40.正体
それは、見上げた全ての空を多い尽くしていた。
日中に空が虹色に輝く。ザックには映像で見たオーロラと同じに見えた。輝きながら揺れるその様は美しく、戦場にいる事を忘れる程の光景に、アルステリア軍は一時、空を見上げていた。
幻想的な光景。
しかし、その効果は絶望的なものだった。
ザック達、レッド部隊は空の光景を無視して突撃、ポールの開けた防壁の穴から乗り込む。あまりの威力に奴らの防衛網が回復する前に国境基地内へ侵入出来た。
「予定通り!3班は2番対空ミサイルを抑えろ!4班は退路の防衛だ!
残りはついてこい!」
「「はッ!」」」
ザックとポールの1班と2班は隣の1番対空ミサイルへと渡り廊下を移動していた。
しかし、流石に敵兵がこちらへと発砲してきて足が鈍ってきていた。
「クソッ!前方に敵兵4!」
「フラグを投げる!急いで向かうぞ!」
ボン!!
ダダダダ!
ザックはアサルトライフル【レックス】を乱射しながら距離を詰める。
「急げ!急げ!」
「よし、渡り廊下クリア!」
「敵増援来ます!」
「わらわらと来やがって!ザック!先にいけ!2班が足止めする!」
「任せた!1班行くぞ!」
「「はいッ!」」
ダンダン!!カランカランッ
銃声が響き、薬莢が床に落ちる。ザックは敵を破り第1対空ミサイルの制御室へと辿り着いていた。
「よし、第1対空ミサイルも確保!
本部!こちらレッド部隊、対空兵器確保!繰り返す!対空兵器確保!!やっちまえ!!」
「ザザッ…レッド…て……い…よ………ザザ」
無線で通信するが、電波が届いていないのか上手く聞こえない。
「ん?届いていたと思ったが?フレッゾ、遠距離無線で連絡を」
「あ、はい!」
さっきまでザックのハンディ無線でも通信出来ていた距離だったが感度が悪いようだった。
通信兵であるフレッゾは背中に背負っていた箱を下ろして、アンテナを伸ばし、遠距離無線機を起動する。
「...せよ!!レッド部隊!!応答してくれ!!」
何やら本部から焦ったような通信が入っていた。
「こちらレッド部隊!本部!どうしたんだ?」
フレッゾは不可解に思いながらも、制圧したことを連絡するため、応答する。
「レッド部隊!!ようやく繋がった!!急いで撤退してくれ!!作戦中止!作戦中止!!」
「は!?今、対空兵器を2つとも確保したんだぞ!急いで援護を!!」
「ッ!?無理だ!!戦闘ヘリが動かない!!車両もだ!!」
「はぁ??」
「は?どうゆう事だ??」
ザックも本部とフレッゾの無線は聞いていた。しかし、意味が理解出来ない。
何故、中止なんだ?と……
「さっきの虹色のオーロラが発生してから、車両が全部動かないんだ!!」
「は?何を言っている!?」
「本当だ!!ヘリが動かないんだ!飛行中だったヘリは墜落した!車両もエンジンが動かない!!全部だ!!」
「は!?ふざけんな!どういうことだよ!!援軍がないと、俺たちは……」
援軍が、本隊が丘の向こうにいる。
今、国境基地にはレッド部隊、各班4人の4班、16人だけ……
対してルンドバード連邦軍は約8000人規模が国境基地にいた。
援軍がなければ、勝ち目などないことは明らかで、フレッゾは血の気が引くのを感じた。
……ザックは本部の無線に1つ、心当たりがあった。虹色のオーロラは知らない。しかし、全ての車両が動かないのは知っている。
「……エーテルノヴァだ」
「え?なんて言いました?」
「エーテルノヴァだよ。魔力が干渉する全てを停止させる兵器だ」
「ま、まさか、あの虹色のやつですか?」
「状況的には恐らく……
ッ!急いで脱出するぞ!」
ザックは慌てて、ハンディで呼びかける。
「レッド部隊総員撤退する!!詳しくは省くが車両が動かず本部からの援軍が来ない!!今はとにかく生きて脱出する!」
他のレッド部隊は全員が意味理解出来なかった。車両が動かないなど、想定してないのだ。
「ポール!爆破矢を使ってくれ」
「おう!」
脱出ロを開くために、矢に能力を付与し、引き絞り、放つ。
