65.特殊兵装
〖これ、みんな土魔導師ならめっちゃ掘れるじゃん!?〗
月光時代のチームメイトのそんな発言を思い出す。何気ない一言から始まったこの作戦。ゲームでは土魔導師1人でちょっとした落とし穴を作り出せた。それをチーム全員が土魔導師となれば、広い通路も完全に落とし穴にすることができる。
ノウレアでは土魔導師であるクレアさんにコツコツ地中に空間を造ってもらった。地下巨大空間には一定間隔で土柱を設置して普段の強度は確保していたが、その柱にセットされた爆弾を爆発させた。某最強のスタジオ作品の毒の森のように地下に巨大な空間があったのだ。
その空間にルンドバード軍は地上の街と共に20m程落下する。阿鼻叫喚の叫びと共に、巨大な地下空間へと落ち、敵兵は為す術なく瓦礫に押し潰される。
おそらく、2000人以上飲み込んだ崩落は第1城壁付近と第2城壁付近を分断する。ノウレア軍はその凄まじい罠の効果を第2城壁付近から様子を見ていた。
あれ?みんな作戦が成功して喜ばないのかな?
「ふはは!見ろ人がゴミのようだ!」
私の発言にワイリーもシンディも近くにいたノウレア軍のみんながみんな、ぎょっとして私を見る。その目は驚愕と畏怖にまみれていた。
……………ヤバい。思わず言ってしまったが、みんなそんな感じじゃない!?この状況で言うのはまずかったかも。誰も知らないからツッコミもない……
バ〇スの方が良かったかも……
「……ヴ、ゴホン。こ、これでかなり倒しました。次、行きますよ」
私は南門の方へ向かう。落とし穴はもはや谷と呼ぶべき状態で、外縁区に溝を作っている。街の外側から内側に来るには南門と東門付近に幅5m、距離100m程の通路を通るしかないが、狙遮蔽物はなく、格好の餌食である。
西から北側の外縁区はそのまま残っているが、警戒されているだろうね。それはそれで好都合だけど。
かなりの数倒すことが出来たらから、ルンドバードの勢いは完全に沈黙した。
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「……な………なんだこれは………」
目の前で人が消えた。残ったのは第1城壁にほど近い部分にいた者達だけだ。ライトニングから先程までのニヤついた顔は消え失せる。
エメットも周りの兵士達も、言葉が出てこないようだった。圧倒的優位だと思っていたら、味方が崩落に巻き込まれてしまったのだから無理もない。
その日、ルンドバード軍はそれ以上攻めることなく撤退したのだった。
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日が沈んだだけでなく、ルンドバード軍の士気も沈んでいた。そこに追い討ちをかけるべく動いている集団がいる。
シア、フリード、ドロシー、ショーンのイエロー部隊である。
「今日1戦だけで敵兵かなり減りましたね」
「あぁ、十中八九あの轟音だろうな」
「城壁上は確認できませんでしたからね。一体何が起きたんでしょうね」
「大規模な爆発かなにか分からんが、ルンドバードの奴らをこれだけ減らしたんだ。この混乱に乗じて敵指揮官を潰すぞ!」
「「「はっ」」」
指揮官の者と思われる天幕は、昼のうちに確認していた。射線が通らないため、今回は4人で急襲をかける。さすがと言うべきか、彼等の動きは無駄がなく、的確に巡視する兵を音もなく倒して進む。
危なげなく指揮官の天幕前まで到着してしまった。中の様子を伺うため様子を見る。
「一体なんなのだ、これは……」
ルンドバード軍第7師団、指揮官ロベルト少将の嘆きが聞こえてくる。ロベルトは崩落した外縁区の写真を見ていた。
「北と西側は街が健在ですが、外縁区は今も人が住んでいるとは思えない状態のようです。同じものがあると想定するしかないですよね」
副官も頭が痛そうに見ていた。
「通路を使うしかないか……ライトニング、遮蔽物向こう側まで、アレは届くか?」
「射程ギリギリだが、届くだろう。明日は俺が援護してやる」
「頼むぞ!こっちはもう損害がデカすぎるんだ!」
「大丈夫だ。少数だと舐めてたが、歯ごたえのある奴らの様だからな。俺が潰してやるよ」
「そうもいかないな」
「「ッ!?」」
突如会話に割って入った声に、ロベルトやライトニング、副官と部隊長4名。その天幕にいた全員が天幕入口の方を向く。そこに立っていたのは黒で統一された完全装備の男。フリードである。
「んッ!?」「グッ!?」
突如、ある部隊長は喉を抑え苦しみだし、泡を吹いて倒れる。また別の部隊長は静かに沈む。
視線がフリードに集まったタイミングでシア達3人が天幕を破り攻め込んだのだ。シアとドロシーはサプレッサー付きの銃で、ショーンは毒ナイフで静かに敵を倒す。
しかし、経験豊富なロベルトとライトニング、部隊長エメットはシールドの展開が早く弾かれてしまう。
「チッ…」
ショーンはロベルトに向け、突進する。ショーンの両手には毒のたっぷりついたナイフが握られていた。時を同じくしてライトニングにもフリードが距離を詰める。
フリードの身体が薄く発光し、加速。詰めたフリードの蹴りがライトニングのシールドに負荷を加えるが、ライトニングも薄く発光してフリードの蹴りを受け止めていた。
「お前も雷魔導師か」
「ふん、だったら?」
「雷で俺に勝てる訳ないだろ?」
ライトニングを中心にバチバチッとスパークが迸る。天幕全体に広がる味方事巻き込む電撃に発動したライトニング以外は身体が一時的に痺れて硬直した。
ライトニングはその隙に自身の特殊兵装であるアサルトライフルのような物を手にとる。その銃身は2本のレールのようなものが付いており、他の銃とはひと目で違うことが分かる。ライトニングがグリップを持った瞬間にそのレールが帯電し始める。
これがライトニングの特殊兵装、【レールガン】である。
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