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FPSゲーマーの転生先なんて決まってる!  作者: 栗飯


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52.閑話:ザック・フォーデン

「ぬぁあーー!!!」

俺は机に突っ伏して項垂れる。


「はい!ザックの負けー!」

「クックックッ」

「おーし!ザック秘蔵のボトル持ってきて貰おうか」

「え!?今からっすか?」

「もちろん!バックレさせないからな!家近いからすぐだろ?」


今日はレッド部隊が当直の日。夜も待機していなければならない。空き時間で行ったゲームで負け込んだ。金をかけると軍法会議になるので、各々一番の酒をかけたのだが、まさか俺が負けるなんて……


「分っかりやしたよ!とってきますから」

「おう!行ってこい!!」


しょうがないから取りに帰る。俺の家は割と軍事基地に近いとはいえ面倒だ。2人とも寝てる時間だから静かに取らないとだなぁ……


うん?なんだ?知らない車が家に止まっている。なんだ?しかも2台。


不穏な空気を感じ、車の下にGPS発信機を取り付ける。

俺はハンドガン【ユタ】を取り出す。ハンドガンとしては高威力だが反動がデカい代物だ。

音を立てないように移動して、リビングの窓から様子を伺う。


「ほら、マリー・ファヴァール……今はランドルフだったか?そいつの住所を教えてくれるだけでいい。言ってくれれば、怪我すらなくスムーズに終わる」

「知らない」

「チッ…面倒なことしやがって。おい、早く娘を探してこい」

「はい!」



「ッ!?」

中には椅子に結束バンドで縛られた妻のリサと、武装した男達がいた。中央の男には見覚えがある。

確か【エンド】ってネームドだ。メラリア共和国のネームドがここに?

マリーさんを狙っている。マリーさんは凄腕の研究者だ。以前も狙われて、俺たちレッド部隊はその護衛だった時期もある。それがきっかけで隊長と結婚したんだった。

でもあの時の組織は潰したはずだ。残党から情報が漏れたのか?


「お前達が家族ぐるみの付き合いをしているとの情報は入っている。知っているのは分かってるんださっさと言え」

「知らないって言ってるでしょ」

睨むリサの近くにいた男が、リサの顔を殴る。

「うッ」

あの野郎絶対許さん。どうにか助けないと。敵は10人か……

1人じゃリサを守りながらは厳しいか。隊長達を呼ぼう。俺は静かに携帯を取り出す。


「隊長見つけました!」

ッ!?シアを敵兵が連れてくる。シアは小脇に抱えられ、意識がないのか、脱力していた。

バンッ!

気付いた時には無言でその兵士を撃っていた。怒りで作戦もクソもなかった。


「敵だ!」

そこからはとにかく近かった敵に発砲する。当然撃ち返されるがバリアで防ぐ。隊長に展開はまだ遅いが硬度は一番だと言っていた。

前方に集中したバリアは敵の銃弾を弾く。


敵もバリアを張るが、そこは【ユタ】の高威力のおかげで数発でバリアを突き破り1人倒す。

しかし、こいつらバリアまでの反応が早い。最初の奇襲後にすぐ全員がバリアを張っており、よく訓練された兵士だ。



「囲め!」

敵が短くも面倒な指示をだす。やはり、エンドがリーダーか。

距離を離れると不利だ。敵が誤射が怖くて撃ちにくいようにするため、室内へ踏み出す。

エンドのハンドガンの、銃口がこちらを向けられるため、撃ちながら近付く。

クソッ!こいつの反応が一番早く、想定異常に厄介だ。


しかも、こいつもバリアが硬い。弾かれる!