狙い違わず敵のいるコンクリートブロックに当たるが、爆発は起きなかった。
「あ?爆発しねぇ!?」
「やっぱりかよ!?魔力が干渉出来なくなってる!!これが原因だ!!魔力無しで脱出するしかねぇ!!」
「はぁぁぁあ!?んな事あんのか!?」
ポールは信じられずもう一度、しっかりと付与して打ち出すが、何も起きなかった。
「ッ!マジで爆発しねぇ!?」
ポールはこれでザックの話を信じるしかなかった。ザックを信じなかったわけではないが、あまりにも想像の外で、理解ができなかったのだ。
1番対空ミサイル設備を捨て、2番へ、最初に開けた大穴の方へ向かう。
すると戦闘ヘリの音が聞こえ、影に隠れる。頭上を超え、クウィントン方向へ向かって、隊列を組んだ戦闘ヘリが飛んで行った。
「なんで動いてる!?」
「おい!動かねぇんじゃねぇのか?」
「俺も分かんねぇよ!!」
全員が焦っていた。
_______________
「な、なにが起きている……」
アルステリア総指揮官アダムズは急速に悪化した状況に驚きを隠せなかった。
先程まで動いていた車両が停止し、離陸した直後だったヘリが全て墜落して、味方を巻き込んだ。
しかし、アダムズは無能な指揮官などではない。すぐに持ち直し、指示を出す。
「急ぎ、レッド部隊に退却するように伝えろ!仕切りなおす!
本隊は状況報告を急げ!」
「「はッ!」」
しかし、あの七色の光が見えてから、全てが狂ってしまった。
「アダムズ中将!レッド部隊と交信繋がりません!!」
「なにッ!?」
アダムズは焦る。
如何に優秀な隊員と言えど。
ネームドだろうと。
戦力差があり過ぎる。援軍も無しに孤立した状態では勝てない。
「何とか呼びかけ続けろ!そこの部隊とは通じているんだろ!?」
「はい!マイヤーズ隊には繋がります!」
「なんなんだ……」
通信障害も起きているのか?
「報告!全車両走行不可!ヘリも含めて全て動きません!電気制御は生きていますが、魔力機関が全て停止しているようです!」
「魔力機関が?駆動系は全滅か?
魔力……っ!?」
アダムズは自身の魔法適正である炎を発生させようと、手を空に掲げ魔力を練り上げる。
しかし、炎は起こらなかった。体内の魔力を動かした感覚も消費した感覚もある。しかし、不発に終わったのだ。
「魔力効果が発揮できない!?」
エーテルノヴァについては超国家機密であり、アダムズ中将であろうと存在を知らない。
しかし、事象から何が起こっているか正確に把握していた。
そして、アダムズの隣には若くして参謀本部の士官となったスティーブン・ウルフ大佐もいるのだ。
「体外に魔力が出ると無効化される形でしょうか。……これは魔力機関は魔石から駆動系に供給されないようですね」
ウルフ大佐は近くの車両のエンジンルームを開けて確認していた。
「アダムズ中将、これはすぐにどうこうできる事象じゃないかと思います。撤退を進言したい所ですが……」
「ぅむ……」
アダムズは逡巡する。いや、ウルフも同じだ。ここでの撤退はレッド部隊を見捨てることを意味する。
「アダムズ中将!レッド部隊!通信出来ました!撤退指示を出しています!」
「よくやった!!」
この散々な状況の中、交信出来たことは朗報だった。
「第1師団レッド部隊撤退の援護を!第2は退路の確保だ!!急げ!!」
部隊が撤退と援護に動き始める。その時、聞こえる訳がないと思っていた音が聞こえてくる。そんなはずはなかった。考えうる限り最悪の状況なのだから……
丘の向こうから戦闘ヘリが隊列を組んで、数十機も現れたのだった。
これから始まることを予見して、誰もが息を呑んだ。
「対空ランチャー!!」
アダムズが叫ぶ。
しかし、混乱したアルステリア軍の準備を待ってはくれない。
ルンドバードの戦闘ヘリからミサイルが発射され車両が爆撃される。
ヴヴヴーーーー!!
重低音が響き、ヘリから機関銃が乱射される。
アルステリア軍は為す術なく、蹂躙された。
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