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FPSゲーマーの転生先なんて決まってる!  作者: 栗飯


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35.休日の過ごし方

対抗戦から月日が経ち、冬が訪れる。

軍学校でも冬休みはある。日々の寮生活から解放され、帰省する者が多い。

ノーステリア出身でないものもこの時期ばかりは実家に帰っている。


例に漏れずリリーナも家に帰っていた。もちろん、シアと一緒だ。

軍学校のあるノーステリアにある、ザックとリサの待つフォーデン家。

その気になればノーステリアに実家がある者は休みの日に戻ろうと思えば戻れるのだが、リリーナもシアも長期休みの夏と冬以外は戻っていなかった。それでも戻ってくれば家族と一家団欒である。

他にも年明けにはカンナやミシェルも一緒に初詣に行っている。カンナだけ着物を着てきて、転びそうになったりと一悶着あったが、楽しく過ごしている。


冬休みを満喫しているそんなある日。

フォーデン家の庭は数cm積もった雪で雪景色となっている。そんな庭の中央付近には足跡が付いていた。


「はッ!!」

ドンっと蹴り上げた足がガードした腕にぶつかり鈍い音が響く。

「フンッ!」

「んー、今のも入らないの!?」


シアとザックによる近接戦闘(CQB)の訓練だ。休みとはいえ身体を動かさないと訛ってしまう。実家にくる度にザックがいれば相手してもらっていた。シアは自分の蹴りがガードされ悔しそうにしている。


「流石、まだまだ現役だねー」

「いやー、結構ギリギリだったからな。凄いぞシア!」

「まだパパに一撃も入れてない…」

「ハッハッハッ!パパは凄いだろう!?」


「リリちゃんのが凄いもん」

「えー!?パパも結構頑張ってるんだけど!?」

「それじゃあ、次は私の番ね」


「お、おう!」

ザックは内心でちょっと焦っていた。シアもリリーナも帰ってくる度に模擬戦をしているがその度に成長を感じていた。

もちろん娘たちの成長は嬉しいのだが、リリーナの相手はもう手加減が難しい領域だったからだ。


ザックとて未だ現役の特務機関隊員だ。昇進して指導が多いとはいえ、変わらず鍛えていた。結局のところは娘達にいい所を見せたい気持ちがほとんどだが……


庭の中央付近で両者向かい合う。2人の間には2mほどの距離が空いている。


「……はじめ!」

シアの掛け声と共に、リリーナが距離を詰める。

ザックは左ストレートを入れるがダッキングしたリリーナに躱されて懐に入られる。

「む!?」

リリーナは勢いをそのままにザックの左脇腹をワン・ツーと殴り、離脱する。


「かってぇ〜、この筋肉ゴリラめ」

「ハッハッハ!まだ力が足りないんじゃないかー?」

「ナイフさえあれば今のでお終いなのに!」

「今は素手の訓練だぁぁー」


今度はザックから動く。再び左のこぶし。からの右こぶし。再び左、右とリズムよく打ち出す。


リリーナは躱すか、受け流しに徹する。ガードしても、ガード事弾き飛ばされることを理解しているからだ。


(速い……けど、レイン先生の方が速いかな)

(むぅ、全然当たらん。やっぱり反応いいんだよな)

ザックが一方的に攻撃しているが、まだリリーナを捉えられていなかった。


(まともガードしたら飛ばされる。攻撃しても素手じゃ全然ダメージ通らないんだよなぁ)

ザックが大きく右腕を振りかぶる。

(ん?大振り?)


半身になったザックは前に出た左腕で速さ重視のジャブを放つ。

「ぉ!?」

続けてギリギリまで軌道を隠した右のストレートが、リリーナのお腹目掛けて打ち込まれる。


「ン!」

リリーナは両手をクロスしながらガードして後ろに自分から跳ぶ。

後方に転がりながら一回転して体勢を立て直す。

「そんな技術もあるんだ!?」

「俺も伊達に現役が長い訳じゃないのさ!」

ザックがニヤリとする。


「親のドヤ顔ってなんか嫌だ……」

審判をしていたシアがザックを見ながらしかめっ面だ。

「え!?パパ凄いって、ならないの?」

「んー、イラっとする」

「えぇ!?」

「私もイラっとしたからいくよ!!」

リリーナがザックに突っ込む。


「ぬぉ!?」

金的に蹴りを放ち、ガードされる。

顎に右フックを振るうがザックの左手に阻まれる。

すかさず、鳩尾(みぞおち)を狙って右ストレート。

「お!?」

今度は右手でガードされる。

こめかみ、スネ、金的、鳩尾、顎、金的、顎、こめかみ……


徹底して狙う。

「ぐ、ぬぉお!!」


急所への攻撃に耐えかねて、ザックは先程と同様に……

いや、本気でパンチを繰り出した。

(やべッ!?)

