破壊力を秘めていた。
が、エメットはこれを受け止める。ガードして反撃とばかりに打ち返してくる。2人の実力は拮抗しており、一進一退の攻防が続く。
(この人、強いッ!?)
(こいつ、ほんとに女か?ガードした腕が痺れる威力だ)
「く...ゴホッ………」
最初に決着が着いたのはショーンだった。ロベルトが膝をつく。ショーンのナイフで傷を負ったのだ。目は充血し、ショーンを睨みつけているが、身体はもう動かない。ロベルトは睨みつけたまま事切れる。
「少将!!」
ロベルトが倒れたことで、動揺した瞬間をドロシーは見逃さない。ドロシーは副官の股間を蹴り上げると、首に腕を回して閉める。暴れる副官だが、完璧に決まったドロシーの腕は振り払うことが出来ず、そのまま窒息する。
天幕を揺らす程の電撃が迸る。
「うらァ!!」
フリードとライトニングの戦いは常に放電され、近づくことが出来る状態ではなかった。だが、フリードが少しづつ押され始め防戦一方になってきている。
そんな中イエロー部隊にとって最悪の事態となる。敵の増援である。
「中将!?異常ないでしょうか!?失礼します!!」
警備担当であろう兵士が入ってくる。その後ろには5人の兵士。
「なっ!?」
「まずいッ!」
警笛を手に取る敵兵。イエロー部隊に動揺が走る。警笛を鳴らされれば異常がルンドバード兵全体に共有されてしまう。それを止めたくても誰も天幕の入口には間に合う距離ではなかった。
しかし、敵兵が咥えた警笛はそのまま音を発さない。そればかりか、敵兵は前のめりに受け身も取らずに倒れる。その後ろから
「シア?」「リリちゃん!?」
敵兵の後頭部に愛用のハンドガン【オズ】変態カスタムのナイフを突き刺したリリーナが現れた。
さらにリリーナの後ろから、シンディ、クレア、ワイリーが続いた。
「クレア!?」「フリード!?」
「え?ワイリー??」「げ!?叔母さん!?」
各々が驚きの声を上げ、戦場に空白の時が訪れる。
「……あ、ショーンさんご無沙汰しております」
「お、おう、久しぶりだな」
手持ち無沙汰なシンディが挨拶し、ショーンが答える。
「……」その隙を見計らってエメットは逃げ出した。
「あッ!?」唐突な再開に停止してしまったシアは取り逃してしまう。
「………なんだてめぇら!?」
ライトニングも復帰し、こちらにガンを飛ばす。
「後で!」
リリーナが叫び、やるべき事を。全員の意識を戻って来させる。リリーナはすぐに残る唯一の敵、ライトニングへと踏み込んでいった。
「はん?小娘が!」
ライトニングは向かってくるリリーナへ拳を合わせようとするが、寸前でさらに低く踏み、加速するリリーナを捉えることが出来ない。
「い゛!?」
ライトニングは背後に回られ両足の腱を切断される。当然ながら立っていられないが、それでも膝立ちになりながらリリーナに向けてライトニングは放電を、おのれの全力で放とうと溜める。
だが、それは叶わない。何故ならライトニングの後ろで既に刀を振り終えているシンディ・レインがいるからだ。
ライトニングは自分の頭が身体から落ちたことを理解出来ないまま死亡した。
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