お互いの距離が縮まり今度は銃口を向けた傍から手で弾かれる。

エンドは流れるように銃を持ってない腕で殴って来るが俺は応戦し、右肘付近で耐える。

今度はバックステップで1歩下がりながら銃口を向けて来るので、俺はバリアを掌の先に部分展開し、エンドの銃をかち上げる。


「チッ……」

「オラァ!!」

銃を近距離から撃つが奴も俺の腕を弾くせいで当たらない。

殴る、蹴る、ジャブは入るが、銃は弾かれる。

グッっ殴られるが、大丈夫だ。ガードして、銃は弾いて反撃する。

「クソッ」

こいつマジで強い、決定打が決まらない。


まずい、時間を掛けすぎてる……


「そこまでだ!!こいつらがどうなってもいいのか!?」


「……」

俺は止まらざる負えなかった。

「ごめんなざい」

リサもシアを敵兵に銃を突きつけられている。リサは


「お前強いな。だがここまでだ。

あと、お前達、動き出しが遅い。働け!」

「「はい」」


「ほら、お前は銃を下ろせ。あんたの娘が死ぬぞ?」

シアは薬でも盛られたのかこの状況でも眠っているようだ。呼吸は安定しているし、命に別状は無さそうだ。……今のところは。


俺は従うしかなかった。

捕まるシアを見て頭に血が登り、咄嗟に制圧しにかかってしまった。相手はネームドもいて一筋縄にはいかないと想像出来たはずなのに。


俺は装備を取られ椅子に座らされて縛られる。


「ほら、手間取らせんなよ。マリー・ランドルフの居場所を吐けばそれでいい。それで娘は無事に帰ってくる」

エンドはシアに銃を突きつける。

「ほら、早く!言わなければ、こちらもやることやらなきゃなんねぇな。それとも、こっちの方がお好みか?」


銃からナイフに変えてシアに向けた。

ソファに寝そべっているシアの左肩がナイフで刺され、血が垂れる。

「やめてー!!」

「ま、待ってくれ!分かったから。やめてくれ!」


「お前達のセリフはそれじゃないな」


エンドはそう言って、さらに突き刺そうとする。


「の、ノーステリア4区、桜通り、北32番だっ!!」

「ふん、それでいい……

お前とお前は残って見張れ。俺たちが確かめにいく、もし違った場合は嫁を殺せ」

「「はっ!」」


ッ!?


「…………ま、待て!!」

出ていこうとするエンドを呼び止める!


「ザック……」

リサが泣き崩れている。すまん。俺が何とかする。


「ノーステリア1区(かえで)通り、北109番だ」


「フッ、ようやく素直になったか?ま、確認はするがな……」

エンドは見張りを2人残して出ていった。先程の住所に向かうのだろう。


……最初の住所は特務機関のこういった場合の住所だ。色々と仕込んである家だった。本当の住所を話すしかなかった。

急いで助けに行かないと。

隊長達は俺が遅いと思って見にこないだろうか?宿直でいるんだから、そう簡単に来ないだろう。


見張りの目を盗み、拘束の解除を試みる。この2人はそこまでではないな。先程のエンドのうごきと比べると大した事はない。

訓練はされているが、一般兵レベルだ。

明らかに油断している。しまいに奴ら、うちの冷蔵庫を確認し始めた。


「ビールはないのか、しけてんなぁ?」

「くくッ!酒も飲めねぇのかこの国の軍人は!」

「おうおう、反抗的な目ぇしてやがる。今は何も出来ねぇ雑魚同然だぞ?

少し立場ってものを教えてやらねぇといけねぇなぁ」


奴は俺の顔面に思い切り拳を振り抜く。俺はそれに合わせて可能な限り跳び、椅子ごとひっくり返った。


「ザック!!」

「アッハッハ!そんなに俺のパンチが強かったかぁ!」


続け様に腹部に蹴りを入れてくる。

甘んじて受ける。腹筋を固めてなるべくダメージは減らしておく。


「うっ」

俺が腹筋を固めたことで衝撃が足に伝わったのか、少し痛そうにしている。


「ま、まぁ、いい。なにか食いもんでもあるか?」

キッチンを確認している味方の方に殴った奴も振り向いて、俺を見ている者が居なくなった。


ぬぅ!

椅子が倒れたことで俺の足と椅子の足を固定していた結束バンドは下からスポンと抜ける。


「この生ハムは美味そうだな」

「おっとぉ!こんなとこにテキーラ隠してたか!?」


自由になったは足で音を立てないように立ち上がり、上半身は拘束されたままなので、椅子の足を敵に向かって思い切りタックルする。


「ンゴッ!?」

ガシャン!!と音を立てて椅子を破壊しながら、1人を倒す。

椅子が壊れたことにより上半身の拘束が1部解放された。右腕だけだが、十分だ。倒した敵の銃を拾いもう1人が銃を向ける前に撃ち殺す。

そのまま倒れたこいつも撃つ。


「はぁはぁ……リサ!シア!大丈夫か!?」

「えぇ!大丈夫、大丈夫」


リサは殴られた頬が赤くなっているが、命に別状はないようだ。シアも眠らされているようだが、外傷はない。


「俺は隊長に連絡する。別部隊が来るまで隣の部屋に、シアを頼む」

「わかったわ」


リサは震えながらも頷く。

話を聞いていたんだ。俺がこれからどこに行くのか分かっているのだろう。怖いのを押し殺し黙っている。


「今度は隊長もいる。すぐに終わらせてくるさ」


コクコクと頷くリサは強いな……

俺は隊長に合わせる顔がない。

隊長には命を助けて貰った事もあるのに、俺は足を引っ張ってばかりだ。

マリーさんやリリーを絶対助けなくちゃならねぇ。全力で隊長の助けになろう。


今回の件が終わってもずっと……


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