一瞬、ムキになったザックはすぐに焦る。まだ13歳の娘に本気でストレートをふるってしまったのだ。



しかし、リリーナはこれを待っていた。大振りを狙っていたのだ。

今度は回転して躱しながら、体勢を低く、しゃがみこむ。その勢いでザックの踏み出した足を後ろから蹴り飛ばした。

たまらず体勢を崩したザックの服を引っ張り完全に倒れ込ませた。


「ぐふッ!?」

ザックは仰向けに空を見上げ、背中を打ち付けた。


「1本ッ!!」

シアの声が響く!!

「いよっしゃー!!初めて倒したぞぉー!!」

リリーナはやっとの事で倒せたことに嬉しくて、ガッツポーズを決め喜ぶ。


「リリちゃんやったね」

「やったぜー」

2人でハイタッチをする。


「くぅぅぅー、まんまとノせられたか!?」

「ザックさん私の普通の攻撃じゃビクともしないじゃん!?だからね」

「そりゃ、リリーはパワータイプじゃないだろう?威力だけならシアの方が上だしな」


「私、リリちゃんに勝ってるところなんてあったんだ!?」

「そりゃあるじゃん。パワーもだけど、スナイパー適正とかもそうだし」

シアは驚きと共に、リリーナがそう評価してくれてることに嬉しさがあった。


「ま、身長は私もおっきくなるハズなんだけどね!?」


「たしか隊長は俺と同じくらいの身長だったはずだ!」


ザックはリリーナの父、シルヴァンのことを思い浮かべる。

「ほらねー、私もこれからってことよ!」


「シア、リリー!!そろそろご飯にするよー!!」

「「はーい!」」

リサに呼ばれ、ダイニングに向かった。




「むむー、リサさんは背が大きいな……」

「そうかな?普通じゃない?」

「いや、普通では無い。私は認められないんだ!シアはリサさんの分大きいのか……」

リサは163cmあり、シアも既に同じくらいだ。


「私よりカンナちゃんが大きいけどね」

「カンナは既に巨人になってる」

身長で言えば、リリーナ、ミシェルが同レベルで、140cmほど、カンナはもう170cmになる所だ。

どちらかと言うとカンナの身長が大きい方だ。


食卓には半年ぶりで集まったためいつもより豪華な料理が並ぶ。

「おはよー」

ダイニングにはもう1人いる。

「ルナリアおはよう」

「ルナおはよー」


ルナリア・フォーデン、7歳。2人の妹だ。

ルナリアは普通の小学校であり、リリーナもシアも軍学校に入ってしまっているため、寮生活になっている。少し会う機会は少ないが既に2人に懐いていた。

「リリねぇ、シアねぇ、何してたの?」

「組手だよ」

「組手!?どっちが勝ったの?」

「あぁ、私達でやったんじゃなくてパパとね」

「聞いて驚け、ついにザックさんを倒したのだ!」

「ぉぉお!?リリねぇ、パパよりつおいんだ!」


無邪気に笑うルナリアに、ザックは慌てる。


「ルナリア!?ま、まだ1本取られただけだ!

まだ、総合的にはパパの勝ちなんだぞー」


「なに言ってるんですか、みっともない」

リサさんに背中をピシッと叩かれる。ルナリアも面白そうに笑っていた。



__________



楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまう。

冬休みも終わり、また授業と訓練の日々がやってくる。


「おはよー」

「おはよう!」

「カンナは休みが開けてもデカイねー」

「そりゃ、休んでも縮まらないよ?むしろ伸びてるかも!」

「え!?私は伸びてないのに!?」

「う、うん…」


「………ミシェルはやっぱり可愛いなぁ!」

リリーナはミシェルを抱きしめながら、よしよししている。

「ううぅぅ〜」

「わ、私も!」

ミシェルは頭をグリグリされ、シアは羨ましそうにしている。


「おい!現実逃避したな!?」

カンナはツッコミ役だった。

大体いつもこのやり取りである。



ピンポーン!

朝、もうすぐ朝礼という時間に校内放送が鳴る。

「先生方は職員会議を行うため、職員室にお集まりください。生徒諸君は各自、席に着いて自習していて下さい。繰り出します。生徒諸君は自習していて下さい。先生方は至急職員室へお集まり下さい」


教頭先生の今まで聞いた事のないアナウンスに生徒達にどよめきが広がっていた。

少しでも面白いと思って頂けれれば、

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